黙に関連した俳句の例をまとめました。
黙を含む俳句例
夕焼の黙人の黙山を崩し/直人
蝋質の光馬市に馬の黙/成田千空
兵馬俑六千の黙冷じや/三宅美樹
冬深む黙契のごと双拳/村越化石
横光忌黙契いよよ頑に/石田波郷
黙濤の一分長し蝉しぐれ/川村紫陽
黙深く戦の島の熱砂踏む/土田桃花
黙契の重みに菊に額づくのみ/林翔
黙の庭花柊は香をこぼし/中岡利子
しぐるゝや萩の囁鮒の黙/幸田露伴
黄葉を来て黙契の墓二つ/小澤克己
鰯雲比ぶなき墓石の緘黙/内藤吐天
樹々の黙光るまで佇つ初詣/知世子
幹黒く愛憐の黙冴ゆる村/成田千空
青柿の昃るは母の黙の刻/村沢夏風
後ろ手の麦踏の黙引返す/笠原古畦
青北風や土偶三千年の黙/矢野忠男
新涼や骨董市は黙ばかり/植木里水
霧の中相対ふ巌の黙深し/相馬遷子
美しき神の黙あり初神楽/伊藤敬子
俳句例:21句目~
黙黙と神仏多しむめの花/三橋敏雄
神杉の千年の黙冷まじや/森戸光子
病虚吼奥に黙いて獺祭忌/岸風三楼
簾編む音の中なり黙の中/綾部仁喜
杉の黙解かれ社の初太鼓/川本春美
焼芋屋通り授業の黙ゆるむ/樋笠文
栗むきて夫婦は黙の刻多し/冬一郎
遠雷や襖へだてし兄の黙/池田澄子
熱高き猟銃音ののちの黙/石川桂郎
黙然と朝市に座す飾売り/三浦敬太
いまはじまる春の黙劇朴の天/三谷昭
杉玉の黙に六甲おろしかな/赤尾恵以
森の黙に星座集いて敗戦忌/酒井弘司
法黙の賺したまへる冬の湖/岡井省二
浅蜊掻く男の黙に近寄れず/柴田雪路
涅槃像黙深くして灯に揺るる/磯直道
牡蛎割の黙牡蛎殻の山の黙/中澤高志
真直ぐに黙通しおり雪の杉/伊藤かず
石庭の黙のいよいよ遠添水/亀井糸游
緘黙児と対す風鈴これに応ふ/樋笠文
俳句例:41句目~
われになき石の黙欲る秋の風/上村占
罌粟ひらく少年の黙父の黙/川見至世
老夫妻黙の糸瓜に夕餉はや/松村蒼石
三黙の行了へ下山爽やかに/小林牧羊
大雪の黙を持ち込む終列車/橋本榮治
老夫婦の黙に沖さす遠ヨツト/桂信子
人の黙こはし岬の虎落笛/大木あまり
葡萄樹下少年と黙分ちあひ/橋本榮治
近づいて芦刈の黙貰ひけり/伊藤白潮
連なれる雪嶺の黙天を占む/山本歩禅
頭にあまる入学帽子黙送す/清水基吉
喪服脱ぐ妻とわが黙雪の暮/鈴木鷹夫
風花す牡蠣割の黙われの黙/川畑火川
黙然ト絲瓜ノサガル庭ノ秋/正岡子規
黙狂滄溟零の軍勢がのぼる/高原耕治
夏痩か否かと問へば維摩黙/正岡子規
巌の黙一つを見ても秋と思ふ/上村占
年守りて黙然とゐぬ榾盛ン/村上鬼城
春宵の黙に万金ありぬべし/内藤桂子
春陰の岬がほどく海の黙/河野多希女
俳句例:61句目~
春黙の麦の眼鏡の玻璃厚き/森川暁水
えぞにうや曇りを凌ぐ牛の黙/成田千空
牡丹焚き戻りは一人づつの黙/今瀬剛一
白菜の黙ひとつづつ括りゆく/西村梛子
色鳥の来て禅堂の黙ゆるむ/つじ加代子
真ッ白な蛍ぶくろも梅雨の黙/酒井龍也
ふたりゐてそれぞれの黙雪催/辻美奈子
黙契やてのひらに水あふれしむ/穴井太
むさし野に弦月淡く木木の黙/松井一郎
黙契の初雪と見て飛騨に住む/小鳥幸男
盗伐黙許よりの巡査や柿の秋/久米正雄
長き夜の妻との黙に馴れにけり/杉本寛
録音の黙鳥交るこゑが占む/中戸川朝人
今日の黙ほぐして鳥の帰る影/奥田莫愁
共に冬越す黙契の蜂も死す/殿村莵絲子
黙契の三弟子木の葉髪古りつ/清水基吉
唖蝉は神の与へし黙ならむ/熊崎かず子
黙契のごとし額に蜘蛛の糸/正木ゆう子
黙契といふ枷のあり返り花/片山由美子
声明の黙より春の蚊がひとつ/中岡毅雄
俳句例:81句目~
秋時雨またあきしぐれ山の黙/稲岡/長
木々の黙極まれば雪さらに雪/橋本榮治
緑さすや君と別るゝための黙/小林康治
海見ては麦踏の黙まぎらはす/平野伸子
山河の闇へ黙の解放踊り唄/加藤知世子
橙に黙約のごとき一葉かな/宇多喜代子
黙座すれば吾名を呼びぬ時鳥/正岡子規
黙念と氷りつきしや動かれず/佐野美智
奥まろむ雪緘黙の幹のかず/千代田葛彦
夏痩をしたかととへば維摩黙/正岡子規
黙然と火鉢の灰をならしけり/夏目漱石
神島を黙契の蟹はい出づる/宇多喜代子
水仙や縫ひゐし黙に声嗄れて/小堺まさみ
草取りの黙の世界でありにけり/小川笹舟
樹々も黙解かむと南風の爆心地/橋本榮治
蠅取機の捩子巻いてより妻の黙/石川桂郎
囚徒の列姿勢ばらばら黙寒し/加藤知世子
春炬燵口すべらせてよりの黙/八幡より子
怖ろしき冬木の黙や穴居あと/町田しげき
石筍の黙満つ闇のすさまじき/綱川矢須子