俳句例:101句目~
嬰児の赤き舌を見たれば直ぐ帰る/鈴木六林男
嬰児翅生みゆりかごの父を責める/林田紀音夫
蓼の紅火のつくごとく嬰児泣く/阿部みどり女
壊死の地表樹の手足萌え声の嬰児/八木三日女
蝌蚪が尾をふれあふ嬰児背にねむり/斉藤夏風
嬰児ぽっかり目覚め稲の香部屋に満つ/穴井太
梅雨さむく嬰児哭けるはいつしんに/岸風三楼
嬰児診るや昼寝起こされし口むすび/相馬遷子
野分に瞳あげそのまま嬰児睡り落つ/上野さち子
銭湯に嬰児を抱え俺の手がでかすぎる/橋本夢道
岩ぶよぶよ嬰児ぶよぶよ地球抱く/野ざらし延男
混み合う銭湯に嬰児と職工の俺は若い/橋本夢道
冷麦すゝるよ嬰児の日を経し子の蹠/磯貝碧蹄館
嬰児が来て家が湧きたつさくらんぼ/柴田白葉女
妻よ一職工も抱けば嬰児がやわらかい/橋本夢道
春は嬰児をみがきあげては抱き歩む/柴田白葉女
鐵臭いわが掌の嬰児かかる社会を知らず/橋本夢道
光のシャワーに包みきれない乳房と嬰児/池田実吉
銭湯で嬰児よまた資本主義社会に育ちゆけ/橋本夢道
友禅のをんなのごとき小袖着て嬰児は瓶の底にしづみぬ/木下利玄