匙に関連した俳句の例をまとめました。
匙を含む俳句例
一匙の栗金色に離乳食/都筑智子
一匙の雪一椀の離乳食/対馬康子
歳月の八十八夜銀の匙/伊藤君江
温泉の寒卵なり匙を添へ/森田峠
疲労が掟/舌は匙の形/阿部完市
風邪薬匙へな~と調剤す/本田一杉
残雪や北欧に買ふ銀の匙/吉野義子
虚空より泰山木の花の匙/金戸夏楼
金の匙霞一皿平らげる/栗田日出子
風花や名代七味の匙さばき/原俊子
さらば夏の光よ男匙洗う/清水哲男
震災忌置く箸の音匙の音/三橋敏雄
一匙の脳天衝けり夏氷/能村登四郎
銀の匙光り寒九の水の中/鈴木初男
蜜掬ふ匙の重さや春の昼/藤田湘子
人日や粥に小匙の塩加減/伊藤白雲
冬の旅地上の鳩が匙に見ゆ/上村占
黴厨匙きらきらと密集す/目迫秩父
秋の雨子の匙音を隣室に/大井雅人
初苺家族の数の匙ひかり/河前隆三
俳句例:21句目~
匙なめて童たのしも夏氷/山口誓子
桜草コツプにふれし匙の音/井上雪
部屋中が匙に映りぬ雛祭/正木ゆう子
匙音を立てては水着家族散る/桂信子
銀の匙もて雪嶺を窓に指す/神谷九品
蜂蜜の匙からのったりと遅日/蔦悦子
春寒し匙落したる音ひびく/岸田竹女
夏氷生きのこりいて匙の音/三上史郎
蓮辯の匙の空濃し白く濃し/永田耕衣
一本の華やぎ晩年の銀の匙/伊丹公子
夕焼に飢ゑを二匙加へけり/櫂未知子
風邪の妻起きて厨に匙落す/山口誓子
五分粥の一匙にある冬日かな/井上雪
春の昼匙おちてよき音たつる/桂信子
聖五月磨きて匙を光らしむ/来間鷹男
夫婦の夜氷菓の中に匙残し/対馬康子
添へられし附木の匙や麦いり粉/是山
春苺夫婦に銀の匙古りぬ/殿村莵絲子
雁わたる塩壺に匙深く埋め/星野昌彦
冬至粥杢目詰みたる椀と匙/鈴木一水
俳句例:41句目~
磨く匙きらりと水に夏兆す/山下喜子
短夜や拗ねし女に投げし匙/中村哮夫
如月や人の華燭の銀の匙/渡邊千枝子
小鳥来る朝が逆さに匙の中/有馬朗人
銀の匙に麦粉そなへん漱石忌/中勘助
眼光に蜜豆の匙とまりたる/徳弘喜子
氷水ぶりきの匙の曲りたる/水原春郎
銀の匙おけばチリンと冬隣/大塚憲二
匙につぶす苺の弾力さへ五月/瀧春一
珈琲の匙ひんやりと初紅葉/務中昌己
初明り粉乳へ挿す銀の匙/田川飛旅子
枕頭に金の匙ある夏の風邪/四ツ谷龍
金婚や金の小匙の涼しかり/田中英子
山眠る磨きこまれし金の匙/田中/都
玉虫よ粥一匙が身に余り/座光寺亭人
煮凝やニッケル製の厨匙/左右木韋城
春昼の匙おちてよき音たつる/桂信子
匙の音寒あを空は過冷却/平井さち子
かき氷匙音立てて甘つたれ/大木あまり
かき氷言葉は匙に触れて消ゆ/室谷恭代
俳句例:61句目~
こがらしや砂糖に溺る砂糖匙/宮坂静生
つばくろや匙の地金の現はるる/小澤實
ゆで小豆匙の丸さに従へり/長谷川秋子
ゼリーたべ硝子の皿と匙残る/田村了咲
ババロアが匙の上なり秋の風/中島陽華
一匙に皿のゼリーの大揺れす/中村祐子
一匙のアイスクリームや蘇る/正岡子規
七宝の匙きらきらと氷菓子/永島理江子
七草粥匙もて祝ふみどり子は/大熊輝一
冬のコーヒー一匙分の忘却や/寺山修司
冴え返る匙を落して拾ふとき/細見綾子
匙を見て母が口開く木の芽寒/岡本高明
匙入れて皺むスープや春深し/奥坂まや
匙向けてこれの炎口へ氷水/赤松けい子
匙置いて絵皿を鳴らす花曇/丸山しげる
匙落ちし音皸にひびきけり/百合山羽公
匙見れば口あく吾子や麦の秋/村井正子
匙運ぶ前に口開き土用あい/中戸川朝人
妻癒えてメロンの舟に匙の櫂/本宮鼎三
子がなくて苺ミルクの匙なむる/桂信子
俳句例:81句目~
客の前蝿来て匙をなめにけり/皿井旭川
寒いちご親子四人の匙の音/福永みち子
小匙にてすくふ煮凝り越の国/佐川広治
山紅葉皿に映るを匙つかふ/猪俣千代子
幸来ずや苺をつぶす銀の匙/佐野まもる
待春の小匙にすくふ甘納豆/百瀬ひろし
夏桃や次の匙待つ離乳の児/小川ユキ子
春立つや一匙で足る末期の水/高橋悦男
末の子が匙なめて日を短くす/長谷川双
水羊羹匙ひやひやと使ひけり/高澤良一
火事の夜の女がつかふ銀の匙/古舘曹人
病人の一と匙で足るのつぺ汁/前内木耳
癒え初めて燃ゆる苺の一匙よ/都筑智子
石焼藷銀の匙もてすくへるよ/山口青邨
秋の夜や紅茶をくゞる銀の匙/日野草城
粥すする匙の重さやちちろ虫/杉田久女
置手紙西日濃き匙乗せて去る/中島斌雄
花の夜の昂ぶりに置く銀の匙/加藤三陽
芽柳や銀座につかふ木の小匙/伊藤敬子
調剤のきらりと小匙水鳥見え/友岡子郷