遺影に関連した俳句の例をまとめました。
遺影を含む俳句例
更衣遺影の母はいつも縞/林翔
遺影にもある日月や山椿/秦夕美
近影の即ち遺影鳥雲に/森田智子
又語る夫の遺影に鉦叩/稲畑汀子
軍服の若き遺影や笹粽/久保正俊
丸刈の父の遺影と蛍の夜/浦野芳南
夜蛙や遺影童顔首かしげ/細川加賀
豆飯と遺影と私と夕月と/森本芳枝
青露や遺影茅舎は善童子/福田蓼汀
ちちははの遺影の下の籠枕/下田稔
盆仏真中の遺影は勝之丞/高澤良一
兵の遺影鰯に黒き七つ星/村山安子
横顔の父の遺影や鮎の腸/吉田紫乃
芳草や遺影百日髯黒し/百合山羽公
福寿草遺影と交す赤ワイン/泉京子
遺影涼し林中を牛の斑が移り/子郷
初灯遺影は年を重ねざる/高本時子
夏菊を母の遺影に誕生日/長野茂子
大年や遺影の夫の額拭ふ/和田知子
遺影とは硯に映る柳かな/長谷川櫂
俳句例:21句目~
水仙や母の遺影の庇髪/塩谷はつ枝
虫干や遺影の兄は椰子に凭り/轡田進
新涼や遺影はけさも微笑して/斉藤節
虫干のこの紬着て遺影夫/塩谷はつ枝
苦虫の遺影に冬日届きけり/嶋田麻紀
若水を遺影の妻と分ち合ふ/野原春醪
春障子開きて父の遺影のみ/毛塚静枝
終の石榴燦たりや笑う遺影/寺井谷子
柚子湯出て夫の遺影の前通る/岡本眸
花樒父の遺影と遊ぶ日ぞ/田川飛旅子
花の雨勇士の遺影濡れて通る/瀧春一
われならぬ上等兵の掛遺影/三橋敏雄
芝ざくら遺影は若く美しや/巌谷小波
一兵の遺影は二十歳十三夜/鈴木信行
位牌より遺影の親し桜草/塩谷はつ枝
水仙の花の遺影を丸く切る/二村典子
冷かの句帳に挟む師の遺影/木村蕪城
遺影にもある煩悩や夏の月/谷口桂子
北窓を塞ぎて妻の遺影置く/宮田富昭
母の日や母の遺影は手で拭ひ/樋笠文
俳句例:41句目~
長き夜や遺影の眼鏡こちらむく/照子
寄鍋や母の遺影も湯気の中/片山淳子
遺影となる白髪貴し葉櫻に/古舘曹人
遺影妻春や雲公してくるよ/永田耕衣
師の遺影横むきの眼を夏菊に/上村占
弱にして遺影の妻に扇風機/内山泉子
遺影笑む秋燈の陰ありながら/森田峠
辛酸を語らぬ遺影枇杷の花/吉岡桂六
御遺影の花にまた来よ鉦叩/田中由子
羨望は花の吹雪を行く遺影/原田青児
遺影まで届く朝の日笹子鳴く/縣信彰
愁無き笑顔の遺影菊に在り/吉屋信子
母の遺影やがて透明な繭なり/瀬戸密
盆灯籠遺影は在の産科医たり/高澤良一
おかつぱの二百の遺影壕滴る/木田千女
かいま見し鴨居の遺影古簾/服部たか子
笑む遺影無神論者よ花ミモザ/山本歩禅
ねんごろに遺影と話す盆の客/木村宣子
胡蝶蘭遺影の夫と眺めをり/前川みや子
芽柳や遺影着流しならぬなし/川崎慶子
俳句例:61句目~
蕗の薹供へ遺影は帯に手を/深川正一郎
遺影あり軍装あつくなほ解かず/妹尾健
ほほゑみて遺影ふくよかなり寒し/耕二
遺影多き家に水乞ふ夏つばめ/鈴木鷹夫
達治忌の遺影年ごと若くなる/高久清美
遺影持つ妻に粉雪しんしんと/堀口美鈴
遺影秋深し自刃供へまつり/佐野青陽人
雪嶺に手を振る遺影ふり返り/福田蓼汀
露けさの遺影に語ること多き/館岡沙緻
冬籠る北に窓あり遺影の間/殿村莵絲子
冷まじや遺影を借りる役廻り/鈴木鷹夫
問ふことの多き遺影に冬日差/横山房子
団扇風もらひ遺影に献笛す/斎藤新一郎
悴めば遺影は横を向きにけり/古舘曹人
春埃そつと拭いたる子の遺影/吉田きみ
朝寒や夫の遺影を手囲ひに/布川京なみ
母の日や遺影はすでに髪下し/近藤一鴻
水無月の文机に置く遺影かな/山本洋子
芝ざくら遺影はとはに美しき/巌谷小波
焼かれいる刻の遺影と目借時/森田智子
俳句例:81句目~
父の日の若き遺影を父と呼ぶ/山田孝子
盆の客見渡し居らる遺影とも/高澤良一
熱燗を酌む顔でゐる遺影かな/にいざ蚯蚓
遺影の前食べつつ氷菓尖りくる/友岡子郷
ははそはの無月の遺影正しけり/大西一冬
小菊にも埋もれがちの遺影なる/山田弘子
遺影みな淋しい微笑浜木綿咲く/浜田/妙
斯くてまた冬去る父の若き遺影/徳丸龍女
遺影ふと励ましの目を涼しき灯/高木晴子
蝶くれば蝶を見てをり遺影の目/玉城一香
やや褪せし遺影の眉目白牡丹/文挟夫佐恵
掛けて久し父の遺影も秋の晴/深見けん二
何時までも笑顔の遺影夏つばめ/上野仁子
侘助や遺影の笑みはいつまでも/及川希子
遺影ひとつ加へし邸の年暮るる/山田弘子
歴代の遺影をかかげ寒造り/きくちつねこ
遺影に柵おそらくは露深き柵/加倉井秋を
炎昼の砂利ふみて来し遺影かな/原田青児
娶らざりし遺影の笑みへ羽蟻翔つ/飴山實
柿四とせ遺影は永久に若き笑み/中島斌男