俳句例:101句目~
日焼して癌になったと言いにくる/田沼文雄
わが胸に来しつばくろは癌の使者/中嶋秀子
制癌剤打たれをり雪の楡立てり/平井さち子
ものの芽や身近とはなる癌告知/ふけとしこ
雪冴えや癌ならざりし血が匂ふ/加藤知世子
青天の霹靂癌来て吾れを犯すかな/橋本夢道
おぼろ一夜一夜と癌の手術待つ/古賀まり子
炎熱や癌の吾を俯仰天地に妻祈る/橋本夢道
癌の年齢啼かず陥ち込む谿の小鳥/中川日出子
癌病むあなたよ涼しくしているかなあ/田中陽
担癌ねずみ剖き来し夫と涼む距離/平井さち子
癌がまた出て来たぞクリスマスイヴ/堀米秋良
白鷺のようなマラソン遠く癌すすむ/赤尾兜子
癌かも知れぬ夜のひまはり棒立ちに/菖蒲あや
癌の名薬ふるさとの藍汁をのむ神妙に/橋本夢道
癌の予後枇杷よ咲き栄えせぬ花よ、な/橋本夢道
吾が詩根癌めに食い荒らされて夏に入る/橋本夢道
貧乏癌よ「掠めること火の如く」死も涼し/橋本夢道
世界てふ完全體を侵しゆく癌細胞のひとつぞわれも/高橋睦郎