俳句例:101句目~
無用の書紙食ひあきて死ぬるらむ/高濱虚子
眩しみて生きる五月の紙とわれ/千代田葛彦
虚構をも喰ひものにする紙なりし/中原道夫
紙として二匹のゐるはかくかなし/山口誓子
秋あざみ振りむけば海きららなす/野澤節子
紙の怪きららこぼして逃ぐるなり/森川暁水
師の遺句にもつとも近き紙なりし/蓬田紀枝子
木乃伊の亜麻布紙の類がつかぬかと/高澤良一
紙ちよろ~歌に痩するか時に肥ゆか/角田竹冷
紙のあとひさしのひの字しの字かな/高濱虚子
紙を詠むこころ世過ぎの足しにせん/高澤良一
紙がゐて蔵書ますます増えにけり/山口波津女
きららよりはげしき舌のありにけり/櫂未知子
紙ならば棲みても見たき一書あり/能村登四郎
紙払ひ掛くる亡き師の「露」の軸/小原菁々子
住み古りて紙ころころと太りけり/頓所八重子
紙喰ひのカフカの夢と落ちゆけり/小檜山繁子
紙はをらず踊つて読ます字のくばり/廣江八重櫻
手にせるも置かれしも紙の書なりけり/尾崎迷堂
キラリと紙がにげたうれのこりの和本のなげき/吉岡禅寺洞
俳句例:121句目~
紙のあと深く残りて文字かくす南北朝期の乱れさながら/市野千鶴子