俳句例:101句目~
人の児を抱かされていて遠花火/田中實子
遠花火街を絵本にしてしまふ/水田むつみ
遠花火かろくなりゆくものばかり/小池文子
睡たくて五指のゆるみし遠花火/稲垣きくの
触れさうで触れぬ手の甲遠花火/中井由美子
泣いてゐるやうにも見えて遠花火/渡井一峰
肘張つて黄帷子縫ひ上ぐ遠花火/石田あき子
師の指してわれに賜りし遠花火/文挟夫佐恵
やゝありてぽんと鳴りけり遠花火/寺田寅彦
シャガールの青馬翔ける遠花火/文挟夫佐恵
不意に醒めかなしきまでの遠花火/中谷寛章
遠花火ふわりと世事を忘れけり/長田日佐枝
遠花火ひとりぼつちにあきるまで/片山芙美子
遠花火闇よりくらく貨車ねむる/鍵和田ゆう子
遠花火ひとりよがりの恋をして/黒河内多鶴子
酔ふこともひとりのわれに遠花火/磯貝牛歩庵
遠花火あがるどこか何かに応へゐて/細見綾子
海の上に指輪ほどなる遠花火/大橋桜坡子「竜の玉」
遠花火とりすがれるは冬布団/『定本石橋秀野句文集』