俳句例:101句目~
六月風いま樽形に縄立てり/中戸川朝人
出番待つ大樽味噌の目貼かな/早川節子
初鮒を樽に漬けこみ湖辺村/友永佳津朗
観潮會酒樽渦のなすままに/下村ひろし
呑み明けて花生にせん二升樽/松尾芭蕉
花八つ手水張つてある四斗樽/池田順子
甘柿の樽にも入らで過にけり/尾崎紅葉
大樽に鰰寿司を仕込む海女/阿部月山子
申年の梅二タ樽を漬けにけり/有川栄子
樽の上花菖蒲活けビヤホール/今泉貞鳳
樽神輿路地を圧して子供ごゑ/高澤良一
春雪や樽それ~の化粧薦/久保田万太郎
雷のなかなか去らず泥鰌樽/鈴木真砂女
霧の中の陽に音たてて樽作り/桜井博道
顔見世や積樽の上江戸の月/岡本癖三酔
囲ひ酒見まはる樽を指はじき/亀井糸游
樽柿の少し渋きをすてかねし/正岡子規
柴付けし馬のもどりや田植樽/松尾芭蕉
ワイン樽ねかせて秋を煤けし灯/伊藤京子
並ぶ肥樽峰雪嶺に湧きつつあり/成田千空
俳句例:121句目~
樽あけて泡吹かれよる新酒かな/飯田蛇笏
樽椅子の屋号は鍵屋木の実降る/田原公世
春の野に樽から足を伸ばしけり/永末恵子
李白いかに樽次はなにと花の滝/山口素堂
樽にみずたつぷりとある祭かな/永石祐子
から樽をもりにあてけり月の雨/内藤丈草
大樽の味噌のつぶやく梅雨の夜/植田桂子
花冷えや古き樽積むワイン蔵/山田紀美子
大樽に京の底冷えみつしりと/大木あまり
一乗谷川鳴る瀬に浸す漬菜樽/能村登四郎
樽の香の御神酒を受くる初詣/大関とし子
樽を干す木香に人酔ふ返り花/大須賀乙字
酒樽のそれより小さき若葉かな/正岡子規
酒樽のひとりころがるうらゝ哉/中川宋淵
このわたは小樽海鼠は中樽に/鈴木真砂女
恋猫の酒樽を飛び跳ねてゆく/高橋とも子
ころがして来て酢茎樽大いなり/小川千賀
さかしまに樽置き上に冬菜置き/高浜虚子
わかさぎ漁樽前颪に背を向けて/安部康子
飯もりの樽ひろふ子の胼を泣く/羅蘇山人
俳句例:141句目~
クローバに葡萄を醸す樽まろび/大島民郎
ビヤ樽に台風前の雨ぎつしり/秋元不死男
鵜飼見の酒樽に凭り酌みそめぬ/飯田蛇笏
ビヤ樽の半截が鉢エリカ咲く/中戸川朝人
麦酒樽の朱のあざやかに夕立す/内藤吐天
釘樽に首を突っ込み今日から冬/河合凱夫
むきだせる焦土を踏めり樽神輿/百合山羽公
花にぬれて樽に綿衣をぬぎかけし/子規句集
柿熟れて樽の外輪のひとり歩き/小泉八重子
べつたら市の小店尽きたり糀樽/山田みづえ
樽冷酒つけたしに蕎麦すすりけり/石川桂郎
樽に泥鰌宵はざわめくマーケット/北野民夫
開きたる炉と樽酒にもてなされ/鈴木はる子
大樽に糸瓜つけあり水澄める/阿部みどり女
草いきれらつきよう樽の舟速し/長谷川阿以
樽の水に映るべつたら市古し/長谷川かな女
樽の臍爐ぶちにおいて月を見る/廣江八重櫻
比叡よりの暮雪あそべり酢茎樽/山田ひろむ
樽の酒注げばとくとくおぼろ湧く/桑原視草
ブリューゲルのビア樽男ビール酌む/高澤良一
俳句例:161句目~
春日遅々樽からもやしを妻が買ふ/磯貝碧蹄館
火だるまとなりたる樽の五月かな/大木あまり
かりがねや古城にねむるワイン樽/木下ローズ
行くとしや樽の南の字になむあみだ/服部嵐雪
覚むるたび家ぬちに柿の樽がある/篠田悌二郎
明けがたよりさすがに音なし手樽の月/立花北枝
味噌の樽ころがり着ける冬至かな/長谷川かな女
夕凪に油樽つむあつさかな/几董「晋明集二稿」
千々の秋ひとつの樽にはしかじ今宵の月丸/九石
夏川や砂みがきする樽二つ/蘇子句集/木下蘇子、吉田冬葉/松本翠影編