俳句例:101句目～
バスを待つ凍てし油の壜さげて/田村了咲
冬の雲マーマレードを壜に詰め/佐野典子
冬は過ぎゆく空壜をただ見つめ/対馬康子
冬薔薇傾けて置くワインの壜/伊藤いと子
冷雨の村見え壜透明な立ち泳ぎ/有村王志
唇にラムネの壜のいかめしさ/相生垣瓜人
地吹雪がしんと集まる壜の底/大下真利子
壜に入れて麦湯冷やすや水の中/星野麦人
板の間に置きて壜酒年を越す/榎本冬一郎
烏芋の芽をめぐる目高や壜の中/会津八一
猫がゐてラムネの壜と戯るのみ/下村槐太
月光入りの壜が倒れた音である/池田澄子
壜の口ぼうぼう昏るる神渡し/小松崎爽青
立待の立てば空壜めくわれか/正木ゆう子
夕焼が壜あかく染めオリーブ漬/中山純子
蝉なくやしとゞに濡れて洗壜婦/西島麦南
朝露に濡れて置かれし牛乳の壜/吉屋信子
酒壜のあたりよりまづ冬日昏る/今井雄二
雁渡し浜にハングル文字の壜/山本恵美子
雁行くを見る空壜を鳴らすとき/対馬康子
俳句例:121句目～
雲の峰壜にパセリを挿したるよ/岸本尚毅
青北風や捨て壜に雲押しつまり/赤間玲子
壜のいもり切に素直に尾をふれる/原田喬
壜に溜まるほどの星屑鍵の束/正木ゆう子
夫在る日向壜の蓴菜不即不離/平井さち子
いつも机に虹漬けてあるガラス壜/蔦悦子
ひとまはり大きく梅酒壜の梅/猪俣千代子
野遊びやリユックにごつと洋酒壜/小島健
蝦夷からの文の壜着く今朝の冬/畑中とほる
ビール壜砕かれありアイヌ酔泣きしか/林翔
壜を洗ふごとき寂しさ夕焼けて/正木ゆう子
空き壜のラベルになった秋の風/津沢マサ子
ソース壜汚れて立てる野分かな/波多野爽波
ふくろふや並みてかがやく洋酒壜/朝倉和江
梅挿すやきのふは酒のありし壜に/石川桂郎
空壜に清水をいれてはまきちらす/岡田史乃
じゆんさいの沈む日ぐれや壜の底/長谷川櫂
ナイターの外くらがりを壜積む音/町山直由
松葉牡丹咲き酸アルカリの壜ならぶ/石原透
冬の野に壜を捨てては夢みけり/正木ゆう子
俳句例:141句目～
子規画きし壜の野菊に似せしめて/京極杞陽
壜触るる音のして夜の夏座敷/阿部みどり女
空壜立ちおよぐ海断水の主婦たちに/小田保
火焔ビン擲げられ山茶花ほろほろ/浅原六朗
空地で刺さる媚薬壜掘る墓掘人夫/赤尾兜子
近景に私信の壜詰ボート/レース/森本青三呂
壜より壜へ空気を移しつづける遊び/高柳重信
シャンプーの壜のももいろ冬至湯に/高澤良一
壜にさして水のごとくに罌粟耐ふる/松村蒼石
雛罌粟やパプリカの壜はからつぽ/正木ゆう子
急な朝発ち牛乳すこし壜にのこし/鴻巣又四郎
じつとしておれずに壜のヒヤシンス/枇榔蓉子
ドレッシングの壜ふつてふつて春惜しむ/三輪初子
井戸浅くラムネの壜を沈めけり/著森遺稿集/貴志著森
鍵をした窓から月の光差し君はいっぷう変わった壜だ/吉川宏志
望むらくわれに一人の若き敵一壜の古きぶだうの酒を/高橋睦郎
こほりたるインキの壜を火に翳し涙ながれむともしびの下/石川啄木
