俳句例:101句目~
野の風を春とおもひつ萩茶碗/角川照子
啓蟄の茶飲み茶碗を漂白す/松林すゞ江
欠け茶碗それも大事に秋遍路/高濱年尾
冬ぼたん手をあたたむる茶碗かな/才麿
韮芽ぶく茶碗のかけら光りゐて/上村占
あかあかと茶碗焼かるる春氷/長谷川櫂
飲み干して天の色なる夏茶碗/川崎展宏
現場茶碗に微塵漂ふ風邪薬/米沢吾亦紅
ありがたや夏炉を前の茶碗酒/石川桂郎
大なる茶碗に注ぎし麥湯かな/会津八一
お茶碗の唐津でありし夜の秋/黒田杏子
黒ずんだ楽屋茶碗や寒の入り/今泉貞鳳
いつも一つ遊んでをりぬ冬茶碗/河西衆子
茶碗あり銘は上巳としるしたり/高濱虚子
茶碗などまるく洗ふ手月よ護れ/川口重美
ちぐはぐの茶碗が並ぶ暑気払い/吉田光子
茶碗蒸し腹に行火を入るるごと/高澤良一
茶碗酒どてらの膝にこぼれけり/巌谷小波
てのひらに茶碗の重み蟇鳴くも/大野林火
亡き姑の茶碗を割つて年逝かす/安江緑翠
俳句例:121句目~
伽羅蕗に箸はづませて茶わん酒/加藤武夫
冬の夜の茶碗部厚やたなごころ/草間時彦
収まりの良き茶碗なり菊点前/岡田カヨ子
墓地の冬供へ茶碗の肌生き居て/北野民夫
曼珠沙華茶碗は欠けしまま使う/対馬康子
夏果つる峠や茶碗伏せし棚/長谷川かな女
大き茶碗よわが鼻入れて冬温し/加藤楸邨
孤独育つ古りて銘なき夏茶碗/殿村菟絲子
霧流る愛用茶碗の野草の絵/鍵和田ゆう子
師のことの種々うかぶ夏茶碗/つじ加代子
幕くぐる替茶碗志野花むしろ/赤松けい子
風炉名残織部黒沓茶碗幾何模様/須賀遊子
風邪籠り留守居のごとし箸茶碗/石川桂郎
年の市夫婦茶碗はもう買へず/河野万里子
悴みし身ぬちつらぬく茶碗酒/小島千架子
手すさびの茶碗配ばるや年の内/天野聾兎
旱墓地彼の世の茶碗蓮華の図/殿村莵絲子
花冷や箸も茶碗もひとりぶん/稲垣きくの
書庫守の茶碗からびて冬至かな/岩田昌寿
わひしさの芙蓉は酔へり茶碗酒/尾崎紅葉
俳句例:141句目~
胸元にみどり射し込む夏茶碗/殿村菟絲子
てのひらは茶碗のはじめ泉汲む/小檜山繁子
降らずみの秋しぐれ呼ぶ井戸茶碗/中村苑子
てのひらになじみてかろし夏茶碗/宮田春童
ほろほろとしほがまこぼる夏茶碗/草間時彦
まつむしのりんともいはず黒茶碗/服部嵐雪
歳の瀬や今日を限りの欠け茶碗/大上那美緒
あやまちて茶碗を割りぬ蕪村の忌/野村喜舟
茶碗酒といふものうまし小夜千鳥/尾崎紅葉
甘茶もうなしと釜伏せ茶碗伏せ/橋本美代子
茶碗酒妻も飲み干し藺を植うる/槙野幽泉子
井戸茶碗めでつゝ居るも月の友/水原秋桜子
薬缶茶碗と置けば傾ぎて田植茣蓙/今瀬剛一
夏茶碗無言いよいよたのしけれ/八木林之助
手にとれば萩の茶碗の梅雨じめり/今泉貞鳳
諸手してもちたる蕎麦湯の茶碗哉/星野麦人
志野茶碗手にすつぽりと虫しぐれ/近藤一鴻
山の蛾の触れし茶碗に酒さゝる/殿村莵絲子
初しぐれ茶碗蒸などいただきて/星野麥丘人
夜の菊や掌に茶碗のあたゝかし/大谷碧雲居
俳句例:161句目~
てのひらに二百二十日の茶碗かな/今井杏太郎
手びねりのかたちあやまち夏茶碗/大場白水郎
木瓜咲きぬ歯と飯茶碗欠けもせで/秋元不死男
雛の日の手に馴染みよき茶碗かな/ふけとしこ
雪の昼志野茶碗にのこりし紅ぬぐふ/吉野義子
初市に妻と来て買ふ志野茶碗/七田谷まりうす
青蜜柑茶碗に水を満たしたり/冬の土宮林菫哉
積み上げて子ども茶碗やつばくらめ/児玉史湖
竹植や盆にのせたる茶碗酒/野坡「野坡吟艸」
鳥落ちて氷る茶碗や籠に其まゝ/阿部みどり女
ほうたるに茶碗の縁の缺けてゐし/佐々木六戈
絵のある茶碗を子に買ふ春日も卵色/磯貝碧蹄館
自分の茶碗のある家にもどつてゐる/荻原井泉水
鵺去つてぬるくなりゐる茶碗の湯/鍵和田ゆう子
茶碗さむくいきどほる歯のふれにけり/飯田蛇笏
あらくれた掌にかくれる一杯の麦飯茶碗/萩原蘿月
サマルカンドの茶碗や星の駈けめぐり/小檜山繁子
父の日におろす藍濃き飯茶碗/染谷佳之子「薄荷菓子」
冬ざれの山家の欠け茶碗に酒なみなみつがれる/大橋裸木
住み老いて飲む茶碗のお湯焚火ちら~映り/安斎櫻カイ子
俳句例:181句目~
霧の夜の茶碗におつる小虫かな/『定本石橋秀野句文集』
夕月やうにかせがせて茶碗酒/一茶/文化十三年丙子
子の茶碗つばめ西日をきりかへす/『定本石橋秀野句文集』