俳句例:101句目~
白南風の地図に無き道海へ出づ/鈴木鷹夫
月寒く地図より消えしソ連邦/山崎千枝子
地図にある日本は赤く梅白し/阿部千代子
地図にて辿るパウロの行路秋薊/宮脇白夜
絵地図手に伊賀の寺町冬ぬくし/日下静代
空に地図終冬の塵いつさい焼く/寺田京子
山峡の地図になき地図はだれ雪/秋野静子
熊打ちの拠点の地図へ朱を求む/新田汀花
地図の橋渡り返して春眠す/長谷川かな女
地図ひろげ八十八夜の旅ごこち/脇坂啓子
玄奘に地図無き道や沙羅の花/清家美保子
星涼し父と見てゐる山の地図/赤坂とし子
サファリーの背に汗の地図島原へ/鈴木鷹夫
パパイアに行先のこる地図濡らす/鷹羽狩行
亀鳴くや地図に確かむ子の任地/松倉ゆずる
人住まぬ辺りの地図を読み始む/相生垣瓜人
南海の地図の蒼さを初夏の部屋/文挟夫佐恵
国栖の地図ひろげ見入り神無月/渡部伸一郎
地図で計るあなたとの距離春の虹/片山嘉子
地図に見る明日行くところ萩の卍/池田澄子
俳句例:121句目~
地図の上に汗を落して命令聞く/長谷川素逝
地図よりも暗く鵜が覚め日本海/猪俣千代子
夏山の地図古り母も老いたまふ/石橋辰之助
晩秋やイタリア青きゲーテの地図/有馬朗人
指で辿れば燃えつきてしまう地図/大西泰世
火峨の影展げし地図にあまたゝび/清原枴童
煖炉燃え明日越す嶺は地図にあり/岸風三楼
月と眠る/地図の一点に横たわり/江里昭彦
山の地図腰ポケツトに真夏来る/八幡より子
かはほりや古地図のままの城下町/内田裕夫
秋の夜は地図から消えた村さがす/平川義光
子の旅を地図になぞりて夜長の灯/岡本静子
緑蔭にひろげし地図をかこみけり/柏井古村
老遍路道に地図置きたづねをり/五十嵐播水
清水のむかたはら地図を拡げをり/高野素十
芥子咲くや漂砂はてなき地図の上/古舘曹人
枯風や貼られて生きる戦後の地図/寺田京子
花火開く地図になき島また見せて/河野南畦
虎杖を噛みつゝ地図をしらべけり/岸本白霧
柿若葉カミさんと地図買いに出て/坪内稔典
俳句例:141句目~
蟇這い出す赤と黒との不眠地図/八木三日女
行く春の地図に磁石をのせにけり/山本洋子
街角に地図ひろげ持ちあたゝかし/美馬風史
大白鳥地図のあちこち消してくる/杉野一博
逃げ水や地図より消えし小学校/磯崎ゆきこ
夜店の灯古きパリーの地図を買ふ/有馬朗人
春風にはばたきがちや地図ひらく/西村和子
開きたる地図に朝霧のってくる/長島喜代子
江戸古地図展げて春を惜しみけり/川村紫陽
汽車今は地図のこゝゆく春の旅/石井とし夫
梅雨明けの地図を広げてカーエリア/平上昌子
春待つや地図に遥かな子との距離/古座岩康子
蝦夷の地図ひらけばかなし夏ながら/林原耒井
木五倍子咲く地図には載らぬ道祖神/北澤瑞史
時差刻むホテルの地図や去年今年/小路智壽子
記憶の地図に緑のしるしつけてゆく/芹沢愛子
地図をよむ外套をもて灯をかばひ/長谷川素逝
旅の地図元にたためず夜のすいと/河浦/隆三
地図にはなしかやつり草の咲く径は/坂本謙二
地図にない島に住まひてひじき刈る/神野島女
俳句例:161句目~
すいつちよ来ぬ海溝青き地図の上/冨田みのる
夏帽をイーハトーブの地図に置く/肥田埜勝美
雁渡る地図にロシアのうすむらさき/川嶋悦子
しぐるるや茶房に大きパリの地図/麻殖生伸子
飛騨の地図ひとり見ている夜寒かな/田中冬二
手の地図をたたみかねつつ東風の景/阿波野青畝
友の地図のポストまだ見ず薔薇の垣/中戸川朝人
子が描く遊山の絵地図ねこじやらし/上田日差子
去就いまだ地図より翔ちし瑠璃揚羽/河野多希女
寝ぬ室に地図広く掛かる寒さかな/長谷川かな女
人にはぐれ地図にはぐれし薄暑かな/安田くにえ
蚊火に見る地図のパプアは湿地多し/文挟夫佐恵
音がしそうな谷画く十七歳の山岳地図/伊丹公子
蚊火焚いて色地図散らす二タ夜三夜/文挟夫佐恵
けら鳴くや地図にあれどもけもの道/中島木曽子
黒峠とふ峠ありにし/あるひは日本の地図にはあらぬ/葛原妙子
海岸線を女体と思ふ一瞬を地図に見て旅組みてゆくかな/黒瀬珂瀾
寒い足が出てシベリアの地図をかぶつて寝ていた夢というもの/橋本夢道