愁い/憂いに関連した俳句の例をまとめました。
愁い/憂いを含む俳句例
紙一反墨を一挺春愁ひ/伊藤敬子
愁ひ人頭をあげよ帰る雁/野村泊月
風音は深山の愁ひ浦島草/鈴木鷹夫
天井のやたらに高い春愁い/森須蘭
晩年の身につくうれひ帰り花/舟月
山手線半周分の春うれひ/大屋達治
夏萩や女人憂いの想い色/川端幸子
青麦に日日沈む地の憂ひ/飯田蛇笏
白梅に憂ひをわかつ起居かな/碧童
花氷立方体の愁いかな/伊阪交采子
春深し妻と愁ひを異にして/安住敦
洞なして骨透くうれひ亀凍つる/原裕
プーさんの瞳は釦はるうれひ/森谷彰
触れてみよ憂ひ薊に多かりき/河内静
散髪は幽かな愁い蝶のかげ/中島斌雄
龍胆は空の色より憂ひ濃き/青木重行
児をだいて日々のうれひに鰯雲/蛇笏
陽炎や千のうれひの千手仏/大塚邑紅
雑踏の中の孤独や春愁い/井上かつ枝
観音の一面ことに春愁ひ/片山由美子
俳句例:21句目~
人伝の噂なれども春愁ひ/深見けん二
哺乳類に分類されて春愁ひ/進藤一考
家具店に抽斗あまた春愁ひ/鷹羽狩行
身のうちの紅をもて春うれひ/岡本眸
春愁ひ抗癌剤を飲むことも/塩田峯子
遠花火ひとの愁ひをきき流す/白葉女
童女とて愁ひ顔よき濃山吹/倉橋羊村
雛にもつくづく髪のある憂ひ/岩田由美
海が見え詩を書く憂い夕立来る/穴井太
韓国の愁いの瀧というを見し/鳴戸奈菜
別れむと秋愁ひ視し顔と顔/柴田白葉女
春昼の鏡愁ひをうつさざる/柴田白葉女
春月に濡れて磔像愁ひ持つ/古賀まり子
開ききる孔雀の羽の春うれひ/土屋草子
枯れきれぬ柳の愁ひ近松忌/鈴木真砂女
牧水碑冬濤うれひひびくなり/石原舟月
愁ひ身にあれば紫雲英の野は白し/鷹女
牡丹剪る愁ひ心をのこしつつ/田中冬二
真昼間はうれひ隠しぬ草の花/高畠皓恵
君もまた長子の愁ひ蚯蚓鳴く/藤田湘子
俳句例:41句目~
人は憂ひを包むやうにも秋袷/細見綾子
さきたまや片葉の葦の春愁ひ/小川さく
桜ちる空碧ければうれひなし/岸風三楼
花のもつ愁ひを雨の深めをり/保坂伸秋
憶良らは名を残したり春愁ひ/行方克巳
指の骨鳴らせしあとの春愁ひ/西川五郎
白玉のうれひに食せば浅漬も/久米正雄
誰が付けし秋海棠といふ愁ひ/今泉貞鳳
腰かけてうつる鏡の春愁ひ/稲垣きくの
蕭牆のうれひにいだく竹奴かな/飯田蛇笏
冬枯やひとの愁いに手を藉せず/鈴木栄子
訪ふ家の扉の剥落も春うれひ/伊藤いと子
身ごもりしうれひの髪はほそく結ふ/篠原
身ごもりしうれひは唇をあをくせる/篠原
甘酒のかもす愁いや一人の夜/高橋たかえ
病み抜きて春愁いつか遠ざかる/高濱年尾
はじめより愁ひ顔なる傀儡かな/井沢正江
カシニヨールの女の愁ひ夏帽子/仙田洋子
人の世に灯のあることも春愁ひ/鷹羽狩行
雨に佇ち薔薇の愁ひを盗みをり/中村明子
俳句例:61句目~
人の世をはずれて紅葉憂いおり/原田孝子
いと小さき憂ひ春炉を去り難く/内藤吐天
明日崩る憂ひを秘めし白牡丹/中西ひさえ
避暑三日母に憂ひをのこし来し/野村久雄
人のせて舟ゆく春のうれひかな/奥坂まや
年惜しむ心うれひに変わりけり/高浜虚子
後れ毛の眉のうれひぬ流し雛/稲垣きくの
春うれひ骨の触れあふ舞踏かな/柿本多映
梅雨の傘同じうれひの人と知る/中村明子
飾りたる小町雛のうれひ眉/阿部みどり女
ドライフラワー春の愁いの化粧室/伊藤東明
腕組みを解かねばつづく春愁ひ/冨田みのる
夏山に母のうれひは断ちがたく/石橋辰之助
掌に漬菜愁いは言わぬ夏爐なり/石橋辰之助
星の出の星の顫えを憂いけり/大原テルカズ
巫女に見ゆ乙女のうれひ花うつぎ/亀井糸游
山茶花を離れぬ眼をばうれひけり/林原耒井
憂ひ顏してラマンチャの羽拔け鷄/福島壺春
絵ののみな憂ひ貌梅雨ふかむ/鍵和田ゆう子
日のある梅うれひの梅も雲一朶/篠田悌二郎
俳句例:81句目~
菫濃し地に親しめば地の憂ひ/鍵和田ゆう子
米磨げばうするるほどの春愁ひ/片山由美子
河豚選るや愁ひ嘆きは外のこと/鈴木真砂女
漂へる水母と憂ひ分かちあふ/鍵和田のり子
煮凝やわらつてすますうれひごと/森川暁水
母と離り住みて春著を着し愁ひ/文挟夫佐恵
鬱金桜日射せば憂ひ放つなり/鍵和田ゆう子
愁ひ頒つ寒の星より応へなし/阿部みどり女
帽脱るや憂ひ無きかに蝉山河/鍵和田ゆう子
無からんとす俚歌憂ひ聞く芭蕉村/内田百間
藻を刈るや沼の愁ひを拭はむと/成瀬桜桃子
冬ひと日うれひある身の花を提ぐ/飯田蛇笏
黒人白人瞳の憂ひ似て街落葉/鍵和田ゆう子
夜にかけて娼婦の一舟春愁ひ/阿部みどり女
葱むけば鳴きぬ背すぢに寄る愁ひ/石原八束
贋アカシアの愁いは端から微塵光/伊丹公子
愁いるると起りぬ野火より赤き馬に/細谷源二
きぬぎぬのうれひがほある雛かな/加藤三七子
はるうれひめがねのつるのおよそ百/高橋睦郎
ぽらろいどかめらで奪ふはるうれひ/櫂未知子