俳句例:101句目~
町医者も患者も老いて花なづな/加藤沙知
山に雪けふ患者らにわれやさし/相馬遷子
焼藷やけふの終りの患者診て/下村ひろし
患者らの春日づたひは数珠のやう/斎藤玄
角力好き患者綿子にくるまれて/高澤良一
空港の黒旗に追われ患者ら発つ/藤後左右
葉鶏頭に妻と跼める患者あり/石田あき子
春愁や老医に患者なき日あり/五十嵐播水
患者らの血に太りたる春蚊打つ/三宅年子
草の実やわが誤診患者通りをり/川畑火川
死期近き患者もともに燕待つ/古賀まり子
風邪患者いたはり帰し掃納め/瀧澤伊代次
熱の子を負ひ来し祖母も風邪患者/渡会昌広
ストーブや患者につゞる非情の語/相馬遷子
まださめてをりし患者に除夜の鐘/神尾季羊
患者診るや外套敢へて脱がずして/相馬遷子
もてなさる西瓜患者と共に食べ/瀧澤伊代次
虹消えて医師と患者に戻りけり/阿部タミ子
患者等は椰子蟹売りをかこみゐて/高橋馬相
カーネーシヨン少年患者に若き母/村山古郷
俳句例:121句目~
立て込んで検尿/採血/咳/患者/高澤良一
ガーベラの萎れて患者自治会なり/石田波郷
秋の蚊をつれて患者の入り来たる/木内徴子
西日どき歯科の患者の列に入る/百合山羽公
予後くらき患者ばかりの秋暮るゝ/相馬遷子
天蚕いろカーテンに覚む患者なり/高澤良一
患者より医者いたはられ敬老日/築城百々平
患者群れ苑のクローヴア花咲けり/飯田蛇笏
永き日やみな憂ひもつ患者の目/古賀まり子
日記まづ患者のことを書きはじむ/中台泰史
春の夜のまなぶた閉じて患者たり/高澤良一
杣患者受診に郁子をさげて来し/夏秋仰星子
カーディガン青し看護婦と患者われ/黒崎治夫
患者診しあとの雑煮となりにけり/下村ひろし
昨日診し風邪患者なりチンドン屋/瀧澤伊代次
小鳥来るスプーンひとつの患者食/岩永トヨノ
疾く暮れよ雉子啼き患者逝きし日は/三嶋隆英
あたたかき夜を酔ひ戻る患者あり/古賀まり子
陽あまねし患者の蒔きし貝割菜/鍵和田ゆう子
脚気患者雨季のいくさを敢てゆく/長谷川素逝
俳句例:141句目~
被爆忌のけふも児下ろす患者来る/下村ひろし
寒夜診て来し患者はすでに寝ねたらむ/相馬遷子
ダリア頒けゆく歩を軽やかに女子患者/赤城さかえ
グロキシニヤけふより外科の患者とよ/久保田万太郎