俳句例:101句目~
検見衆のまとめて置きし鞄かな/中原道夫
革くさき鞄いだきつ月を待つ/能村登四郎
子雀をいつくしむ鞄投げ出して/臼田亞浪
鞄提げて鶏頭燃ゆる戸に帰る/大場白水郎
短夜のアメリカヘ発つ鞄かな/大峯あきら
秋草の離室へ提げて医の鞄/長谷川かな女
鞄よりスカーフを出す梅の花/正木ゆう子
鞄より出してつくづく青き梅雨/田中裕明
勤の鞄しかと抱へてナイター観る/滝春一
ふらこゝの子の背の鞄はね上り/小畑一天
穂絮飛ぶや波郷忌の日も鞄さげ/皆川白陀
アカシアの木蔭にひらく鞄かな/野村泊月
空港で鞄にすわるチューリップ/田中裕明
棕櫚の花おもき鞄を持ち歩き/片山由美子
腋はさむ鞄ことりと末枯るる/能村登四郎
あけてみる鞄はくろい冬の海/津沢マサ子
西日を帰る鞄持つ方の腕伸びて/宮津昭彦
予備校のカバン重たき余花の駅/山田尚子
入学のカバン飾りて子の寝言/角下美智子
六月のカバンは口をあけたまま/坪内稔典
俳句例:121句目~
辞書入れて露の鞄といふべしや/田中裕明
日脚のぶゑにしにかたき鞄かな/田中裕明
別の目的で鞄の中のブラジャー/石田よし宏
鞄かかえなおし空地をゆくは父/五十嵐研三
鞄より水着出すとてすべて出す/山口波津女
脱穀はげし鞄を置いて近よれず/栗林一石路
パラソルのつきささりゐる鞄あり/京極杞陽
鞄より五ドル出て来し四月馬鹿/山田みづえ
郵便夫の鞄郵便溢れて五月雨の中来る/大橋裸木
何を持たせあげん日めくり鞄その他/岡本差知子
集金人が重たい鞄で草の香にむせんで来る/大橋裸木
鞄積み重ねて避暑の宿らしく/高浜虚子「虚子全集」