俳句例:101句目~
十三陵十二飛ばして夏木立/赤松ケイ子
垂仁陵へ野焼の煙及びけり/三好かほる
夏雲雀ひとつ高しや推古陵/大峯あきら
大仙陵照らず曇らず鯊釣るゝ/前田普羅
始皇帝陵青麦の風ばかり/野見山ひふみ
宵月の妃陵に近く苗あまる/大峯あきら
山の上は陵守ひとり百千鳥/大橋櫻坡子
巣立鳥騒ぎ太宗の陵なりけり/福田蓼汀
帝陵に上らん地虫出でにけり/中瀬喜陽
幼帝陵小春を鳩の舞ひにけり/伊藤京子
忘年の鳥湧きて消ゆ妃陵あり/山本洋子
春暮るる秩父も奥の皇子の陵/福田蓼汀
春笋の息しづめゐて后陵/秋山まさゆき
春陰や陵墓のつゝじ遅れ咲く/飯田蛇笏
百千鳥迦陵頻伽もその中に/福田太ろを
菜殻の火斉明陵のあたりにも/香月梅邨
葛城山の肩に雪照る皇子の陵/巌谷小波
白鳥陵の静寂破りて川鵜翔つ/櫻井康敞
新陵の鴨引く空となりにけり/石田勝彦
詣づるに山陵もみぢ一はやて/皆吉爽雨
俳句例:121句目~
陵さむく日月空に照らしあふ/山口誓子
王陵といふも花野の起伏のみ/中島鳳莱
空果てしなき山陵に植樹の声/飯田龍太
陵のつむりのまろき新樹かな/石田勝彦
花苔に神すみまさり崇徳陵/鈴鹿野風呂
陵は濠を二タ重に新松子/長谷川みね子
陵へ食ひ込みゐたる生姜畑/瀧澤伊代次
檜尾陵の空をせばめて夏木立/巽恵津子
陵やありとも見えぬ時雨の灯/石井露月
陵園の枯れて稲妻地を棲てる/西村公鳳
白峰陵山気に変る秋しぐれ/能村登四郎
陵守の父に秋分の餉がとどく/松村蒼石
陵守の眼にいつもある浮寝鳥/野村泊月
陵灼けて日本人のみな老いて/石田勝彦
射干にすぐやむ雨や推古陵/大峯あきら
草じらみ斉明陵でつきしもの/綿利信子
柳絮飛ぶ王陵出でし碧空に/西野喜美子
風と遊べる曼珠沙華皇女の陵/松村蒼石
かまつかや陵に日の移りゐし/関戸靖子
木犀を戸々に妃の陵守りて里/河野頼人
俳句例:141句目~
くちなしの錆花沈め安徳陵/松崎鉄之介
鳥雲に朝のひかりの白鳥陵/つじ加代子
書陵部へまづ紅梅の案内かな/高橋睦郎
陵みちに木賊刈り干し大和かな/宮下白泉
雪晴れて妃陵へもどる鶲あり/大峯あきら
若菜摘む吉備の陵見ゆる野に/上田土筆坊
青田雨妃陵の垣に吹きつけぬ/大峯あきら
迦陵頻伽と黴の胞子と矚えざるも/小澤實
宇治陵へ京の灯遠きおぼろかな/西村公鳳
王陵の涯へ墜ちゆく銀河の尾/つじ加代子
梨咲いて桃里武陵の名を負へる/小林碧郎
行く秋の風鳴るばかり桃山陵/久保田喜芳
帝陵をさがるに野菊ひしひしと/皆吉爽雨
狐火に妃陵の錠のしかとあり/大峯あきら
佐保山の后の陵のうめもどき/五十嵐播水
山陵の松はさびしきすすきかな/飯田蛇笏
よもぎ摘陵墓の裾につと消えぬ/荒井正隆
鴨引いて陵守さびしからざるや/下村梅子
陵守が出て来て田刈見てをりぬ/関戸靖子
ひろげ着る単衣の陵の走り消ゆ/亀井糸游
俳句例:161句目~
はたはたがたち陵の夕日澄む/落合伊津夫
薫風に舞ひし陵王の面なれや/水原秋櫻子
陵守のねむたさ昼のあをばづく/赤塚五行
新陵のいく夜を経たる春の月/井澤小枝子
陵道に萩の実こぼれ雲しづか/井戸川萋女
すかんぽや天皇陵に衛士ひとり/松田紀子
げんげ田が囲む明日香の后陵/石井いさお
うすうすと道に余花ある藍野陵/右城暮石
玉陵に肩身のせまきこぼれ花菜/横山白虹
陵あれば寄る野遊びのつづきにて/山下幸子
父好みの帝陵おほさむこさむかな/栗林千津
歯朶刈に鳥啼かぬ日の妃陵かな/大峯あきら
安徳陵磯ひよどりの啼きたつる/龍頭美紀子
ジンジヤー咲く迦陵頻伽に翼あり/山西雅子
陵に敷く珊瑚の小片に蟻まぎれ/上田日差子
王陵の露踏むよりの気おとろヘ/文挟夫佐恵
稲架を組むうしろに推古天皇陵/石垣青☆子
男狭穂より女狭穂の陵の虫涼し/岡部六弥太
幟上げて陵の守部の出づるなり/大橋櫻坡子
山陵はいやしくも花散らしめず/阿波野青畝
俳句例:181句目~
陵の埴輪に柏落葉かな/森無黄「新派句選」
陵のねむり日輪は野を遠くわたる/岡本圭岳
乾陵へ驢馬と別るる柳絮さかな/山田みづえ
馬陵城趾雷後日照のお繰り出し/阿部みどり女
陵は早稲の香りの故郷かな/『定本石橋秀野句文集』