季語/香水(こうすい)を使った俳句

俳句例:101句目~

香水の香を焼跡にのこしけり/石田波郷

香水は沁まざりき天が岩重畳/栗生純夫

香水やかの名刀のここにあり/岸本尚毅

香水やすさまじき汽車風の中/石田波郷

香水やその人既に亡しと聞く/高濱年尾

香水や人怖ぢ癖を追ひはらふ/仙田洋子

香水や女曼陀羅るゐるゐと/河野多希女

香水や弥撒へ子を抱く異邦人/新井英子

香水や昨日今日より狂気なり/平畑静塔

香水や海外みやげの日本製/長崎小夜子

香水や着飾ることも気養生/三田きえ子

香水や胸中読まれてはならず/高野彩里

香水や腋も隠さぬをんなの世/石川桂郎

香水を借りもし旅の親しさに/稲畑汀子

香水の素肌さびしきひと日かな/伊藤京子

香水をつけぬ誰にも逢はぬ日も/稲畑汀子

おみくじを受けて香水匂はせて/吉屋信子

香水のなかなか減らぬ月日かな/岩田由美

新牛蒡その香水仕の五指にしみ/山川美翠

香水の小店原宿シャンゼリゼ/石川星水女

俳句例:121句目~

香水の好み変りてあやしまれ/榊原/弘子

巴里の香水箪笥に仕舞ふ薄暑かな/及川貞

香水を買ふ客の恋知りてをり/八牧美喜子

香水のにほふつめたき人の顔/柴田白葉女

香水やこの人に又逢ふまじく/深川正一郎

香水やすぐ人の秘に触れたがり/中尾杏子

医師去りて香水一滴ねだりけり/影島智子

香水の四五人の私語恐るべし/黒崎かずこ

香水やそれとなくきく子の外出/岡田和子

もの言はず香水売子手を棚に/池内友次郎

香水やをりをりひびく仏蘭西語/清崎敏郎

香水を買ひしその時気前よく/田畑美穂女

香水の封切りてやや子離れす/佐久間尚子

香水のとかくのうはさ撒きにけり/高橋潤

香水のその人なればふさはしく/高浜年尾

香水を贈るを秘めてをりし日々/山田弘子

香水の香の自分より前に出る/木村淳一郎

香水の毒にあたりし水を飲む/小島千架子

香水や妊むを怖れ死を怖れず/八木三日女

香水のうしろにあるを感じをり/岸風三楼

俳句例:141句目~

香水の一滴づつにかくも減る/山口波津女

香水や愛されてゐてつまらなく/上村勝一

香水買ふ眉ひそませて美しく/成瀬正とし

香水や日の照りまさる身の廻り/増田龍雨

香水の身にて虫音のなかに佇つ/吉野義子

香水にその人柄をしのびつゝ/戸田河畔子

香水の瓶のなで肩四十路来る/鳥居美智子

香水のひとりのひとに濃く匂ふ/谷口桂子

遺されし香水の濃き琥珀いろ/山本智恵子

髪切つて香水の封切りにけり/福永みち子

追ひかけて来て香水を匂はする/黛まどか

香水の香ぞ鉄壁をなせりける/中村草田男

香水をいくたびかふり棺を閉づ/栗生純夫

香水の瓶と聖書の置かれをり/高橋しのぶ

香水や静に居りて目立ちをり/木内悠起子

香水をしたたか辞職の女子社員/北野民夫

香水を夫に一と吹き吾に二た吹き/大内迪子

死てふ語と香水の香の行きずりに/大野林火

ほのかなる香水をたてわがむすめ/山口青邨

香水もネクタイも荷を重くせず/稲垣きくの

俳句例:161句目~

彼とあう日まで香水つけっぱなし/鎌倉佐弓

みつむりのしびるるばかり香水す/栗生純夫

香水やまぬがれがたく老けたまひ/後藤夜半

香水の名を聞かれしは今日二度目/宮本幸子

その恋を葬るためのオーデコロン/松本恭子

香水のきつく捨て身になれずをり/谷口桂子

香水のかたちなしくる思ひかな/猪俣千代子

香水のいまも背高き叔母に会ふ/文挟夫佐恵

雨やどりして香水をうとまるる/片山由美子

香水や病むと聞きしもはれやかに/高濱年尾

香水の香のいきいきとふとさびし/藤木清子

小さき重さの巴里の香水うけにけり/及川貞

香水よしづかに生くるほかなきか/藤木清子

坊主憎ければオーデコロンもまた/櫂未知子

香水や私の趣味はおしやれだけ/成瀬正とし

妻と同じ香水なれば善人に見ゆ/近藤馬込子

香水を知つてをるなり去りにけり/石原八束

香水を秘むるバッグに草かげろふ/野澤節子

香水をつけたる悔のありにけり/阿由葉正代

香水ののこり香ほのと袖だたみ/高林三代女

俳句例:181句目~

香水を噴けばこの身の羽化するよ/三好潤子

栗咲く香水路いづこも水満ちて/落合伊津夫

母の香水捨てて噎せるや竹落葉/鳥居美智子

死に神を負ひ香水の香をまとひ/櫛原希伊子

しかすがに香水の香のありやなし/米田双葉子

香水の緋とおぼしきが駆け抜けし/鳥居おさむ

香水の香のそこはかとなき嘆き/久保田万太郎

香水の香のわきあがりイルカシヨー/大石雄鬼

いきなり寂しくって香水噴きつける/松本恭子

香水やお臍かあゆき天女カブサラ/長谷川かな女

「タブー」といふ香水ふり出づ晴れすぎる/平井さち子