俳句例:101句目~
珈琲の味も香もなく春の風邪/植木千鶴子
珈琲や夏のゆふぐれながかりき/日野草城
珈琲を飲むとき冬の日は斜め/今井杏太郎
珈琲屋劇画の多喜二起ち上がれ/阿部娘子
珈琲熱し白山茶花の散りはじめ/増沢和子
白鳥見る悪魔の濃さの珈琲喫み/鈴木栄子
篠懸の花咲く下に珈琲店かな/芥川龍之介
珈琲を喫せりロッヂ「五千尺」/高澤良一
荷風忌や焼き立てパンと珈琲と/芦川まり
菩提樹下誘はれて涼し珈琲どき/桂樟蹊子
蝦蛄仙人掌咲く珈琲の香の中に/池田秀水
コーヒーの粉の浮きたる義士祭/大石雄鬼
鈴懸の花咲く下に珈琲店かな/芥川龍之介
コーヒーはブラックにする寅彦忌/森武司
コーヒーを揺らす朝の春の海/岩淵喜代子
雪嶺は遠い切り絵で珈琲沸いた/伊丹公子
安房二月コーヒー店も花あふれ/新井英子
恩讐は遠き日のことコーヒ熟れ/山田桂梧
馬来珈琲の30セント混血同志/伊丹公子
手渡しにくる缶コーヒー大花野/東原順子
俳句例:121句目~
黄落をブレンド/けさの珈琲に/中田敏樹
犯人の飲み掛けアイス缶コーヒー/守屋明俊
珈琲濃しあさがほの紺けふ多く/橋本多佳子
雪嶺やコーヒー餓鬼のわが乾き/秋元不死男
丸善に秋思の木椅子/濃い珈琲/大西やすし
蛇穴を出てコーヒーを買いに行く/村上哲史
缶コーヒー膝にはさんで山眠る/津田このみ
禁制の夜のコーヒ飲むクリスマス/右城暮石
コーヒーはブラックがよし巴里祭/森礼意三
春愁のコーヒーカップ冷えにけり/森本順世
錦木紅葉コーヒー店内みんな愉悦/中北綾子
遊船に移りゆく景コーヒー甘し/吉良比呂武
暖炉の火燃ゆる音するコーヒー店/林真砂江
晴れし香のコーヒー遠山ほど霞み/野澤節子
コーヒーのミルクの渦や今朝の冬/山田節子
コーヒーに春の焚火の灰まじる/夏井いつき
真白きテーブルクロス冷し珈琲/岡松あいこ
カウベルに迎ふ夜霧のコーヒー店/川村紫陽
まだ冷しコーヒー所望したきかな/稲畑汀子
春の風邪街にコーヒー黒く沸く/猿橋統流子
俳句例:141句目~
敬老の日のコーヒーのアメリカン/村本畔秀
ぷりぷりとコーヒー色の裸かな/今井千鶴子
寝ござ干す峠の茶屋の罐コーヒー/村本畔秀
女給笑ひ皿鳴りコーヒ湯気立てゝ/高浜虚子
つゞく動乱コーヒーくろく沸騰する/穴井太
黄砂ふる朝より二杯目のコーヒー/足柄史子
朝の珈琲濃くて父の日はじまりぬ/中村明子
コーヒーの香を枯山に洩らし住む/津田清子
コーヒー碗ぬくめて淹れる雁の頃/石川文子
通りすがりに珈琲にほふ雪の町/つじ加代子
銀杏散る我が珈琲にも一つ落ちよ/仙田洋子
逢う時のコーヒーゼリーは海の底/永井江美子
足の届かぬコーヒースタンド巴里祭/佐伯昭市
白ら息はそのまま夜霧コーヒー欲る/町山直由
こころ推し量るコーヒーゼリー揺れ/西村和子
きこく垣に春の砂塵やコーヒー欲し/細見綾子
あたたかしのむコーヒーも濃く甘し/京極杞陽
珈琲はブラツククリスマスローズ/星野麥丘人
鷹鳩と化すコーヒーにミルクの渦/吉田ひろし
珈琲のむ粘つく鳥のはばたき飲む/高野ムツオ
俳句例:161句目~
珈琲啜るウィーンは遠しライラック/今泉貞鳳
地圖をさし珈琲実る木ををしへけり/室生犀星
大学に来て踏む落葉コーヒー欲る/中村草田男
セピアの写真泛く鮭上る日の珈琲店/伊丹公子
初富士に珈琲さゝぐボーイあり/長谷川かな女
飛雪の町さまよう朝から珈琲飢餓/伊丹三樹彦
みぞるゝや弔旗コーヒー店をかくし/岸風三楼
珈琲とポインセチアに待たさるる/今井千鶴子
コーヒーとでこぽん一つゆめひとつ/臼井文法
珈琲秋思の銀匙重くも軽くもなく/伊丹三樹彦
バード/パークの門番珈琲色で午前/伊丹公子
黒きコーヒー夏の夜何もはじまらぬ/野澤節子
燈火親しコーヒーの香にひたりつつ/間地みよ子
珈琲はブラック生き過ぎたかも知れぬ/立岩利夫
コーヒーゼリー雁の寒さを思ひ出す/大木あまり
春深く挽く珈琲はキリマンジャ口/長谷川かな女
待つためのコーヒー秋はきまぐれに/山本つぼみ
コーヒーゼリーの暗黒ゆれて鵙鳴けり/中村和弘
アマリリス炎のいろ珈琲香だちゐて/柴田白葉女
鱶を飼うコーヒーいつも胃に溜まり/八木三日女
俳句例:181句目~
顔見世やコーヒーに八ツ橋そえらるる/土田桂子
コーヒー代もなくなつた霧の夜である/下山英太郎
嘘も一緒に飲み込んだ短日の苦いコーヒー/熊谷従子
イーハトーブの雨つぶでコーヒーをどうぞ/前田保子
もし死なば遊具のコーヒーカップのように/松本恭子
セロ弾きゴーシュ居そうな木洩れ日珈琲館/中田敏樹
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ/『定本石橋秀野句文集』
朝々のコーヒーぬるし霧の宿/宮部寸七翁、吉岡禪寺洞選
春の夜の明ける愉しみ珈琲の琥珀を飲みて胃をなだめたり/西村尚
木がらしは外にはげしも夜ふけて寒くもの食ふ珈琲店のなかに/中村憲吉