俳句例:101句目~
野分して吾をおひこす新聞紙/大野朱香
新聞と牛乳が届きて避暑の宿/坊城中子
新聞をひろげつぱなし春炬燵/川崎展宏
春の雪新聞紙より目上ぐれば/安立幸信
リラ冷えに古りたる町の新聞社/森田峠
万緑に坐せし新聞凹みしまゝ/右城暮石
三日はや新聞怒ること多し/岡部六弥太
苧殻焚く頃ぞとひねる新聞紙/高澤良一
新聞完配拳闘真似つつ宵闇ヘ/奈良文夫
新聞の市内版混み初つばめ/平井さち子
胡葱をくるむ新聞とんがれる/山尾玉藻
老農の新聞読めず雪を見る/山口波津女
夕焼けに新聞手に手にバスを待つ/篠原
納め札巻く新聞にテロの記事/石井英子
秋燕や新聞なき日は空あふぎ/小田切貢
新聞に三日触れざる眼の涼し/中村明子
寒鯉に濡れし手を拭く新聞紙/鈴木鷹夫
寒鯉の眼を隠しおく新聞紙/杉崎ちから
屋上にサルビヤ炎えて新聞社/広瀬一朗
新聞に干してありたる菌かな/松藤夏山
俳句例:121句目~
新聞に五尺とふれし藤の咲く/尾崎紅葉
灰となる新聞紙のかたちかな/桑原三郎
新聞の読めばふくらむ春隣/片山由美子
霜の日の下野新聞ひろげたり/高澤良一
韋駄天の新聞少年露まとふ/矢田鹿苑子
駒返る草にひろげて新聞紙/夏井いつき
濡れ靴に新聞を詰め茂吉の忌/皆川盤水
てつせん花新聞記者の賜ひたる/細見綾子
のどかさは新聞もなしけさの春/正岡子規
ホ句しるす新聞の耳秋刀焼く/小原菁々子
十二月八日新聞両手もてひらく/前田典子
団扇の柄見えて新聞眼鏡置き/大岳水一路
山頂に登りて今日の新聞燃す/加倉井秋を
新聞はいちにち遅れ馬刀の旬/服部百合子
新聞の這入りし音やペチカ焚く/斎藤雨意
春雷や新聞のつゞき読まざりき/細見綾子
月青く新聞紙をしとねのあぶれもの/篠原
新聞の来ること遅し女郎花/久保田万太郎
梅に新聞ひらくや何ぞ茂吉死す/清水基吉
新聞紙すつくと立ちて飛ぶ場末/三橋敏雄
俳句例:141句目~
新聞紙で巻く鯖夜の風下で/手代木唖々子
夕立あと土間へ新聞すいと来る/辻田克巳
新聞のたまるはやさよ諸葛菜/片山由美子
新聞に供養の菊をつつみけり/八木林之介
新聞にみどりの頁みどりの日/森松まさる
白と化し枯野出られぬ新聞紙/加倉井秋を
碗豆をむく新聞紙「晴」とあり/岡田史乃
稲架の香が新聞を読む電車まで/小原牧水
新聞にほつくの熱さを見る日哉/正岡子規
緑蔭を去る新聞をポケツトに/長谷川素逝
新聞紙一枚ほどの胡麻たたく/池上ヤヱ子
葉菖蒲の香ごとくるめり新聞紙/高澤良一
新聞にくるまり鮒の夢まぼろし/清水径子
新聞を鳴らして読める今朝の秋/高澤良一
新聞紙燃え上がらせて蜂焼く火/右城暮石
街路樹落葉異国の厚い新聞買ふ/有馬朗人
新聞をひらけば付くや冬の蝿/藤田あけ烏
春の蚤のがれ新聞うちひびかす/原田種茅
雪の日の爪を散らせる新聞紙/河野多希女
ダイアナと読める新聞枯るる庭/浅井愼平
俳句例:161句目~
ぎつしりと小菊つつみし新聞紙/京極杞陽
新聞紙角をするどく冬に入る/宇多喜代子
ずわい蟹包むローカル新聞紙/駒木根淳子
ていねいに新聞たゝむ惨事多し/江端良三
壁の新聞の女はいつも泣いて居る/尾崎放哉
自然薯の土つく新聞読みはじむ/松本有美子
苗包みきし新聞にビキニの記事/成瀬桜桃子
新聞を顔に敷きねて蚊火たち消ゆ/原田種茅
生きてゐるものがきらいな新聞紙/阿部青鞋
新聞小説ハッピーエンドせり師走/藤木清子
新聞なれば遺影小さく冴えたりき/石田波郷
パンつゝむ新聞の端も梅雨の情/米沢吾亦紅
新聞を車床に踏めり今日の終り/鈴木六林男
ものさしは新聞の下はるのくれ/正木ゆう子
ふるさとの新聞を買ふ四日かな/山口都茂女
どんど焼き舞つて折れたる新聞紙/川崎展宏
新聞をざつとたたみて石蕗日和/正木ゆう子
紫陽花やけだるき午後の新聞紙/保科その子
鳩吹や新聞少年の空から晴れ/山崎しんぺい
今日の新聞手に古り柔和な労働者/鈴木六林男
俳句例:181句目~
新聞紙の頼りなさ柚子つつむなり/千代田葛彦
新聞紙で洟かんでやる花二分咲き/千代田葛彦
新聞紙につつまれてゆく夜のいちご/松本恭子
シュルル紀の死火山自画像新聞紙/渡辺誠一郎
ピカソのこと読みし新聞に葱つつむ/北原志満子
揺れる象のような海聾女の新聞ちぢむ/赤尾兜子
水にべたと凍む暗殺の新聞紙/滝本顔女/『絵踏』
雪どけさかる街の新聞売の鈴がよく鳴る/大橋裸木
壁張りは明治の新聞梅雨の宿/虚子せん/吉屋信子
汽車の窓から渡された新聞も霧に濡れて/栗林一石路
宿に居てもうちの新聞のつづきもの秋夕べ/荻原井泉水
お前が死んでからも来る新聞を畳にひろげる/栗林一石路
新聞にはないほんとうの世の中が知りたいのです/栗林一石路
手にとれば桐の反射の薄青き新聞紙こそ泣かまほしけれ/北原白秋
夜あけのすき戸からそつと資本主義社会の新聞を入れる音だつた/橋本夢道