俳句例:101句目~
獄なれや掃きよせ拾ふ木の葉髪/秋元不死男
獄塀や秋天一指の手がかりなく/平井さち子
獄出でしや曇り日一点の冬日ほのか/古沢太穂
刳り舟も獄史も古りぬリラの冷え/文挾夫佐恵
冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯/秋元不死男
獄を出て冬薔薇に侍す地の明るさ/秋元不死男
獄しずか仁丹の赤き小粒に吹く秋風/橋本夢道
梅雨の獄の病監むかしながらの格子/森川暁水
泣いても獄房涙を嚥めばつめたきかな/橋本夢道
獄塀一重に芽草やねつとり鶏あゆむ/平井さち子
大戦起るこの日のために獄をたまわる/橋本夢道
獄は悲し想念の中に吾子いて走りまわる/橋本夢道
獄の君たちをわが獄として膝冷えくる/栗林一石路
九月四日わが裸のうらおもて獄吏のまえ/橋本夢道
宇宙は獄と囀るもメヴィウスで我を待つ/森山光章
雑煮食ふて獄は読むほか寝るほかなし/秋元不死男
位いても獄房、涙を嚥めばつめたきかな/橋本夢道
獄衣、手に脛に短かきゆえにあどけなや/橋本夢道
どすんと冬の日が暮れ一人の獄は一人なり/橋本夢道
われ獄のとき千日千夜妻の微笑が来て曇らず/橋本夢道
俳句例:121句目~
子供の如く眠るも獄、思い疲れて百にあまる/橋本夢道
獄房に独り居た時、本心のわが顔じつと見たいと思つた/橋本夢道