俳句例:101句目~
すべり来るスキー映画に大映し/高浜虚子
その映画見忘れまじく五月川/佐々木六戈
夜半の冬昭和レトロの小津映画/大西恒生
月見草野外映画のはじまれる/西村三穂子
野外映画海のひびきに星殖ゆる/小泉礼子
友兵となれり友の子と映画見に/細谷源二
初映画ほろほろ泣けて恥かしや/富安風生
キャンプの火欧州映画ごとき湖/河合大拙
震災忌の映画ひらひら人走る/鳥居おさむ
スチーム寒し光の雨の降る映画/宮坂静生
映画みて花壇の榻にまどろめり/石原舟月
蕎麦食うべあとは映画の鬼貫忌/手塚美佐
白黒の映画の続きちちろ鳴く/長谷川陽子
秋澄むや古き映画に連れ立ちて/織田耀子
映画の日縮図の蓮池この辺り/松崎せつ子
村に映画月光の稲架夜もほてる/藤本寿秋
映画出でホセとまぎるゝ炎天下/川口重美
枯野バス映画ポスター胴に巻き/宮坂静生
稲妻や露天映画はまだなかば/左右木圭子
納涼の映画の巴里にあそびけり/大島民郎
俳句例:121句目~
寒天やしやがまる妻の熱き映画/攝津幸彦
孤児たちに映画くる日や燕の天/古沢太穂
老夫婦映画ヘバレンタインの日/景山筍吉
臘月やゆつたりまはる小津映画/藤原禎子
日盛りのベルが鳴りをり映画館/行方克巳
大根で殴られつ放し無声映画/川村三千夫
映画女優柩車に添へる二月かな/宮武寒々
蕎麦の花無声映画のごとき村/村上喜代子
潮浴びし気だるさ夜涼映画すゝむ/岸風三楼
納涼映画触れてつめたき人の膚/富岡掬池路
にわとりへ白黒映画の手が伸びる/あざ蓉子
めかり時映画はシルバー料金にて/高澤良一
映画みる衣嚢つめたき鍵のあり/鷲谷七菜子
ギヤング映画みて南京虫に螫さる/西波二郎
砂漠の映画見て海雨の街傘ささず/田中英子
シクラメン妻を映画に誘ひける/楡井/秀孝
土砂降りの映画にあまた岐阜提灯/攝津幸彦
長き夜の黒澤映画「まあだだよ」/佐藤知敏
野外映画鞍馬天狗のをぢさん出づ/高澤良一
虫分けて来るや麓の映画バス/長谷川かな女
俳句例:141句目~
映画またハッピーエンド街は秋/松尾いはほ
映画見てヒロイン気分東風の中/詫摩まつ子
納涼映画に頭うつして席を立つ/田川飛旅子
映画館出て馬車路の蒸し蒸し梅雨/高澤良一
映画出てまだ明るしセルの肩を前/原田種茅
接吻もて映画は閉ぢぬ咳満ち満つ/石田波郷
映画よりもどりて藁を打つ気なく/田村了咲
雨ばかりの映画観る雨ばかり降る/前島篤志
小津映画に過去呼びおこす冬銀河/村松弘美
八月十五日春画上半の映画ビラ/中村草田男
事変映画兵の子父を見しと言へり/細谷源二
鷦鷯ヒッチコツク映画見たる頃/堀口みゆき
春雪いくたび切腹で終る色彩映画/三橋鷹女
湯ざめして古き映画を見たりけり/小宮山政子
映画のように四万十川で泳いでいるよ/峠素子
恋の映画見て来て汗疹の子を抱くも/清水基吉
見し映画あつけなかりし日脚のぶ/成瀬正とし
越冬資金ふところに映画館くらし/猿橋統流子
針を納めもとより映画観るつもり/成瀬櫻桃子
サフランや映画はきのう人を殺め/宇多喜代子
俳句例:161句目~
アネモネや雨の降る夜の映画観て/和田耕三郎
映画の死者にまた葬送の楽おなじ/林田紀音夫
映画の使者にまた葬送の楽おなじ/林田紀音夫
映画見ぬ歳月久し巴里祭/石川冬扇「待降節」
映画出て火事のポスター見て立てり/高浜虚子
手袋をかんで映画を見て泣いて/野見山ひふみ
春や映画シモーヌ/シニヨレ撃たれけり/皆吉司
消えた映画の無名の死体椅子を立つ/林田紀音夫
糞のごとひかるビフテキ/アメリカ映画/島津亮
ロシア映画みてきて冬のにんじん太し/古澤太穂
口シヤ映画みてきて冬のにんじん太し/古沢太穂
消えた映画のうすむらさきのさるすべり/栗林千津
恋の映画ひとりで見に行くホワイトデー/菖蒲あや
納涼映画チャーリーと犬にうつゝの濤/中村草田男
暗さもジャズも映画によく似ショールとる/星野立子
売られる映画館のネオン息づく赤青緑黄/栗林一石路
しやが咲いてひとづまは憶ふ古き映画/三橋鷹女「向日葵」
たくわえなくも妻をつれてきて暗い映画を見ている/橋本夢道
映画終れば独りに復るわが囲りのシート荒荒しく畳まれゆきて/三國玲子
たはやすく弾丸に撃たれて雪山をまろび落つる熊は映画に撮られぬ/半田良平