俳句例:101句目~
形代のわが名はげます太く書く/鈴木太郎
形代にわが名を書きて恐ろしき/前田普羅
形代のたもとひらひら母が来る/細田恵子
形代に暑さおくるゝ部屋のさま/高橋馬相
水とがる方へ形代ながれけり/金久美智子
形代に病める吾が名を真先に/山二茶壺子
形代にをんなの袂ありにけり/平井あい子
形代や水なめらかになめらかに/草間時彦
形代の白さ伏屋のものに似ず/相生垣瓜人
形代やたもとかはして浮き沈み/飯田蛇笏
形代やとつぎし者の名を加へ/本宮銑太郎
形代やひとりとなりし末子の名/橋本冬樹
形代のわが名一画さへ略さず/小野恵美子
形代に未婚のままのわが名かな/岩崎照子
形代や父に貰ひし名を書いて/数馬あさじ
形代や書く筈の名の一人欠け/行廣すみ女
泳ぐかなからくれなゐの形代と/夏石番矢
形代の白にひとしく波がしら/林田紀音夫
形代のおくれ先んず早瀬かな/高橋淡路女
流れゆく形代の名のをみなかな/中村三山
俳句例:121句目~
形代になでられてゐる子供かな/山西雅子
形代のわが名はとはに俯ける/中尾寿美子
紅紙のわが形代に息を吹く/長谷川かな女
身を出でし形代奔るおそろしき/川崎展宏
形代に数へて記す母の齢/阪田昭風「四温」
斎院のおんぞの汚染や形代草/長谷川かな女
此の世より流す形代混み合へり/榎田きよ子
母が書いて形代のわが名なりけり/鈴木栄子
がゞんぼを吹けば飛ぶなり形代も/岡本松浜
名を書いてわが形代となりにけり/大石悦子
あはれわが形代ながるつまづきつ/岸風三楼
形代の襟のあたりのかげりかな/深見けん二
形代の佳き御名に置くたなごころ/都筑智子
形代のうるみゆく名を読みゐたり/大石悦子
形代やわがいきかくるぬくきいき/阿片瓢郎
稚児の名書く産衣のやうな形代に/榊原惇子
形代に書く名の一人旅にあり/山野邊としを
納め形代重ね置かるはゆゆしかり/大石悦子
形代の名の仮名文字のいとけなき/松尾立石
雲は形代/翼よあれがバリの火だ/夏石番矢
俳句例:141句目~
身につけてゐたる木の葉が形代と/茨木和生
形代や異国の子等の名も書きぬ/藤本スエ子
形代の名を書けば妻となるかなし/山口青邨
形代に書きて佳き名と言はれけり/片山由美子
形代のかすかなる穢にこだはりぬ/能村登四郎
形代につゝがなき名をしるしけり/徳永山冬子
蓮田風起ちて形代流しかな/石田波郷「酒中花」
形代の袂かろきをよろこべり/向笠和子「存念」
形代に負はせし罪を思ひけり/仁尾正文「山泉」
形代に点字打たれてありにけり/奥坂まや「縄文」
形代の袂長きが哀しけれ/野見山ひふみ「野に遊ぶ」
形代に虱おぶせて流しけり/一茶/文化十三年丙子
形代に親のつけたる名をしるす/市村究一郎「かりん」
形代にさらばさらばをする子かな/一茶「文政八年句帖」