俳句例:101句目~
研ぎ上げて包丁戻る彼岸明け/井上玉枝
一丁の庖丁を持ち出代りぬ/米田双葉子
包丁の切れ味ためす春大根/鈴木真砂女
包丁始鬼ゐて逆手そそのかす/熊谷愛子
冴え返る包丁雉子を贅とせり/野沢節子
刀鍛冶は庖丁鍛冶や御代の春/子規句集
秋の鮎わが包丁を見据えけり/大下志峰
秋鯖をたちて包丁曇りたり/栗田せつ子
包丁で人数かぞへ西瓜切る/平間たけし
庖丁の柄のしめりさへ冬はじめ/角光雄
菓子を切る庖丁来たり雛の前/前田普羅
菜の上に包丁のある利休の忌/鈴木鷹夫
包丁のリズムの中にある歳月/荒木冬糸
菜切包丁研ぎ師に預け一葉忌/小泉愛子
蒟蒻を逃がす庖丁冬至妻/長谷川かな女
包丁の前を通りて河豚の座へ/井沢正江
鶏にむき身の包丁かくしけり/米沢恵子
包丁の踵おお寒むの腑抜き/平井さち子
包丁の身動きとれぬ南瓜かな/菅野潤子
路地小春包丁研ぎの声がして/寺原伸子
俳句例:121句目~
庖丁の重さや花疲れとも違ふ/中村明子
包丁を研いでください葱二本/二瓶洋子
庖丁の切れ味を待つ海鼠かな/川崎展宏
柄も水にとほし庖丁始めかな/大野祟文
庖丁の刃にちぢみけり寒海鼠/坪根里杏
包丁を持つて驟雨にみとれたる/辻桃子
包丁を仕舞いて気づく虫の声/亀井遊楽
庖丁にくねりて固き海鼠かな/関谷嘶風
包丁の鱧を引いたる痕もなし/内田哀而
庖丁で氷柱をおとす二階より/川崎展宏
注連冴ゆる俎上が天地式庖丁/野澤節子
庖丁を納めて小言初めかな/加藤知世子
包丁の音こころよき夏のれん/山田弘子
太宰忌の包丁につく千六本/鳥居美智子
セラミックの包丁丑寅を封ず/水野真由美
たらば蟹ずばと包丁入れにけり/高澤良一
なごめ剥戸に包丁を鳴らしけり/島田五空
なると切るののの包丁始めかな/須川洋子
ひとふりの刺身庖丁買ひて冬/鈴木真砂女
風呂吹の隠し包丁母在はす/美谷島寸未子
俳句例:141句目~
包丁のまへに玉置く酸橘かな/百合山羽公
糸底で包丁を研ぐながし南風/北田美知代
葱すいと割いて庖丁始めかな/秋元不死男
切れ味の良き包丁に海鞘の反り/森田智子
包丁に載せて出されし試食梨/森田六合彦
包丁のつたなきに遭ふ西瓜かな/後藤眞吉
銀鱗のしぶく包丁はじめかな/三田きえ子
溢蚊に包丁持つ手おちつかず/中村奈美子
秋茄子に入れし包丁しめらざる/川崎展宏
包丁の歯立たぬくわりん閉口す/高澤良一
春の雪庖丁桶もあたらしく/久保田万太郎
庖丁の刃こぼれ憂しや寒の内/鈴木真砂女
庖丁のまへに玉置く酸橘かな/百合山羽公
庖丁に穴ある不思議ほうせん花/田中美沙
栗剥けと出されし庖丁大きけれ/高浜虚子
菜切庖丁添へて山家の大きな柿/大橋裸木
流氷やたそがれきては庖丁もつ/寺田京子
庖丁に生麩吸ひつく余寒かな/片山由美子
餅板の上に包丁の柄をとんとん/高野素十
庖丁を噛みたる冬至南瓜かな/俵/いさみ
俳句例:161句目~
庖丁を逸らしめつつ餅切れり/相生垣瓜人
庖丁をあてしばかりに西瓜割れ/市村芳子
研ぎ減りの包丁をあて武鯛かな/早野和子
包丁始せりせり飛んで鯛うろこ/秋元不死男
刃こぼれの包丁蟹は手強いぞ/長谷川久々子
花冷や死ぬまで庖丁の柄を握る/小檜山繁子
井戸水にくもる庖丁ほととぎす/山下知津子
柚子の香のひろがる庖丁始かな/片山由美子
庖丁の柄をはふ蝿の生れけり/久保田万太郎
柿ほったほたなれば包丁役立たず/高澤良一
衣更へてすぐ包丁を手にしたり/山口波津女
衣更へてすぐ庖丁を研ぎにゆく/加倉井秋を
包丁始とれたての無もありぬべし/攝津幸彦
花冷えや死ぬまで庖丁の柄を握る/小檜山繁子
庖丁つかうや冬の椿の大枝挿し/長谷川かな女
野の香濃きものより包丁始めかな/田中とし子
庖丁を研ぎにほはせて菜種梅雨/長谷川浪々子
おぼろ夜のかくし包丁烏賊と海老に/須川洋子
二百十日の包丁みんな研いで置く/佐々貴操子
鱧を切る包丁梅雨を研ぎすまし/長谷川かな女
俳句例:181句目~
包丁を研ぎにほはせて菜種梅雨/長谷川浪々子
庖丁を侮つてゐる鬼虎/梶山千鶴子「一人芝居」
四二/一九五キロをみな包丁持て走る/攝津幸彦
近江の鮒に包丁はじめしたりけり/長谷川かな女
鱧切りの包丁すぐに蔵はるる/杉浦典子「岬馬」
やつこ豆腐の夏夕の明るさに庖丁を入れる/大橋裸木
庖丁で鰻よりつゝ夕すゞみ/一茶/文化十二年乙亥
「鋏、庖丁、かみそり研ぎ/研ぎやでござい」研いで貰おうか/橋本夢道