忘却に関連した俳句の例をまとめました。
忘却を含む俳句例
忘却の彼方に大樹蝉しぐれ/原裕
忘却も供養の一つ秋彼岸/森白象
忘却の断面ならし花菜畑/藤後左右
冬鴎忘却といふ語の親し/行方克巳
大枯木前後左右を忘却し/津田清子
忘却の中の一つの火の祭/高橋沐石
銀製の蝉を埋めて父とは忘却/林桂
夕浪は忘却のいろ雁渡る/柴田白葉女
忘却の霞立つなり知覧基地/徳留末雄
忘却の杏子咲くべし隋へ旅/和田悟朗
戦死戦災死者忘却や敗戦忌/橋本夢道
洞窟に湛へ忘却の水澄めり/西東三鬼
葱囲ふ忘却期間置くために/伊藤白潮
その羽子は忘却曲線描きけり/櫂未知子
冬のコーヒー一匙分の忘却や/寺山修司
冬の猟銃忘却かけし遠こだま/寺山修司
忘却の齢ぞ合歓の花昏れる/小松崎爽青
忘却に淵あり青条揚羽発つ/高野ムツオ
忘却のすでに光やつばくらめ/柚木紀子
忘却やうす雪しづむ水の中/豊長みのる
俳句例:21句目~
忘却や胡桃手荒く割ることも/内藤吐天
滝凍てて立つ一切を忘却し/橋本美代子
忘却の扉を開く銀の鍵つめたし/内藤吐天
河原撫子僧に忘却問はるるも/伊丹さち子
忘却の日々あるばかり苔の花/大塚千々二
すべて忘却石竹の白い花咲く/中塚一碧樓
落葉焚くや忘却といふ罪に生き/武田玄女
年暮るる忘却の石ひたに積み/稲垣きくの
忘却の冬凪身もだえ詑ぶ者無し/香西照雄
露の世の忘却といふ生きるすべ/川口咲子
青葉木菟忘却という卑怯者/一ノ瀬タカ子
忘却のかなたより来しかたつむり/田村恵子
木々に芽を吾に忘却を神は強ゆ/竹下しづの女
忘却とは長いながい焚火のけむり/長谷川秋子
凡て忘却春暁の火事目のあたり/阿部みどり女
空間は世界をつつむ忘却か一本の樹の彼方なる青/市原克敏
毛虫踏み忘却と書き消しては書く/黄川田美千穂/『貝むらさき』