俳句例:101句目～
祝祭の雪夜にぎやかとりけもの/山田みづえ
雪の夜は遠き木魂に呼ばれをり/金箱戈止夫
雪の夜もゆかた一つや滝まうで/奈良-含粘
雪の夜やつぶ貝の蓋ひつこんで/八木林之介
雪の夜のほとけよろこぶ朱塗椀/神尾久美子
覚めてひとり盗汗ぬぐふや雪夜風/小林康治
雪の夜やホツトオレンジの匙長し/内藤吐天
酒こぼれし膳に雪の夜蟹ちぎる/猿橋統流子
酔ふほどに行火のあつき雪夜かな/小杉余子
雪の夜のいつも彼の星あるばかり/高木晴子
雪の夜のうつばり軋み父いま亡し/細川加賀
雪の夜の父のふとんに入る子ども/京極杞陽
雪の夜のペンが懐剣なるは可笑し/吉田紫乃
雪の夜の冬剪りダリア束ねらる/夏井いつき
あまえびのぬめりを舌に雪夜かな/吉野義子
雪の夜を泪みられて涕きにけり/鈴木しづ子
いねし子の朱唇にうるむ雪夜かな/渡邊水巴
ごきぶりの何と大きく舞ふ雪夜/殿村莵絲子
雪の夜の更けては父の匂ひこもる/佐野良太
雪の夜狂女はすでにねむれるか/山口波津女
俳句例:121句目～
ふるさとの雪夜のいまも匂ふ水/千代田葛彦
らうたけてあはれや雪の夜を眠る/太田鴻村
スタンドの燈は何さそふ雪夜なる/渡辺水巴
雪夜にて妙にも耳の鳴りゐたる/馬場移公子
ニポポ人形抱かせてもらふ雪の夜/影島智子
雪夜子にかぶすマフラー裏につぎ/古沢太穂
フリージヤ雪夜に長き妻の祈り/金箱戈止夫
並び寐の子と手つないで雪夜かな/渡辺水巴
亡き人の句に逢ひ閉づる雪夜の書/野澤節子
夢ありし雪夜の離被架庇護の中/赤松けい子
雪の夜の華鬘といふ語消え去らず/平井照敏
女に捨てられたうす雪の夜の街燈/尾崎放哉
子より幼く雪夜寝息に加はりぬ/猪俣千代子
馬が目をひらいてゐたり雪夜にて/加藤秋邨
子に如何な人現れむ雪の夜の林檎/文挟夫佐恵
雪の夜の耳より冷え来寝ぬべしや/鈴木真砂女
雪夜の瀬こころを遺れば奏でをり/馬場移公子
雪夜ふるさと真白き曲り蒼き曲り/加藤知世子
いぶりがつこ雪夜に飲めと届きけり/茂里正治
雪の夜のぶだう酒すでに寂に帰す/柴田白葉女
俳句例:141句目～
生けるものは重たさ持てり雪夜にて/加藤秋邨
雪の富士立てり嘆きの夜ぞ明くる/水原秋櫻子
雪の夜はホルンとビオラ睦むかに/鈴木六林男
雪の風瀬々になごんで雪夜かな/飛鳥田れい無公
雪の夜の毒薬買ひに行きしことも/竹下しづの女
雪の夜やうなづかしめて妻あはれむ/千代田葛彦
語り足らひしゆたかさ雪の夜をもどる/金尾梅の門
独り気づいて街の雪の夜つと曲る/飛鳥田れい無公
雪夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び/加藤秋邨
信州では雪が来たといふ静かに雪の夜を思ふかな/谷口喜作
絶望もたやすからねば雪の夜をかじかみながら石斧を研げり/生方たつゑ
