俳句例:101句目~
八十に余る老祖父、子孫の栄ゆくにつけて、
早苗饗と言へばはるかな祖父の声/横原律子
伊勢海老や写真の祖父の父を抱く/藤村克明
ワープロを祖父に教へて文化の日/横原律子
祖父となるこの恐ろしさ豆撒けり/青木重行
祖父二人を曾祖父四人が殴る夏/高山れおな
ふるさとにいま祖父母なし鳳仙花/田中/仁
父の家を祖父屋根直し祖母仰ぐ/中村草田男
父よりも祖父なつかしき雁のころ/本宮哲郎
梅白く汝が子の祖父となりにけり/前田普羅
霜くすべほどの祖父母の愛なりき/松井のぶ
祖父淡く礁のほとり過ぎつつあり/佐藤鬼房
柿落葉祖父の気骨を誰も継がず/鵜沢千恵子
天瓜粉祖父母がかりに子は育つ/塩谷はつ枝
百年を生きて祖父あり夏まつり/ふけとしこ
祖父越えて来しかの山も炭焼くか/高濱年尾
花卉図鑑のあたりあかるく祖父の家/伊丹公子
ねんねこに仕立て直して祖父の服/田原口秋峰
仏手柑行けば小遣ひくれし祖父/田北/ぎどう
祖父逝きて触れしことなき顔触れる/大石雄鬼
俳句例:121句目~
角煙突は祖父の世のもの蔦茂る/鍵和田ゆう子
冬の雷祖父のきれいな頭は撃てまい/斎藤一湖
土葬の祖父ただに平らか落葉して/平井さち子
夕狩りは終わらず祖父を待つ露台/水野真由美
秋刀割る祖父の手つきと云はれけり/高澤良一
連隊は祖父とあやめを置き去りに/宇多喜代子
曝書して祖父なつかしく父こはし/後藤比奈夫
米寿なりし祖父の形見の黄帷子かな/石川予風
祖父の振るハンカチ白くゆるやかに/高野素十
紙かぶと祖父にもかぶせ端午の子/岩村美智子
祖父と糸瓜たいくつでない長さかな/馬場民代
祖父の世の子の代の土に柿落ちて/長谷川素逝
たたみいわし焙る祖父の手見え冬へ/高澤良一
なかんづく祖父のほとりの淑気かな/鷹羽狩行
花の夜の友の祖父なるチェロ奏者/和田耕三郎
黒く大きな祖父のポケットお年玉/鈴木やす江
うんか禍のある田は祖父に見せられず/小川界禾
白湯の湯気祖父祖母の影かすかなる/杉本青三郎
実ざくろの木乃伊めく枯れ祖父の忌よ/高澤良一
冷まじや金銭のこと祖父へさかのぼり/宮津昭彦
俳句例:141句目~
すぎし日の祖父の美髯やみどりの日/佐々木美津子
身起す耕牛亡き祖父の声「よいこらさ」/香西照雄
祖父母ゐて潮浴び一家父を欠く/岡崎光「朱肉の蓋」
祖父が仕事した品の一つ売れて行く雪の日/滝井孝作
祖父が先ず触れモレーン/レイクの銀の櫂/伊丹公子
祖父の死へいそぐ十二の年も暑かりし今日/荻原井泉水
祖父の処刑の朝酔いしれて柘榴のごとく父はありたり/佐伯裕子
降りながらみづから亡ぶ雪のなか祖父の瞠し神をわが見ず/寺山修司
空も川もこほる十勝野祖父の杭ちちの杭さらにさらに打つべし/時田則雄