憂さに関連した俳句の例をまとめました。
憂さを含む俳句例
箪笥憂し服に外套にわが歴史/林翔
夕顔の莟ばかりの昼は憂し/比奈夫
色の山や哀と憂さを弥時雨/翁言子
頭ある憂さにんげんに幽霊に/原徹
悴みて踏みて鶯張は憂し/亀井糸游
木蓮や母の声音の若さ憂し/草間時彦
七曜の雨なきは憂し七変化/西川良子
五月雨の憂さに鼓を焙りけり/谷活東
綾取りの戻り綾憂し春の雨/久米正雄
昼の虫債鬼白皙なれば憂し/小林康治
枯蔓に棲む日月や友も憂し/河原枇杷男
朝は憂し机上臘燭と柿一顆/水原秋櫻子
世の憂さのまとふ衣を更へにけり/風生
若からぬ歩に春光の銀座憂し/村上光子
二月尽母待つ家がときに憂し/鈴木栄子
五月憂し悲劇独白剣を手に/野見山朱鳥
影にさへつまづく齢二月憂し/那須乙郎
睡蓮の睡れる刻を醒めて憂し/吉本和子
病む子憂し尺蠖虫の行方憂し/石川桂郎
無患樹が結ぶ実鐘の音色憂し/石川桂郎
俳句例:21句目~
無事が憂し打水と月庭面押へ/香西照雄
動く手の限りなく憂し泥遊び/辻脇系一
食ふは憂し食はぬも腹の鰒汁/寺田寅彦
勤憂し幾度風邪をひきかへし/新井英子
歩かぬは流離より憂し業平忌/花田春兆
橋下まで麦の黄熟真昼憂し/佐野まもる
桜憂し怠けに怠け見に立てば/清水基吉
千羽憂し愛鳥の日の籠目鶏/百合山羽公
夾竹桃憂し広島に住むかぎり/内田柳影
起居憂し咲きただれたる八重桜/福田蓼汀
そら耳の憂さ白鳥を飼いならし/豊口陽子
税や憂し臘梅枝垂れ枝垂るゝに/千葉静代
もの憂さはよべの名残か酔芙蓉/片山暁子
憂さ捨てに来て拾ふなり桜貝/岡部六弥太
五月憂し子うさぎ抱きて旅せむか/所山花
有りし世の憂さをも語れ鉢叩き/井上井月
松毬を拾ひに立つも憂さのゆゑ/石塚友二
薪割って割って憂さ飛ぶしぐれ空/及川貞
身のなかに種ある憂さや鶏頭花/中村苑子
雪まつり雪への憂さを忘るゝも/浅利恵子
俳句例:41句目~
いのち憂し大紅葉の山据えて/藤井冨美子
きりぎりす愛憎二つながら憂し/川口重美
こでまりのはなに雨憂し傘雨の忌/安住敦
個室憂し火取虫さへ恋ほしきに/石川桂郎
吹けば憂し吹かねば淋し空っ風/定方英作
涼しげといはれ心外梅雨は憂し/星野立子
夜桜や声かけられてゐるは憂し/仙田洋子
大学を駆け抜けし翳五月憂し/鈴木六林男
女に家あり時に家憂し洗ひ髪/平井さち子
宿直憂し蚊帳の別れはいつのこと/森田峠
帰るべき家ありて憂し花あしび/児玉悦子
男女憂し我はりんごの木に宿る/西口昌伸
眼帯をかけてもの憂し春ごたつ/竹田小時
秋の夜の子が聞く受験講座憂し/相馬遷子
試験憂し枯木にさがりゐる縄も/沢木欣一
黒髪を持つ憂さ枇杷の熟るるころ/三木照恵
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき/桂信子
身の憂さやこま~しるす初日記/高橋淡路女
踊ならはで帰るや夫れも旅の憂さ/尾崎紅葉
化粧憂し春たけなはを面やせて/鷲谷七菜子
俳句例:61句目~
春の風邪休耕の憂さかさなりしや/大熊輝一
一行にはぐれしよりの花の憂し/田畑美穂女
囀りても囀りても憂し籠の鳥/阿部みどり女
われのみに肉添ふ梅雨の朝餉憂し/石川桂郎
羽抜鶏馳けだして憂さ晴しけり/鈴木真砂女
憂さみたすには鶏頭の炎え足らず/吉野義子
徐々に憂し夕日の牡丹恋に似て/殿村菟絲子
貝母憂し母は白寿を疾くに過ぎ/中田モト子
障子はりてものにもつかぬ心憂し/富田木歩
氷頭膾なかのはららご透くが憂し/村上しゆら
流灯のはやきは淋しおくるるは憂し/百瀬美津
羽抜鶏駈け出して憂さ晴らしけり/鈴木真砂女
生きの身の花の香にのみ鋭きは憂し/林原耒井
新蕎麦を嗅ぎてあと憂し猫の目は/殿村莵絲子
秋暑しまつ毛にひと日の憂さ止まる/谷口桂子
病む身にも雨憂し盆の終りけり/阿部みどり女
夜なべ憂し湿布が喉にかたき日は/鷲谷七菜子
生はもの憂し牛の尾に雪飛びつく/加倉井秋を
今日の憂さ蚊帳の外へと脱ぎにけり/吉屋信子
世の憂さや早稲つみ垂るる舟の垢/越中-呂風
俳句例:81句目~
訪ふも憂し訪はれて炭火継ぐばかり/石塚友二
新蕎麦を嗅ぎてもの憂し猫の目は/殿村莵絲子
明日は失ふ片乳房なりちちろ憂し/長谷川秋子
卯浪憂し明日のさきまでもう見ゆる/仙田洋子
あきなひ憂し日覆は頭すれすれに/ねじめ正也
風鈴のならねばさびしなれば憂し/赤星水竹居
かかづらふ憂さは憂さとし毛糸編む/前田野生子
生るるより透く憂さを負ひかたつむり/文挟夫佐恵
コンクリートにインク乾ける五月憂し/上野さち子
坂の上たそがれながき五月憂し/石田波郷「鶴の眼」
晩夏憂しシヤガールの絵の隅に鳥/望月百代「夏日」
蛇の来る鳰の浮巣ときけば憂し/高浜虚子「虚子全集」