俳句例:101句目~
人生の央ばゆくわれ落葉ふむ/岩崎照子
人生の要するに暑くてならぬ/池田澄子
人生の些事と処すには明易き/山田弘子
人生の四十路俄かに露けしや/深町丘蜂
木の実独楽人生傾斜して廻る/吉田未灰
金亀子人生の岐路今ここに/軽部烏頭子
人生のはじめ真夏の火事ひとつ/徳弘純
霧濃くて人生を引き還せざる/三好潤子
第三の人生始まる菖蒲の芽/松沢満里子
空っぽの人生しかし名月です/榎戸満洲子
人生つてと夏大根をすりおろす/岩本尚子
人生のかなしきときの燗熱し/高田風人子
人生の午後は日脚も伸びにけり/谷川水車
浮巣見しのみの人生かも知れず/今瀬剛一
緑蔭の椅子人生長く倦みにけり/木下夕爾
此処にも人生きるよ雪の中の葱/藤岡筑邨
人生事枝豆青くうだりけり/久保田万太郎
人生冴えて幼稚園より深夜の曲/金子兜太
寒燈下影を踏み合う人生かな/鈴木六林男
川涼し人生きかはり死にかはり/村松紅花
俳句例:121句目~
炎天に何もなし人生きて群れ/殿村菟絲子
かたつむり人生長くなりしかな/松尾隆信
この蒲団わが人生を知つてをり/猪子青芽
ばら色の人生知らず薔薇に彳つ/伊東宏晃
手探りで来た人生や蓮根掘る/すずき春雪
ふと愉しき人生花もつ雪の下/柴田白葉女
人生かがやく空瓶に蝿すみつきて/島津亮
鳴叫ぶ日ぞ人生に借りなどなし/楠本憲吉
鴨引くや人生うしろふりむくな/鈴木真砂女
もし人生が祭であればまたさびし/橋本夢道
白菖蒲過去なくて人生きられず/稲垣きくの
人生や手辛万苦新巻をそこに吊り/橋本夢道
つかの間の流燈人生さみしくて/柴田白葉女
秋光にブーメラン/人生あと半分/本郷和子
はてしなき人生ゆづ湯を肩まで/中塚たづ子
手毬にいとど乗る人生の央ばなれ/原子公平
人生なかば白く黒く雪降りしきる/川口重美
暮れ遅くふと人生に倦みにけり/高橋淡路女
日向ぼこしてゐて人生に出遅れし/齋藤愼爾
絵茣蓙古り人生もほぼ古りにけり/後藤夜半
俳句例:141句目~
柿は黄に熟れぬ人生らちもなし/室積波那女
そも人生の振返る日はあせ噴く日/細谷源二
すすき新穂硝子戸に透き人生きる/中山純子
逃げた雲追わんとする人生終末感/小林星人
外寝人生きてをるかといぶかりぬ/下村梅子
人生のはじめの頃やアロハシヤツ/成瀬正とし
お釣りほどの人生に生き挿木する/能村登四郎
空蝉にひとしき人生吹けばとぶ/阿部みどり女
みかん黄にふと人生はあたゝかし/高田風人子
薄羽かげらふ人生読本へ居睡れる/田川飛旅子
虹を見て人生とんぼ返りも出来ず/百合山羽公
複写機から出てくる人生夏はじまる/伊丹公子
からかさにばつたを入れて長い人生/三橋鷹女
束ね髪のこんな人生へ早い夕刊が届く/鈴木常子
緑蔭や人生時に憩ふべし/高田風人子「明易し」
人生ゲームのコマのやうなり花八つ手/小林貴子
籐椅子に寝て人生を折り返す/高橋悦男「海光」
人生のやり直しはない/あかいぼたんの芽/四ノ宮一蓑
こうして終ってゆく人生で豆腐屋の朝のラツパ/二俣沈子
きりきりネッカチーフ人生以前を足早に/赤城さかえ句集
俳句例:161句目~
人生こんなものと生れた日のひげそりながら思う/池原眠洞
焼酎に甘んじ人生愉快なり/細見しゆこう「若葉俳句選集」
こんなにも淋しい人生がある獨り榧の実を煎る/安斎櫻カイ子
人生に付箋をはさむやうに逢ひまた次に逢ふまでの草の葉/大口玲子
人生の坂をひた登る君たちと下りゆく吾れと会ひて手を握る/岡山巌