俳句例:201句目~
十指で編む毛糸童話を聞かせ居て/伊藤敬子
人を待つこと不得意よ毛糸編む/嶋田摩耶子
亡夫のもの解かれて毛糸玉となる/笠間照子
一すぢの毛糸編む喪にこもりゐて/津田清子
毛糸編むひとりに重き夜のとばり/浅野総子
ウイスキーボンボン含み毛糸編む/行方克巳
アラスカの上空白き毛糸編む/小松原みや子
母の辺に日暮れてゐたり毛糸玉/猪俣千代子
まだ誰のものとも見えぬ毛糸編む/奈良文夫
たそがるゝ戸口に立ちて毛糸編む/鈴木花蓑
毛糸玉を拾つて欲しいとは頼まぬ/櫂未知子
毛糸編むにつられ一眼読み更くも/村越化石
毛糸編む何になるともまだ決めず/嶋田/淑子
毛糸編みながらに口説かれて居る女/佐藤紅緑
毛糸孜々と編めば詩もまた生るとよ/村越化石
母の死後毛糸ばかりを編める子よ/石井とし夫
母の五指もの言ふごとく毛糸編む/今井美枝子
死ぬまでの暇つぶしとて毛糸編む/広瀬恵美子
毛糸編む編めば夢魔来てすわりをり/仙田洋子
機上にてこゝろに毛糸編みつゝあリ/横山白虹
俳句例:221句目~
虎落笛毛糸編む妻いも寝ずに/五十崎古郷句集
寄せ集めだんだら縞の毛糸編む/野見山ひふみ
久方の空いろの毛糸編んでをり/久保田万太郎
こころ吾とあらず毛糸の編目を読む/山口誓子
うなづくや毛糸編む手のたゆみなく/林原耒井
みどりごに毛糸編む幸もらひけり/平野/伸子
毛糸編むほか何たのむものなからむ/右城暮石
なか~に毛糸編む手をおきもせず/鈴木喜久子
つまらなくなり毛糸編むこともやめ/菖蒲あや
いもうとを子とし毛糸を編みにけり/森川暁水
佳き日か車中靴に毛糸玉ころげ来て/川口重美
毛糸編むとふ優しきことを忘れゐし/鈴木栄子
気兼ねなきことが取り柄の毛糸編み/高澤良一
毛糸編み居てその胸が灯を点す/竹下しづの女
編みかけの毛糸見せられ親しさ増す/山口波津女
毛糸編むはしづけさに似て非なりけり/栗生純夫
ハイフェッツ聴きつつ毛糸は胡蝶編/加藤知世子
毛糸編む妻のかなしみ知れど触れず/成瀬櫻桃子
それぞれの過去待つ毛糸編みなほし/秋月すが子
毛糸編むたえてたのしさもなかりけむ/加藤楸邨
俳句例:241句目~
毛糸編む気力なし「原爆展見た」とのみ/中村草田男