俳句例:101句目~
くしけづる人を巡れり冬の蝿/岡崎莉花女
手を合わすことも忘れて冬の蝿/東智恵子
すがりゐて草と枯れゆく冬の蠅/臼田亞浪
やはらかき日が天窓に冬の蝿/成智いづみ
羽根ほつれ歩いてゐるよ冬の蠅/松瀬青々
老い母の来てもたらせし冬の蠅/相馬遷子
ドラム罐にも冬の蠅居て飛べり/右城暮石
冬の蝿とまるよすがの蘭青し/大谷碧雲居
冬の蝿出て来て人にとまりけり/前田普羅
冬の蝿宙にとどまるとき見ゆる/上井正司
冬の蠅頭がだんだん澄んで来ぬ/高澤良一
冬の蝿日当る幹をよりどころ/外山智恵子
新聞をひらけば付くや冬の蝿/藤田あけ烏
冬の蝿真顔を見せて歩みけり/岩間おおみ
身じろがば命減るかも冬の蝿/堀之内和子
冬の蠅しづかなりわが膚を踏み/日野草城
冬の蠅とまるよすがの蘭青し/大谷碧雲居
冬の蠅どっちつかずの翔び方す/高澤良一
冬の蠅ほとけをさがす臥戸かな/飯田蛇笏
冬の蠅二つになりぬあたたかし/臼田亜浪
俳句例:121句目~
頓証此処に一椀を得て冬の蝿/磯貝碧蹄館
冬の蠅打つて少しく血を見たり/萩原麦草
飛びたがる誤植の一字冬の蝿/秋元不死男
冬の蠅病臥の夫になれなれし/石田あき子
生きてゐるものゝ姿や冬の蠅/大場白水郎
その翅では小さかろうが冬の蠅/高澤良一
冬の蝿やがてはとづる眼もて追ふ/西島麦南
冬の蝿うとまれつゝも打たれずに/奈良鹿郎
冬の蝿いきなり飛びて光りけり/深見けん二
冬の蝿牛にかなしきまつげあり/富澤赤黄男
日あたりていまいのち得し冬の蝿/豊島蕗水
マネキンのあくびに気づく冬の蝿/五島高資
めちゃくちゃな翅音愉しむ冬の蠅/高澤良一
富士見せてしめし障子や冬の蠅/大場白水郎
親しきはおほかた去りぬ冬の蝿/福井竹の秋
貌すこしうごかしてやみぬ冬の蠅/渡辺水巴
おしるこが出てとびまはる冬の蠅/京極杞陽
うとましや世にながらへて冬の蝿/正岡子規
歩くのみの冬蝿ナイフあれば舐め/西東三鬼
冬の蠅いきなり飛びて光りけり/深見けん二
俳句例:141句目~
冬蝿の住みゐる魔法のランプ買ふ/有馬朗人
冬の蠅病めばかろ~抱かれもし/鈴木真砂女
手かげんの打ちそこねたる冬の蝿/三浦俊子
受難図の血に来てとまる冬の蝿/冨田みのる
冬の蠅にはとこの木に花咲きぬ/岡本癖三酔
冬の蝿病めばかろ~抱かれもし/鈴木真砂女
冬の蝿玻璃戸のかげるまでのこと/高田秀子
油燻る木具小屋出でず冬の蠅/長谷川かな女
陽のあたるところを這ふて冬の蝿/秋畑/三枝
冬の蠅飛ぶと見つ時計鳴りにけり/大谷碧雲居
冬の蠅追へばものうく飛びにけり/高橋淡路女
壮年のあごのあたりに冬の蠅まつわり飛べりゆうべゆうやみ/沖ななも