俳句例:101句目~
お会式太鼓夜の運河に打ち連ね/加藤望子
くちびるに夏来る運河しづかなり/皆吉司
さざなみの余白は暗し冬運河/北見さとる
逆落つるごとく運河の壁に芥子/石原八束
黒南風の切傷に沁む運河べり/秋元不死男
夕焼や鍛冶の火ともる運河べり/木下夕爾
梅雨運河まれに舟過ぐ樫の幹/文挟夫佐恵
運河くろし投げては盆供漂はせ/石田波郷
運河老ゆ蓮葉氷に海猫乗せて/佐藤まさ子
狐火のひとつがとびて運河あり/森川暁水
九月はや運河に人の咳ひびく/榎本冬一郎
儀式一つ映して唖となる運河/増田まさみ
時化波の運河に魂を送りけり/加藤三七子
玉虫を手でかこみゆく運河ぞひ/細見綾子
海鳴りやことに冬至の運河べり/水谷郁夫
時効だと告げる運河に雪降れば/櫂未知子
秋ざくら倉庫とともに運河古る/赤塚五行
夜の運河どこか黍引く音がする/伊藤淳子
忘年会果てて運河の灯影かな/小川濤美子
廃運河水澄む秋をやゝ澄めり/水原秋櫻子
俳句例:121句目~
野分めき運河小暗らし煤降れり/細川加賀
酢の倉の運河引き込む春の雨/今泉かの子
傾けばさびしさ集れり運河の帆/細谷源二
夜学淋し運河の破船玻璃に峙つ/橋本鶏二
帆を燈しゆふべの運河布となる/細谷源二
寒夕焼運河をそめて昏らかりき/塚原麦生
運河却つて国を亡ぼしぬ雲の峰/久米正雄
赤い紫陽花に運河がきて曲がる/和知喜八
短日や運河の水のやつれゐて/片山由美子
脊椎の抱かれるときは運河なり/田中亜美
墨いろの運河へ垂らす秋すだれ/有馬籌子
馬立ちて運河にうつる朝曇り/榎本冬一郎
舟の窓より赤き風船運河のぼる/加藤秋邨
古傷のたぐい運河に窓落ちて/増田まさみ
十三夜木場に名残りの江戸運河/中島五月
利根へ続く運河の茶屋の帆掛鮓/久米正雄
冬シャツ乾く運河と熔鑛爐の間/中島斌男
黄塵に暮れゆく運河燈ともさず/竹下陶子
冬の運河に光渡してバス廻る/田川飛旅子
運河春風ビルの窓より花買はれ/神尾久美子
俳句例:141句目~
枯尾花運河はなにもかも隠す/鍵和田ゆう子
月涼し運河をめぐるカンツォーネ/今留治子
遅れ焚く門火が澄めり運河べり/古賀まり子
夕風絶交運河/ガレージ十九の春/高柳重信
昨日捨てた花氷る運河に街詰まり/伊丹公子
夏みかんの皮の黄浮かべ運河の朝/古沢太穂
青年の眼の奥いくつもの運河ある/藤本一幸
しぐるるや船いま運河わたるとき/佐川広治
ななかまど明りの道を運河まで/成田智世子
啼鳴や運河も昏れて哭くときあり/三橋鷹女
シリウスの真下の黒き運河かな/柴田いさを
啼き移る田鶴に運河を拓きゐる/神尾久美子
町裏にのこる運河もみどりさす/古賀まり子
花種買ふ運河かがよひをりしかば/石田波郷
蠅取リボンきらめく運河べりの家/沢木欣一
工場地帯へ虻が先ゆく運河わたる/古沢太穂
灯を籠めて運河凍てむと揺蕩へり/下山芳子
鰡とぶや運河に潮の満ちきたる/道川源治郎
運河春昼亡父の旧知の舟漂よひ/神尾久美子
秋の日が好きと運河の藻はそよぐ/川崎美知子
俳句例:161句目~
運河夏向き変う方にも走るクレーン/古沢太穂
梅雨に入り運河のくろさ胸を占む/榎本冬一郎
火を焚けば運河にうつり且ひゞく/榎本冬一郎
燃ゆる石炭棄てて運河の落葉照らす/加藤楸邨
ゼラニューム溢るる窓も運河沿ひ/稲垣きくの
運河暗し秋暑捨つべきところなく/大谷碧雲居
一人のオウバア衿より灯る運河べり/寺田京子
運河に入る水母を海が呼びもどす/橋本美代子
はつはなのはまなすの濃き運河かな/永島靖子
葭簀越しに運河が匂ふかなしけれ/加倉井秋を
おはよう運河登校の徽章映えては消え/伊丹公子
カンナひらひら運河逆流してゐたり/山田真砂年
羽子浮かぶ今日の運河のさざなみに/加藤三七子
白菜わづかに干してここの運河に一家族/古沢太穂
閑な市電尻ふり早春の運河沿いに/赤城さかえ句集
薔薇酒すこし飲みたるわれに大運河小運河の脈絡暗し/葛原妙子