「茸」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「茸」について
【表記】茸
【読み方】きのこ
【ローマ字読み】kinoko
子季語・関連季語・傍題・類語など
・くさびら(くさびら:kusabira)
・茸山(たけやま:takeyama)
・茸番(きのこばん:kinokoban)
・茸売(きのこうり:kinokori)
–
季節による分類
・「き」で始まる秋の季語
・「秋の植物」を表す季語
・「晩秋」に分類される季語
月ごとの分類
茸を含む俳句例
死の家の菌青々寒月下/三谷昭
菌汁大きな菌浮きにけり/鬼城
茸山の仕事納の一焚火/杉艸子
少年の尿がとんで茸山/福島勲
茸山や殻鉄砲の一けぶり/召波
後れ馳に提げ行かむ菌山/暁台
茸の跡朽葉静に沈みけり/躑躅
茸山の茸の孤独に囲まるる/昭
妻の座は臀の座なり茸山/静塔
なつかしや楓苗吹く菌山/白雄
山鳥の脂浮くなり茸汁/高澤良一
杣の子の侮り覗く茸籠/有本銘仙
栗籠のけふ茸籠どの山に/上村占
茸山の白犬下り来るに逢ふ/誓子
岩茸や北を抉られ武甲山/下田稔
山笑ふ神の茸ぞ命継げ/巌谷小波
案内の宿に長居や菌狩/高浜虚子
空に声放ち人呼ぶ菌狩/茨木和生
頂に出て茸空し昼の月/野村泊月
狼のおくる山路や月夜茸/中勘助
俳句例:21句目~
拾得の装いで来て菌狩/高澤良一
人のこゑ雲と下りくる菌山/舟月
蹲り菌の山を分ち合ひ/新島艶女
今しがた聞きし茸の名は忘れ/占
赤埴に茸山の径十文字/前田普羅
瓦茸新茶の筒と枕べに/石川桂郎
貯へし茸を汁に義仲忌/豊原月右
落栗に思ひがけなき菌かな/桃隣
菌狩喇叭提げたる男哉/寺田寅彦
君見よや拾遺の茸の露五本/蕪村
竿秤腰に山主茸案内/前田まさを
茸山とは毒茸あるところ/小島健
涙より早く走れよ笑茸/岸本マチ子
茸山観月の山その上に/百合山羽公
しめりある茸山の風土も亦/上村占
せゝらぎに耳順ひぬ菌山/野村泊月
茸山の道なき道のかぎりなし/篠原
煙茸機嫌の煙あげにけり/斎藤道子
爛々と昼の星見え菌生え/高濱虚子
茸山に遊びて京の旅終る/高濱年尾
俳句例:41句目~
茸山に対し一色城址かな/京極杞陽
童べにて妖しき相や菌狩/秋山卓三
爛々と昼の星見え菌生え/高浜虚子
平茸を栗茸を指す箸の先/高澤良一
ゆるみなき茸縄つづく札所径/原裕
庄吉の小屋の前なる茸筵/野村泊月
月の山きのこ出るとて縄囲/上村占
山中に菌からびぬ冬日輪/野沢節子
鼠茸女のこえのあとの鶸/和知喜八
客来ればすぐ裏山へ菌狩/斎藤句城
あとがけの痛き女や菌狩/日野草城
菌山招待状をふところに/田中裕明
雲濡れの籠負ひ直す菌狩/渡邉英子
菌山天の直下に飯を食ふ/山口誓子
三度行き三度迷ひし茸山/吉田健一
雲の中赤岳崩ゆる菌狩/相生垣瓜人
手伝ひの赤万女将茸莚/五十嵐播水
天界の父母に火宅の茸飯/立川華子
中入に見まふ和尚や茸がり/炭太祇
雑茸に箸をもつぱら薬喰/中村将晴
俳句例:61句目~
逢曳や古杭の頭に菌の耳/香西照雄
菌山に風たつ道の栞かな/飯田蛇笏
人の言針のごとくに菌山/田中裕明
婆が負ふ袋の中の菌かな/野村泊月
人声の今とだえたる菌山/野村泊月
茸籠に林中の気移りゐし/河野南畦
目の下に竹田村あり菌狩/高浜虚子
足萎に山音ばかり菌生え/萩原麦草
茸汁替ふ蜂の子は蓋伏せて/及川貞
体操の時間切りかへ菌狩/山中弘通
肉親や雑茸汁の湯気の中/細見綾子
安南の碗のゆがみも茸飯/如月真菜
欄干に紅茸生ふや古御殿/寺田寅彦
茸山と寂光院の径と岐れ/岸風三楼
切株や雪解けしたる猿茸/飯田蛇笏
茸汁や子を楽みの僧夫妻/河野静雲
菌生ゆ雨に渓川鳴るなべに/稲岡長
茸山きのふの人の声のこる/飴山實
生國の昼へ蹴り出す煙茸/柿本多映
屯して烟上げゝり菌山/河東碧梧桐
俳句例:81句目~
月山の茸づくしの三の膳/黒田杏子
朝市の足下目遣れば箒茸/高澤良一
法螺話いつまで続く茸汁/村田軍司
茸採り再び杉の幹に消ゆ/鈴木荒圃
結界の紅茸どもへ鐘一打/藤田湘子
縄張りのなかの飲食きのこ山/桂信子
愛咬のまま陸前の月夜茸/高野ムツオ
日は山をはなれて遊ぶ猿茸/古館曹人
月の出て浮き足立ちし茸かな/岸田稚
かへり見て母の達者や茸山/皆吉爽雨
きのこ飯家兄の獲たる鹿茸を/瀧春一
月夜茸今宵はねむる瀞の雨/堀口星眠
月夜茸山の寝息の思はるる/飯田龍太
月山の胎内に入る茸採り/伊藤伊那男
朽木に高く赤き菌の輝けり/原子公平
杉落葉嵩むがまゝの春茸榾/江口竹亭
泊雲忌過ぎし丹波の茸山に/高濱年尾
深山この夢のいづこも紅茸/齋藤愼爾
火の山や毒をあらわに毒菌/中島斌雄
物枯れて最後に笑うや大茸/安井浩司