俳句例:101句目~
千年のこの閑けさに残る虫/つじ加代子
蝉とべり千年杉の塵として/百合山羽公
淡墨のさくら千年忌のごとし/内藤さき
千年の古都とんとんと春の風/鹿又英一
論ずるに千年早い浮いて来い/高澤晶子
千年の後も落花の吹雪くらむ/大西岩夫
身に沁みて千年前の呪詛の碗/穂積曄子
千年の春田を水の走りたる/宇多喜代子
千年の杉のこゑ棲む青高野/豊長みのる
千年の松も落葉は小さくて/中村草田男
千年の樹魂の春にめぐり逢ふ/野澤節子
千年の雪降る塔の上にかな/秋山巳之流
千年も万年も黒かきつばた哉/攝津幸彦
千年も生きてゐさうな青蜥蜴/岸川佐江
千年をまた一つより始めけり/長谷川櫂
千年を泣きつづけたる埴輪かな/中勘助
麦わらも千年の松のまもり哉/正岡子規
千年の如意を御ン所持良弁忌/阿波野青畝
ひとがたの春千年のおちよぼぐち/松澤昭
千年の留守に瀑布を掛けておく/夏石番矢
俳句例:121句目~
千年の銀杏しづかに花降らせ/あらきみほ
起き出でて千年杉に変わりなし/和田悟朗
千年のさくら散りゆく匂ひかな/仙田洋子
おたいまつ消え千年の杉にほふ/細井みち
千年やべつたら漬の神として/佐々木六戈
千年のはたとせ過ぎし松みどり/松藤夏山
娼婦の日傘黒死病の町の千年後/馬場駿吉
見上ぐるや囀あふるる千年杉/坂田加寿恵
祭を外れ身に千年の川を溜め/八木三日女
千年は永くもなしよねこじやらし/辻桃子
秋千年佛身笑みてまどろまず/栗林一石路
千年後の空を見上げる黄菊かな/鈴木光彦
千年の衣冠正しき競べ馬/水見壽男「馬」
遺響千年よしのの芹の固さかな/夏石番矢
雛の目の遠まなざしや千年紀/佐藤美恵子
凍瀧や千年も待つここちして/大木あまり
保矢あまた飢饉を見たる千年栗/田中英子
三十日月なし千年の杉を抱く嵐/松尾芭蕉
千年の大扉をはなちイースター/内田美智子
千年の回廊を踏む素足かな/関口恭代「帆」
俳句例:141句目~
踏み入れて千年といふ家の冷え/ふけとしこ
千年のさくら振り向くことなかれ/黒田杏子
しばし間も待つやほととぎす千年/松尾芭蕉
水草紅葉堀千年の思惟ふかむ/鍵和田ゆう子
千年のさくらにうつけごころかな/大橋敦子
いなだ割く鋭きひかりかな千年紀/児玉悦子
眼が痩せて飢千年の樹をつたう/八木三日女
枯野かけ来て千年をうもれし馬車/有馬朗人
厨子の前千年の落花くりかへす/水原秋櫻子
千年もいきればいいなちび金魚/金田遼太郎
公暁あはれ公孫樹千年の黄の壮さ/石塚友二
鹿鳴くや千年踏まれし邪鬼もまた/松永泰江
「かあ」とそれきり千年声を喪う鷹/豊口陽子
千年の橡に触れゆく夏の雲/宮地英子「水缸」
一字に匙し李賀すべけんやの酔千年/加藤郁乎
千年の杉を喜雨来る東司かな/下山芳子「友禅」
こはばりてゆく唇ありかくしつつ三千年をねむらむ/斎藤史
君よたとへば千年先の約束のやうに積乱雲が美しい/目黒哲朗
草の上にうまれしものを螢と呼ばへば千年の闇くづれけり/日高尭子
杉の秀をずんずんずんずん雲がゆくもう千年は迅くに経ており/佐伯裕子