俳句例:101句目~
繭に入る秋蚕未来をうたがはず/木下夕爾
日記買ふ五十路の未来信じ度く/山田弘子
水はいま水の未来を思っている/大西泰世
未来永い子といて大学食堂混む/伊丹公子
卒業のアルバム未来見つむ瞳よ/山田弘子
端居して少し未来に入りしかな/田中矢水
春の砂丘未来あたりの起伏せり/今瀬剛一
落葉踏む音の未来は子がつなぐ/黒坂綾子
石狩は未来ある野よクローバー/山田弘子
砂漠にも草の絮とぶ未来あり/水田むつみ
祝辞みな未来のことや植樹祭/田川飛旅子
我に過去君には未来屠蘇を酌む/亮木滄浪
惑わずに未来へひらく春障子/荻野喜久江
氷上に出でぬ未来を行くごとく/野澤節子
忘れ雪未来はなやぎ過去うする/西本一都
蒲公英の絮吹きとんでゆく未来/上野澄江
蝌蚪泳ぐ愉しき未来あるごとく/新明紫明
土筆つい摘みぬ未来は先へ先へ/池田澄子
少年の口笛未来のどこで切れる/日野晏子
寒入りし琥珀の空に未来あり/阿波野青畝
俳句例:121句目~
波に視野絶えし子亀にある未来/桑田青虎
波の上の未来よ渇いてはならぬ/鎌倉佐弓
過去未来触れぬ会話や夜半の春/谷口桂子
露の世の幸を守りて過去未来/池内友次郎
天の川濃きアフリカに未来あり/山本歩禅
魚は氷に上りて未来とは明日/石川千津子
柳絮舞ふ子らの未来を愛しめば/堀口星眠
麻雀に過去も未来もなきおのれ/藤木清子
みなと未来メタリックなる薄暑光/吉原文音
福壽草子等の未来は子等のもの/石田あき子
眉焦がす榾火未来のことは知らず/内藤吐天
ものの芽に一つの未来はじまりし/多胡一蚪
未来から降りてくるのは蜘蛛の糸/大西泰世
もみぢして過去と未来のあはひかな/朝妻力
秋風の過去も未来もかきまぜる/いそべ恒基
クローバー編み肯へる子の未来/市ヶ谷洋子
ビール酌む未来を少しづつ減らし/鈴木鷹夫
五月空カーンと抜けて未来まで/呉屋ゆみ子
蝶は飛翔の原型として未来まで/田川飛旅子
蟻地獄にもうすうすと未来あり/山崎みのる
俳句例:141句目~
付き添いし孫の未来へ破魔矢受く/村田芳水
全未来いつきに裂かれはららごよ/倉橋羊村
冬ばらの真紅に未来うるほへり/柴田白葉女
未来への石一つ投ぐ湖おぼろ/鍵和田ゆう子
妻よなほ未来あるかに毛糸編む/神保百合一
死に未来あればこそ死ぬ百日紅/宇多喜代子
児に託す未来冬日のアンテナ群/赤城さかえ
重ね著の師のうつくしき過去未来/勝又一透
未来へと青田の水は出てゆけり/岸本マチ子
掌に愛づる未来の種の胡桃二顆/佐野まもる
瀬戸の風萩は未来を明るうす/鍵和田ゆう子
顎よ顎よ歩きゆきしが未来ありや/細谷源二
かたつむり殻のうちそと過去未来/中北政巳
星飛んでピラミッドなほ未来へと/山本歩禅
はまなすや今も沖には未来あり/中村草田男
破魔弓に九九を覚ゆる未来あり/正木ゆう子
妻にも未来雪を吸いとる水母の海/金子兜太
日が氷くなるや未来のあるごとく/田川飛旅子
すでに未来を老いて近江に立つ杉よ/横山康夫
清潔にいわし雲いつぱい未来図たれ/伊藤敬子
俳句例:161句目~
なぎの葉を未来のイヴのてのひらに/夏石番矢
春の海けぶるは未来あるごとし/長谷川浪々子
わからない未来へ賭けてひらく日傘/伊丹公子
覚えぬ過去知らない未来サングラス/西浦和子
キャンプ寝つ沖より歩みよる未来/佐野まもる
未来ひとつひとつに餅焼け膨れけり/大野林火
窓をひらいて少女被弾す涼しい未来/阿部完市
天の川技師に未来の来ることなし/米沢吾亦紅
みどり児の未来を信じ木の実植う/今井千鶴子
過去未来まつすぐに降る蝉時雨/鍵和田ゆう子
虹たちて消えてはつきり我が未来/田畑美穂女
カサブランカの花粉まみれや未来仏/白澤良子
岸に銃眼うかびころべば射たれる未来/阿部完市
雑煮うまし組立てて未来たしかにあり/阿部完市
モチーフをつなぐ/未来の色をさぐり/首藤節子
今がまぶしい/未来の薔薇ヘマシンガン/松本恭子
未明ささやく雪風遅子に遠い未来/赤城さかえ句集
FMかけそんな雰囲気で待つ未来/しらいししずみ
未来へと落日はまた草田男忌/峯尾文世「微香性」
はまなすや今も沖には未来あり/中村草田男「長子」
俳句例:181句目~
筍のすでに曲がりし未来かな/出口善子「わしりまい」
海苔ひび埋めゆく資本未来図へ市民の土/赤城さかえ句集
百年とたたぬに言葉とどかざる未来の真昼に来てしまひたる/河路由佳
野心に死ぬや野心なきに死ぬやはにかみて未来言はざる少年もまた/米川千嘉子