俳句例:101句目~
淑気満つ吾の微笑のうすうすと/鈴木鷹夫
頭巾脱ぎその手を髪に微笑みぬ/吉屋信子
奥の間の微笑冬めくともしびに/黒田杏子
父としてまた伯父として花下微笑/森田峠
颱風のなかの部屋で妻に微笑す/浅原六朗
いくたびの微笑いくたび花の冷/黒田杏子
囀を舟に聞きゐる微笑かな/長谷川零餘子
先生のいつもの微笑若葉風/久保田万太郎
椎若葉湧くがごとくに微笑仏/上野さち子
大空は微笑みてあり草矢放つ/波多野爽波
微笑して拈華の餅を分け呉るる/佐々木六戈
雨水てふ佳き日ありけり母微笑/上野さち子
微笑童子現る睡蓮のひらくとき/文挟夫佐恵
微笑邪気なし綿絨毯の温きいろ/柴田白葉女
春の日のまぶしきことの微笑かな/京極杞陽
うたかたのみの虫凭れいて微笑/塩谷美津子
葉牡丹や忿怒も微笑もいのちの渦/伊藤仙女
薄氷のところどころの微笑かな/正木ゆう子
風の小雪ガラスの城に嬰の微笑/柴田白葉女
薔薇抱きて微笑パイヤールは五十/鈴木鷹夫
俳句例:121句目~
おもひわく微笑しづかに酷暑の辺/斎藤空華
その微笑紅にじませて三汀忌/長谷川かな女
血が伝えタムタンタムとわが微笑/阿部完市
われは微笑の水のひと粒ナイヤガラ/隈治人
冬日に微笑師弟切磋は会へば足る/香西照雄
遺影とは微笑むものか笹子鳴く/千代田葛彦
寒梅やひとの微笑のまぶしくて/中村菊一郎
黒南風やふいに駱駝の微笑せる/殿村莵絲子
桔梗に知るよしもなき微笑かな/長谷川かな女
古拙なる微笑メロンの一と匙を/長谷川かな女
春が行ってしまう微笑み置いたまゝ/内田南草
雪晴れのひたすらあふれたり微笑/富沢赤黄男
微笑弥勒に指が動きぬ汗噴きをり/加藤知世子
フリュート離し少年やわらかい微笑/江里昭彦
茂りに入りて微笑冷めたき白日傘/島村はじめ
ものの芽のほぐるるごとく微笑仏/平田すみ子
真白き百合拈華微笑に夫を醒ます/加藤知世子
微笑のように池を残してハイライズ/伊丹公子
硝子のなかの微笑あまたの都市夕景/伊丹公子
微笑をば立ちたる春が強ふるなり/相生垣瓜人
俳句例:141句目~
少女尼の微笑ダルシンのゆらめきほど/伊丹公子
微笑にも気配感じて青蜥蜴/橋本美代子「七星」
どこかに微笑をのこし春雪過ぎにけり/永田耕一郎
村人に微笑仏ありほととぎす/秋元不死男「甘露集」
貧乏桜よ疲れ果てまじ明るい時は微笑む時/橋本夢道
水母うく微笑はつかのまのもの/柚木紀子「麺麭の韻」
われ獄のとき千日千夜妻の微笑が来て曇らず/橋本夢道
微笑して死にたる君とききしときあはれ鋭き嫉妬がわきぬ/相良宏