閨に関連した俳句の例をまとめました。
閨を含む俳句例
十斗班女が閨の蚕かな/亀友
猫の恋やむとき閨の朧月/芭蕉
暁の囀閨に降る如く/杉原竹女
閨中を狼狽させて梅薫ず/齋藤玄
埋火や物書閨のほそこゝろ/星布
閨よりも厠明さや明易く/原石鼎
縄文の閨は干草匂ひけむ/原尚久
寒月のうつくしといふ閨の妻/青邨
欄間越し雛雪洞を閨明り/品川鈴子
手車の牡丹運ふや閨深う/尾崎紅葉
春闌けて蔓物多き姉の閨/攝津幸彦
蝶々の呼込れけり閨の昼/尾崎紅葉
閨鏡桃湯の肌を匂はせて/尾崎三翠
船頭の閨の裏白青かりし/鈴木太郎
晩婚の一茶の閨の嫁が君/角川春樹
初鏡閨累々と横たはり/波多野爽波
船歌や梦に聞つゝ閨の中/正岡子規
船歌や梦に聞けり閨の中/正岡子規
七夕や窓あをあをと閨厨/古舘曹人
陶枕の詞は孤閨歎きけり/由山滋子
俳句例:21句目~
紅閨に簪落ちたる夜半の春/泉鏡花
石叩死の緋縅を閨のうち/古舘曹人
閨を出でて限に春の星涼し/会津八一
油虫跋扈厨に隣る妻の閨/磯貝碧蹄館
閨の戸の細目にあきて朧月/尾崎紅葉
花桐や敷布くはへて閨の狆/飯田蛇笏
紅閨や秋海棠に灯のもるゝ/豌豆痩石
二日灸閨に西施の臂を噛む/尾崎紅葉
月落ちて雲の屏風を星の閨/正岡子規
夕霧の閨かもしらず貸小袖/松瀬青々
紅閨の足につめたき頭巾哉/高井几董
やねふきの落葉踏むなり閨の上/蕪村
仙顔や艶なる声の閨に呼ふ/尾崎紅葉
囀りの美しかりしこと閨に/矢島渚男
市中や閨の灯見えて焼残り/村上鬼城
灯の映る閨の小窓や梨の花/正岡子規
坂本は閨の雛をまつりをり/山本洋子
閨人の口潤ほすや桜餅/長谷川零餘子
秋ならぬ閨の団扇や君と我/高井几董
凩や船の灯までが閨に射す/小林康治
俳句例:41句目~
夕がほやあからさまなる閨むしろ/暁臺
夕暮や閨灯ともさぬ蚊の狂ひ/正岡子規
春の閨に散るや一九の膝栗毛/正岡子規
朝寒や掃くほどもなき閨の塵/西島麦南
屋根ふきの落葉を踏むや閨のうへ/蕪村
水鳥や夜は閨近く浮きつれて/野村泊月
海棠やともし火うつる閨の窓/正岡子規
病妻の閨に灯ともし暮るる秋/夏目漱石
白木蓮咲きしを閨のあかりとす/井上雪
白猫やとかげ喰ふてふ閨の秋/飯田蛇笏
粛として閨中の灯や花がるた/飯田蛇笏
蕭として閨中の灯や花かるた/飯田蛇笏
身にしむや亡き妻の櫛を閨に踏む/蕪村
閨の内手鍋の胼をかくしけり/尾崎紅葉
閨へ行くことわりを云う鏡餅/増山美島
閨を出し顔を合はして磯焚火/平畑静塔
うき人の閨に豆打つ二つかみ/尾崎紅葉
閨怨のまなじり幽し野火の月/飯田蛇笏
かりがねや閨の灯を消す静心/日野草城
ぬば玉の閨かいまみぬ嫁が君/芝不器男
俳句例:61句目~
飛騨空閨の千重しくしくに青山河/林桂
わが閨は刺ある如く蚤ひそむ/相生垣瓜人
まひるまは蛇の光りに母の閨/高野ムツオ
どこからか日のさす閨や嫁が君/村上鬼城
するすると紐伸びてくる月の閨/中村苑子
朝寒の日あたる閨を愧ぢにけり/西島麦南
蚊の迷ふらちなき閨の夜明かな/尾崎紅葉
蚊をやくや褒じが閨の私語/其角「虚栗」
蚯蚓鳴く蚯蚓にも閨ものがたり/辻田克巳
くちなしの花さき閨の月贏せぬ/飯田蛇笏
年の煤ふわふわと閨出でゆきぬ/石田勝彦
かまきりは班女が閨に上りけり/松瀬青々
嫁ヶ君閨のまばたき伝へけり/新谷ひろし
閨事に眼をつむりたる炬燵猫/瀧澤伊代次
埋火がほのとあり閨なまめきぬ/松瀬青々
孤島にて浪の呪ひの孤閨の公主/高柳重信
ほのゆるゝ閨のとばりは隙間風/杉田久女
仏間掃き閨を掃くなり竹の春/大峯あきら
黒牡丹もどきの閨とおもひけり/大木孝子
紅閨をさがしていたるひきがえる/鈴木鴻夫
俳句例:81句目~
ジヤスミンの一枝を持ちて閨に入る/持田子
閨に遠くつるしかへけり轡蟲/阿部みどり女
牛乳屋ちらと睹し秋暁の閨正し/中村草田男
おかがみの歪つやさしき閨のなか/櫂未知子
いなびかり終に子のなき閨照らす/山口誓子
あばらやの閨照さるゝ夜振かな/阿波野青畝
閨の灯の消ぬべき刻をいさかへり/板垣鋭太郎
祖母の閨から鬼百合が出て行けり/高野ムツオ
出穂の香のはげしく来るや閨の闇/波多野爽波
閨の蚊の初出の声を焼れけり/一茶/文政二年己卯