憎むに関連した俳句の例をまとめました。
憎むを含む俳句例
穀象の遅き逃足憎まれず/林直入
弟憎し蚕の社前過ぎて/塚本邦雄
葛水や王敦を憎む女あり/高井几董
蜂を飼ふ隣は蜂を憎む哉/正岡子規
背信の人を憎まず啄木忌/本島高弓
命かけて芋虫憎む女かな/高濱虚子
恋猫と語る女は憎むべし/西東三鬼
美少年ときには憎し夏燕/古寺初子
新鳩よ鷹気を出して憎まれる/一茶
朝顏や團十郎の名を憎む/正岡子規
再軍備憎し時劫の光は冬/石原八束
憎まれてながらふる人冬の蠅/其角
吾を塗る弟憎し歌かるた/会津八一
行く春や写楽を憎む芝居者/岡本綺堂
返り花恩赦の沙汰はひた憎め/有働亨
遣羽子や柳の糸の風を憎む/会津八一
汗し話す笑ひて憎し髭の口/桜井博道
兎狙ふ銃口憎むほど暗し/加藤知世子
奥様を連れたが憎し蝶憎し/筑紫磐井
甲羅へて只憎まるゝ油虫/百合山羽公
俳句例:21句目~
いさかひて夫の白靴まで憎し/堀恭子
からたちの花童どもよ憎め/喜谷六花
鰻の香ながす鰻松あな憎し/高澤良一
秋の蠅秋の蚊よりも猶憎し/正岡子規
甲斐駒の雲塊憎し五月晴/松本たかし
新鳩より鷹気を出して憎まれな/一茶
冬の鳥約たがへたる人憎し/高柳重信
片腕の牛飼い飛行船憎む/田中久美子
父の日の焼酎をのむ父憎し/柏木去孔
大旱や乾坤憎まれたる如し/野澤節子
さきんぜし人を憎むや菌狩/河東碧梧桐
憎まれて見にくき顏や相撲取/正岡子規
憎まれをあざ笑ひつつ竹煮草/石川好夫
落葉して町中に大樹憎まるゝ/西山泊雲
ファシズムを憎む落書露の壁/岩崎照子
人憎むかに薔薇は色深めたる/阪本謙二
夫の咳やまず薔薇喰ふ虫憎む/横山房子
恋文の余白をすべて憎むべし/大西泰世
憎むことにも疲れはて久女の忌/檜紀代
憎むことほとほと疲れ根深汁/木田千女
俳句例:41句目~
憎むことまた始まりぬ蝿生れ/山口青邨
憎む手の厚い男と鷺を見てた/星永文夫
持たぬ人の銭を憎むや年の暮/幸田露伴
春鴉昨日いとしみ今日憎む/鈴木真砂女
朧月あまりに淡く憎むなり/柴田白葉女
水仙花皿洗ふことひたと憎む/小池文子
老斑のごとくに憎む餅の黴/稲垣きくの
芭蕉植ゑてまづ憎む荻の二葉かな/芭蕉
風びゆうと蛇はおのれの青憎む/松本旭
麦を踏むけはしき眼何を憎む/加藤楸邨
麦踏の海向くときは姑憎む/田川飛旅子
妻の寝顔やゝ憎し稲妻遁走す/小林康治
手を切りていよいよ憎し鰒のつら/其角
ふと憎し秋の薔薇を穹へ投ぐ/谷中隆子
焼酎のたゞたゞ憎し父酔へば/菖蒲あや
紅涙と呼ばれて憎し鵙の贄/河野多希女
高茂り憎し埋るる素志もあり/香西照雄
月の出の寒林しづかなるが憎し/有働亨
尻向けて汽車を憎めり田草取/石塚友二
真葛野よ憎めば涙にごります/芹沢愛子
俳句例:61句目~
金買う湖水に友等の憎めぬ顔/福富健男
魁けて咲く花なれば風を憎め/島田青峰
寒鴉にもいぢめつ子憎まれ役/行方克己
幾人に憎まれて葛吹く吾か/園田夢蒼花
憎まねば怒りの消えず鶏頭花/村上沙央
憎まれて小金貸す身や朝寒み/会津八一
憎まれて疎まれて母昼寝せり/前山松花
憎まるゝ小僧は蜂にさゝれけり/正岡子規
憎まるゝ役をふられし小春かな/伊志井寛
恋猫の人語に似たるゆゑ憎む/金子伊昔紅
子烏のまだ憎めない貌なりし/米田久美子
冬沼へ声を立てざるいと憎し/八木三日女
人憎し秋思の胸に釘うちこむ/稲垣きくの
許すは易し憎むも寧し日記果つ/西村和子
相憎む農婦や野火が飛び立たむ/右城暮石
人憎し手袋を手に持つて打つ/潮原みつる
数珠玉の靭きを颱風後に憎む/佐野まもる
いるまんの訴人憎まむ心凍て/下村ひろし
いろいろに扇子弄れど言ひ憎し/日野草城
憎まれて坐すのみ夏の逝く瀬音/友岡子郷
俳句例:81句目~
憎まれてゐて秋鯖のうまきかな/細川加賀
注射針憎し温室花眼に沁みる/柴田白葉女
わが脱ぎし股引われに似て憎し/山本馬句
恋猫に憎まれながら路地抜ける/佐野美智
秋風や憎まれ咲ける蝿取草/長谷川零餘子
菜虫とるうしろ姿を憎まれて/松永涼暮草
タ立やいとしい時と憎い時/遊女-しづか
憎いあん畜生蜜垂れのあんず飴/大木孝子
火蛾憎し打つ手逃れしとち狂い/稲垣きくの
いも盗人二挺櫓なればひた憎め/佐野まもる
ばせを植ゑてまづ憎む荻の二葉哉/松尾芭蕉
稲妻して憎まれの相癒えきざす/加藤知世子
ゆく春や写楽を憎む芝居者/獨吟/岡本綺堂
百足虫憎し一家の長の吾を螫す/百合山羽公
蝿憎し打つ気になればよりつかず/正岡子規
どの鬼を憎むともなく豆打てり/殿村莵絲子
坊主憎ければオーデコロンもまた/櫂未知子
ひと憎むこころをつつむ黒マント/文挟夫佐恵
自分を憎むことを始めん初音より/田川飛旅子
マスクの白さ同僚とは相憎むもの/榎本冬一郎