俳句例:101句目~
おしろいの蕾はマッチつんつんつん/嶋田麻紀
無神の旅あかつき岬をマツチで燃し/金子兜太
マッチの火燃えて黄色やセルの胸/大峯あきら
マッチすれば森の揺るるよ青葉木菟/関森勝夫
おびたゞしきマッチの屑や破れ火鉢/寺田寅彦
かじかめる手にマツチすり渡しけり/星野立子
呵々と寒し君もマッチを持たざるか/林原耒井
ストーブのそばに小さきマッチかな/京極杞陽
掌にかこむ燐寸が濡れし著莪照らす/加藤楸邨
冬も終りの外套数珠とマッチが出て/伊丹三樹彦
つるやまでマッチもらひにしぐれかな/室生犀星
マッチ摺れば玻璃戸に燃えて雪の夜半/西山泊雲
マツチ擦れば発火すはるかな白鳥も/高野ムツオ
いっぽんの燐寸の燃やす火のいみじき/日野草城
マッチの頭薬火になる速さ見えて冬/田川飛旅子
バット吸ふ梅雨のマッチの暗く灯り/成瀬正とし
汗の服のポケツトにマッチこぼれいて/古沢太穂
なん本もマッチの棒を消し海風に話す/尾崎放哉
あたらしきマッチよくつく涼みかな/成瀬桜桃子
マツチすつた顔が寒い闇のそこに消えた/大橋裸木
俳句例:121句目~
マッチすれば風どこからやつくしんぼ/大谷碧雲居
劫初の火その子/孫のその裔の飛火ぞマッチ摺るに生れたる/高橋睦郎
意志表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ/岸上大作
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや/寺山修司