「蚊遣火」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蚊遣火」について
【表記】蚊遣火
【読み方】かやりび
【ローマ字読み】kayaribi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・蚊遣(かやり:kayari)
・蚊いぶし(かいぶし:kaibushi)
・蚊遣草(かやりぐさ:kayarigusa)
・蚊遣粉(かやりこ:kayariko)
・蚊取線香(かとりせんこう:katorisenko)
・蚊取香水(かとりこうすい:katorikosui)
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季節による分類
・「か」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
蚊遣火を含む俳句例
草枕蚊遣火焚て寝入りけり/文皮
蚊遣火や勤はじまる国分寺/五晴
蚊遣火の柴の戸口や棘の花/正己
夜通しに壁塗あげる蚊遣哉/几董
物問へば出て答ふる蚊遣哉/如瑟
初蚊遣けふ箸初の浩宮/石田あき子
鐘撞堂片隅に焚く蚊遣香/茂里正治
物置より出て呆然と蚊遣豚/有働亨
蚊遣火の蚊につれ出る主人哉/管鳥
夕弥撒へ畑より移す蚊遣香/築城京
草市や蚊遣鉢など丸八に/野村喜舟
大方は庭へ流るゝ蚊火煙/松谷麓鶯
薬種屋に好き匂ひする蚊遣哉/長秋
宿かさぬ主人つれなき蚊遣哉/湖陸
栴檀は佛師か宿の蚊遣かな/森鴎外
焚き口に蚊取線香登り窯/川崎慶子
寺にある幻燈会や夕蚊遣/吉田冬葉
水巴忌の蓬が混る蚊遣草/萩原麦草
沓作り藁うつ宵の蚊遣りかな/其角
蚊遣火や飯にさしあふ西の岡/乙州
俳句例:21句目~
韓信の漂母と語る蚊遣哉/寺田寅彦
山国の闇を濃くして草蚊遣/長田等
愛憎の誰彼とほし初蚊遣/伊藤孝一
仲悪しき隣の蚊遣こちに来る/春石
蚊遣香効を奏しぬ六畳間/高澤良一
蚊遣火やよき宿を取後れたり/路曳
方丈を蚊遣の烟這ひめぐる/正岡子規
あとしざる蚊一匹や蚊遣香/河野静雲
暗りへうかと這入れば蚊遣かな/普立
蚊遣火の不粋の渦や坊泊/曽根原幾子
鋸屑は移徒の夜の蚊遣かな/水田正秀
金屋の親爺かたへに蚊遣香/高澤良一
木曽人や蚊遣を腰の畑仕事/大野林火
蚊遣火や諸膸抱いて小百姓/西山泊雲
梵妻の僧にもたらす蚊遣香/小林正夫
母病んで朝の日あたる蚊遣香/桂信子
運慶が鬼の皮たく蚊遣かな/藤野古白
泊船の燈に似て闇の蚊遣香/宮武寒々
負け癖の生涯なりき蚊遣香/小林康治
海見えて音なし昼の蚊遣香/目黒十一
俳句例:41句目~
涼しさや母の足もむ置蚊遣/富田木歩
西晴れて月さす水や蚊遣香/飯田蛇笏
行水の下焚き立つる蚊遣りかな/野明
蚊遣香背中の方が手薄なり/高澤良一
蚊遣の火縄文の闇育てをり/丸山嵐人
男盛り過ぎて蚊遣の渦の外/近藤一鴻
蚊遣香己の時間始まりぬ/藤井寿江子
一つ家の庇にあまる蚊遣哉/向井大放
蚊遣り火や麦粉にむせる咳の音/許六
交番の仮眠けふより蚊遣香/田崎令人
石手寺の足形護符や蚊遣香/國島十雨
人気なき湯宿の蚊遣灰白し/高澤良一
蚊遣火の灰渦なせる遊山かな/辻桃子
夏蟲や蚊遣粉にする人形屑/富田木歩
分宿の荷物落ち着く蚊遣香/関根章子
兄妹に蚊遣は一夜渦巻けり/石田波郷
部屋毎にある蛇皮線や蚊火の宿/篠原
蚊遣時浅沼に鳴くのあり/中塚一碧樓
蚊火足して若人ばかり泊り客/及川貞
初蚊遣香や変らず青き渦/百合山羽公
俳句例:61句目~
蚊遣して汀に坐りゐるやうな/飯田晴
草蚊遣して峡中を煙らしぬ/白澤良子
蚊遣香のひとすぢの青納骨日/中拓夫
蚊遣焚き一坪ふかく処女仏/古舘曹人
蚊火煙月の襖にうつりけり/鈴木花蓑
匂ひゐる厨の忘れ蚊遣かな/石田勝彦
宗鑑が竹の挽香を蚊遣かな/高井几董
蚊遣豚蚊遣豚にぞ乗り売らる/辻桃子
蚊遣焚き尼の照葉の話など/福田蓼汀
蚊遣して盗人待つや御曹司/子規句集
蚊遣火の二つ合ひたる烟かな/辻桃子
枝蛙昼のまゝゐぬ蚊火明り/鈴木花蓑
蚊火置けば譚めく端居かな/小杉余子
藪下の商人宿の蚊遣かな/岡本癖三酔
山国や夕日くもらす草蚊遣/近藤一鴻
坂町の軒くひ違ふ蚊遣かな/籾山柑子
山踏でならひし草の蚊遣かな/飴山實
崖錆にいたみし軒の蚊遣かな/原石鼎
兄弟に蚊遣は一夜渦巻けり/石田波郷
蚊遣木や女の斧に石をわる/服部嵐雪
俳句例:81句目~
雪隠の小城を責る蚊遣り哉/横井也有
蚊柱や蚊遣の烟のよけ具合/正岡子規
文机の下を這ひ出る蚊遣哉/正岡子規
蚊遣火の音よく戻る日和下駄/野村喜舟
蚊遣火もみゆや戸ざゝぬ門並び/炭太祇
あどけさに心なごめる蚊遣豚/高澤良一
蚊遣火や京なつかしむ修行僧/小川軽舟
蚊遣火や裸ながらに網をすく/寺田寅彦
蚊遣火や赤子煮え居る鍋の中/正岡子規
蚊遣火や遊里の海は真ンの闇/飯田蛇笏
きそひ焚き家三軒の蚊遣かな/松瀬青々
さし汐の時の軒端や蚊遣焚く/飯田蛇笏
蚊遣火や闇に下り行く蚊一つ/高濱年尾
蚊遣火を隔てゝ夫婦喧嘩哉/飯島百合女
蚊遣草陸兵と刈りわかちけり/皆川白陀
蚊遣鉢応量器とは見えぬかな/尾崎迷堂
蚊遣香匂ふは夢のさめしなり/白岩三郎
蚊遣香昼より焚ける茶店かな/勝又一透
蚊遣香置けど百姓家の匂ひ/百合山羽公
蜑が家の軒並ひくき草蚊遣/鈴鹿野風呂