俳句例:101句目～
炬燵塞ぐ八畳の居間真四角/栗橋敏子
世の中の炬燵の中という処/池田澄子
電気炬燵のみを点滅万年床/右城暮石
餅花の高々とある炬燵かな/高浜虚子
養老の炬燵を掘れる小書屋/遠藤梧逸
髪を結ふ手の隙明て炬燵かな/千代女
麓神遊びに来るか炬燵せり/村越化石
声を出すラジオの前の置炬燵/南村健治
夕幕の道のゆきつく炬燵かな/長谷川櫂
梅の宿炬燵ほこ～勿体なし/鈴鹿野風呂
大空の風きゝすます火燵かな/渡辺水巴
つくづくと出雲訛の炬燵の子/京極杞陽
炬燵して躓くものの多かりし/鈴木南子
炬燵出て歩いてゆけば嵐山/波多野爽波
置炬燵四人の客にわがあふれ/石川桂郎
旅籠屋の客のおどりや置火燵/水田正秀
炬燵して菓子の名平家物語/赤松ケイ子
婢が走り怒濤まぢかに置炬燵/古舘曹人
炬燵出て尼が燈をやる女人堂/古舘曹人
かゝりゐる大堰の舟の置火燵/皿井旭川
俳句例:121句目～
きさらぎや火燵のふちを枕本/服部嵐雪
灯りて何か忘れし火燵かな/金尾梅の門
炬燵出て医師心となつてゐし/矢倉矢行
火燵してアルバムを見る女哉/寺田寅彦
守りゐる火燵を菴の本尊かな/内藤丈草
客設けしたる炬燵やゑびす講/遠藤正年
ぐい呑に炬燵酒声なせりけり/石川桂郎
こちを見る床の達磨や盈炬燵/会津八一
宿炬燵山の夜長を如何にせん/高澤良一
籠りゐて一つの炬燵生簀めく/横山万兆
秘めごとの仄かに炬燵塞ぎけり/牧月耕
母なき子の父に親しむ炬燵哉/寺田寅彦
ちゑの輪は大人の遊び置炬燵/一丸成美
寺茶屋の床几炬燵に片手入れ/西本一都
神棚の燈のふもとなる炬燵かな/原石鼎
祝ごとの山の炬燵のただ熱し/木村蕪城
明日帰る人と親しき炬燵かな/高木晴子
小説の中の火燵に虚子と子規/高澤良一
小買物火燵の上に並べけり/大橋櫻坡子
祇王寺の仏間の次の火燵かな/上野青逸
俳句例:141句目～
居あまりて火燵や棚へとし忘/水田正秀
山やおもふ紙帳の中の置火燵/内藤丈草
ねころんで新聞を見る炬燵哉/寺田寅彦
盃に怒濤のひびく炬燵かな/佐藤南山寺
玉子酒僧の炬燵の派手布団/五十嵐播水
片附いてゐるは朝の間置炬燵/稲畑汀子
炬燵より出し足首を掴まるる/寺井谷子
年取が済みて炬燵に炉に集ひ/高野素十
店先より炬燵が見えて親しめり/杉本寛
炬燵酒酌みて寡黙に変らざる/松尾緑富
炬燵よりつき返されし紙風船/小原啄葉
庭焚火炬燵をぬけてまた一人/吉屋信子
庭石の苔を見に出る炬燵かな/室生犀星
ほこほこと菊の宴の炬燵の火/木村蕪城
炬燵熱くて出郷を懐しむか/中戸川朝人
待恋の夢に逢うたる炬燵かな/尾崎紅葉
徒らに炬燵熱うす独居かな/高橋淡路女
心労の膝さし入るる炬燵かな/服部京女
忌の炬燵ことば選びつ読笑す/北野民夫
忠も義もとどのつまりは掘炬燵/仁平勝
俳句例:161句目～
炬燵居の一睡に湖暮れてゐし/佐野美智
炬燵居のふた草あらぬ七日粥/巌谷小波
炬燵寝や口中入歯ばかりなり/北野民夫
炬燵寝やあまり幼き妻の夢/石島雉子郎
炬燵今日なき珈琲の熱さかな/久米正雄
火燵から見ゆるや橋の人通り/正岡子規
炬燵寝も酔のあげくや川音す/皆川白陀
炬燵寝の若者起きて餅を搗く/木村蕪城
万両の雨見る熱き炬燵あり/大峯あきら
折鶴をやがて千折る炬燵かな/野村喜舟
時計修理すや雪光のこの炬燵/羽部洞然
下かけもいうぜんならし置炬燵/泉鏡花
下京をめぐりて火燵行脚かな/内藤丈草
炬燵嫌ひながら夫倚る時は倚る/及川貞
京大の起ても寐ても火燵かな/杉山一転
掻きたてる炬燵の火の香顔をうつ/篠原
水車小屋覗けば留守の置炬燵/渡辺一魯
人目なき宿は炬燵に子日かな/五車反古
老優の出を待つ楽屋置炬燵/武原はん女
今そこに居たかと思ふ火燵哉/寺田寅彦
俳句例:181句目～
耻かしやあたりゆがめし置火燵/炭太祇
腰かけて物思ひ居る炬燵かな/尾崎紅葉
沼の風障子にあたる炬燵かな/橋本鶏二
膝入れて炬燵布団の紅うごく/京極杞陽
膳棚へ手をのばしたる火燵かな/温/故
舟宿の炬燵こそ大今日の句座/栗生純夫
侘しさは夜著をかけたる火燵かな/桃先
菊の宿夜は炬燵のあたたかく/木村蕪城
華やかに炬燵布団の歌ぢらし/福田蓼汀
葛城の神に仕へて火燵かな/大橋櫻坡子
薄目あけ人嫌ひなり炬燵猫/松本たかし
薄目して猫のすりよる置炬燵/井口朝子
内海の日和炬燵へかよふかな/増田龍雨
冬の蠅炬燵の膳をなみすかな/野村喜舟
戦時回想炬燵に深く足を垂れ/馬場駿吉
切炬燵波郷いよいよ酒の神/殿村菟絲子
観音を拝みて炬燵ふるまはる/三嶋隆英
訥々と婚後をさとす夜の炬燵/大熊輝一
話頭又た亡師に及び火燵冷ゆ/佐藤紅緑
誤ちもなかりし火燵塞ぎけり/小澤碧童
