○十年に関連した俳句の例をまとめました。
○十年を含む俳句例
凩や十年賣れぬ古佛/正岡子規
十年も言葉一つよ暮の秋/禅桃
今治水この十年の春嵐/坪内稔典
入植の苦節十年今年米/中村丈岳
十年の苦学を想ふ蛍哉/正岡子規
十年もゐる顔をして蟇/今瀬剛一
雷落ちて八十年を顧る/後藤夜半
梅を嗅ぐ十年たたば新世紀/原裕
丹羽信子九十年冬青空/黒田杏子
十年の病癒えけり更衣/正岡子規
弾痕も九十年や虫の声/坊城中子
十年の耳ご掻きけり冬籠/子規句集
霜少年七十年間我を見る/永田耕衣
十年は咋日のことよ初鴉/永井龍男
遺言を守る十年や蘭の花/前川素泉
ねじれ花五年十年十五年/田畑京子
ほとゝぎす山十年の運転手/森田峠
夏衣十年の蝨未だ死せず/正岡子規
獄生活十年銀河嫗かれたり/森聆子
濁り酒白し白陀師十年忌/大橋一青
俳句例:21句目~
水虫と交誼十年白露とよ/都筑智子
一日の如き十年蚯蚓鳴く/佐藤漾人
七十年一日沙羅の花一日/津田清子
春眠の覚めて十年失へり/桶谷信吾
下萌や崖下に住み小十年/伊庭心猿
十年の波爛万丈誓子の忌/塩川雄三
十年の狂態今に案山子哉/正岡子規
怠らず書いて十年日記果つ/三宅桂
五年物十年物や蘭の鉢/保田白帆子
九十年へて鍋山も青嶺かな/福田秩父
雁帰ることも十年の尋ね人/石塚友二
青春の十年の張り初浅間/松田ひろむ
十年を腰落ち着かず韮の花/村本畔秀
これからの五年十年薺粥/矢島三榮代
八十年一短夜のごときかな/村松紅花
鰯焼く苦節十年けぶらせて/高橋悦男
婚十年青山椒にむせびけり/井桁衣子
年迎ふ十年日記書き終へて/小森英一
春北風や十年ぶりの親子丼/長澤寛一
春鮒を頒ち貧交十年まり/能村登四郎
俳句例:41句目~
十年とんで母の人魂母疲れ/高柳重信
松手入香りひそめし十年秋/横光利一
菖蒲酒母胎を出でて七十年/鈴木鷹夫
冬の爪死んで十年教師過ぐ/宮坂静生
玉虫の来し十年の店閉ざす/小坂順子
蓼紅し十年がほどは疾迅裡/清水基吉
親疎十年交りたゆる葱の月/飯田蛇笏
豊旗雲頭上十年よりながし/阿部完市
みぞるるや十年矮鶏の番古り/石川桂郎
涼しさやことに八十年の松の声/千代尼
松に紅蔦はや十年の妻帯者/中村草田男
嫁の座もしかと十年大朝寝/服部壽賀子
桃の実や十年ぶりの絵筆もつ/西脇みん
桃咲く藁家から七十年夢の秋/橋本夢道
ためらはず十年日記求めけり/水原春郎
十年一睡別れに蓮の花を見る/田中英子
汗拭きて笑顔が全貌十年ぶり/倉橋羊村
とんぼゆらゆら十年十年東国/阿部完市
油虫しつかと打ちて婚十年/矢口由起枝
初鵙やめど十年のこころざし/景山而遊
俳句例:61句目~
夫婦して十年の紙魚晒しけり/小林康治
熱燗を十年ぶりの帰朝子と/鈴木洋々子
上州去る十年飼ひたる金魚提げ/上村占
十年を黙つてをりぬ露の玉/上野まさい
主人拙を守る十年つくね藷/芥川龍之介
九十年生きし春著の裾捌き/鈴木真砂女
九十年生きて骨片涼しき母/上野さち子
妻十年の秋風青き魚を焼く/山本つぼみ
生き下手の七十年も春の果/稲垣きくの
冬帽の十年にして猶屬吏なり/正岡子規
秋十年却って江戸を指す故郷/松尾芭蕉
勿体なや祖師は紙衣の九十年/大谷句佛
秋十年天女に遠く人の妻/鍵和田ゆう子
十年ののちのわが子と萱の丈/飯田龍太
十年のカルテの重み冬に入る/影島智子
十年の埃を吸ひし棕櫚を剥ぐ/須藤常央
十年の宿痾の癒えし冬至風呂/池田博子
秋雨や七十年の医を辞めて/五十嵐播水
十年の汗を道後の温泉に洗へ/正岡子規
肩こるをおぼえて十年冬支度/星野立子
俳句例:81句目~
戦後十年蜥蜴と灼くる一標識/宮坂静生
夫亡くて十年となりぬ落し文/小澤登代
吾につく十年患者老い涼しき/相馬遷子
語りつぐわれら十年一日の梅/古舘曹人
迷はずに十年日記求めけり/國重多恵子
孝子塚露けき十年経たりけり/久米正雄
戦後十年蜥蜴の影とわが影と/宮坂静生
故人にも十年のとし竹落葉/百合山羽公
十年の苦学毛の無き毛布かな/子規句集
小十年昔のことを秋立つ日/成瀬正とし
あぶらぎる肉へ塩ふり町医十年/真島筍雄
いわし雲十年一日とはいへど/上田五千石
嫁の十年喪服の双肩がさむし/山本つぼみ
さくらんぼ十年遅刻してきたと/櫂未知子
十年振りに履く登山靴巨塊めく/奈良文夫
だしざこに来し関心へ妻と十年/藤後左右
ちちははの七十年忌露の世に/深川正一郎
まばたきに十年を消し冬の鵙/堀井春一郎
もう十年程ご一緒にさくらの世/高澤良一
買ふ人のあるらしき十年日記/後藤比奈夫