俳句例:101句目~
水洟や鼻の先だけ暮れ残る/芥川龍之介
水洟をかみて法座に加はりぬ/富安風生
水洟をかむを憚り第九聴く/稲畑廣太郎
水洟をかむ仕種まで無器用な/稲室草竹
水洟をかむ百姓の大事な金/榎本冬一郎
水洟をかんで大きな音なりし/高浜年尾
水洟をすすり寒鯉売つて居り/田中冬二
水洟を滴る良寛のむかしより/山口誓子
水洟を貧乏神に見られけり/松本たかし
水鼻にわひて山家のもみち哉/正岡子規
洟かんで紙に血の噴く終戦日/深谷雄大
老のよろこび水洟の句を得たり/松村蒼石
この世また夢の水洟すすりけり/細川加賀
この家の子か水洟の立派なる/宇多喜代子
ほとばしる洟やなみだや風邪人/西島麦南
水洟に諭すふびんの煙草つく/米沢吾亦紅
わらんべの洟も若葉を映しけり/室生犀星
須彌壇に水洟のひと咳のひと/佐々木六戈
仏恩も水洟とゞむすべなけれ/篠塚しげる
水洟にからすき星のありにけり/田中冬二
俳句例:121句目~
水洟や仏具をみがくたなごころ/室生犀星
彼老いぬ水洟とめどなかりけり/高浜年尾
水洟や熊の肉噛み切れずゐて/石沢蟹城子
水洟をかめばサンタの声がする/仙田洋子
水洟や大志抱きしはそのむかし/木田千女
水洟をすすり一茶の墓に来し/青柳志解樹
菊の前こゝろ痩せをり洟ゆるび/石塚友二
蜑の児ら浜ゑんどうに洟かわく/友岡子郷
水洟をすゝるとき顔ゆがみたる/高浜年尾
鉱山出来て刈田の日々の洟垂児/清原枴童
水洟やうとましき老の到る見る/島田青峰
水洟の鼻ネクタイの上に据ゑ/猿橋統流子
水洟や下ろしてみても貧しき灯/相馬黄枝
水洟が「情緒」の項に入つてる/櫂未知子
水洟の師の一喝をおそれけり/大橋櫻坡子
水洟やわれも暮色の一つとなる/宮坂静生
須弥壇に水洟のひと咳のひと/佐々木六戈
水洟の同じ背丈の母と歩めり/秋元不死男
水洟や添削されてゐるやうな/佐々木六戈
餅焼くや洟たれ童子世に絶えて/白岩三郎
俳句例:141句目~
水洟や佛具をみがくたなごころ/室生犀星
馬思ふ御者も水洟垂れにけり/石島雉子郎
洟かんでもらうて一夜官女たり/西野文代
水洟やのつぴきならぬ火吹竹/松根東洋城
水洟や灯をかかげたる机前の子/飯田蛇笏
指磊塊見えぬ水洟繁く拭かる/中村草田男
洟かんで起き出て今日の頸廻す/石塚友二
水洟や我孫子の駅のたそがれて/石田波郷
洟たれて独り碁をうつ夜寒かな/與謝蕪村
秋風に洟すすりけりきりぎりす/黒柳召波
水洟やなさけなかりし我が法話/河野静雲
水洟ののつぴきならぬ火吹竹/松根東洋城
洟拭きしあと天国を希ひけり/林田紀音夫
水洟や母の如くに老いにけり/松本ます枝
洟汁しまりなし熱き藷頬張るも/大熊輝一
水洟のとめどもなうて味気なや/日野草城
水洟をあやふんで居る炭団かな/会津八一
水洟のたらで仕舞ひし一日かな/会津八一
水洟のさびしさの日に幾度か/林田紀音夫
念力もぬけて水洟たらしけり/阿波野青畝
俳句例:161句目~
紙漉が洟かむを見つつ囲み立つ/石田波郷
水洟をも傍観受験の吾子死なせし/香西照雄
わがうから洟ひる熊に親しめり/八木三日女
久米の子や洟を舐め~風邪ひける/山口青邨
水洟や目にちかちかと電子辞書/服部はるを
水洟をすすれば吾子もすすりけり/須藤常央
水洟を落して恥ぢてひとりかな/副島いみ子
水洟やもういいかいにはまあだだよ/大谷賢
水洟や土盛ることの手馴れしわざ/栗生純夫
洟かみし俄かつんぼにけむり茸/平井さち子
洟かんでしまふ小僧の夏書かな/阿波野青畝
水洟の句を愛弟子のために書く/百合山羽公
水洟や追はぬに農夫を牛曳きそめ/香西照雄
水洟かなし病母に語り及ぶとき/赤城さかえ
水洟になんとも意気地なくなりし/小原寿女
風邪の洟かむかさかさの職場の紙/右城暮石
水洟のほとけにちかくなられけり/森川暁水
水洟にもうなりふりもなくなりし/稲畑汀子
水洟や波濤のほかは見るものなし/杉山岳陽
子亡き妻の水洟泣くにはあらじかと/香西照雄
俳句例:181句目~
水つ洟すする間に黒鉛坩堝となる/川島彷徨子
新聞紙で洟かんでやる花二分咲き/千代田葛彦
水洟のついといでたるおどろけり/瀧澤伊代次
「買ってやるよ」水洟の子へうるみ声/香西照雄
祖国に洟たれ/橋上らっぱの癲癇病み/星永文夫
夕皃の花で洟かむ娘かな/一茶/文化九年壬甲
畠打や手洟をねぢる梅の花/一茶/文化八年辛未