俳句例:101句目~
片陰の伸びるを当てに車駐め/稲畑汀子
片陰の狭き小さきをたどり来し/辻桃子
片陰の道にも海が盛りあがる/河野南畦
片陰や壁に錆びゆく駒つなぎ/嶋田麻紀
片陰や夜が主題なる曲勁し/中村草田男
片陰や寺と酒場とさし向ひ/稲垣きくの
片陰や弾き出されて砂利完し/香西照雄
片陰や欠けしままなる百度石/坂本和子
片陰や直哉芙美子も踏みし坂/渡辺恭子
片陰をありがたがって日雇女/米沢和子
片陰をゆづられ共に見舞妻/飯野てい子
片陰を奪ひ合ふごと擦れ違ふ/後藤波久
片陰を行きませと尚見送りぬ/大橋宵火
琴の音や片蔭に犬は睡りつつ/藤田湘子
男っぷり上げて戻れり片陰道/高澤良一
砂利の道片蔭にほそき土の道持つ/篠原
職乞へり片蔭に妻待たせつつ/細川加賀
芭蕉生家へ片蔭拾ひ拾ひゆく/茂里正治
蔵町を蔵の片陰沿ひに行く/梁川たけし
蝮屋がありて片蔭ゆきがたし/谷野予志
俳句例:121句目~
おろおろと片蔭ひろひ喪に急ぐ/石川文子
かの香炉購はむ片蔭かへしけり/西村和子
くわりん垂れ片蔭沿ひに婆の杖/細川加賀
機を下りてすぐ片蔭を求めゆく/近藤一鴻
心してこの片蔭を行くとせむ/波多野爽波
まばたきもせで衛兵や片蔭に/嶋田摩耶子
みやげものの店片蔭に入りしは美し/篠原
帯ゆるく片蔭をゆくもの同士/橋本多佳子
地下鉄を兵と出づれば片かげり/高橋馬相
片蔭の生るゝごとく癌うまる/加藤かけい
片陰をひらひら来るや秘書課の娘/本井英
片陰をひろふは蝶もするらしく/石川文子
片陰をひろへば人とはなれゆく/前野雅生
片蔭を花下の歩みに似つゝ行く/村松紅花
片陰を人追ひ越さず歩をゆるめ/吉屋信子
奈良しづか築地々々の片かげり/巽とほる
片陰を拾ひてビルに吸はれたる/稲畑汀子
忍者住みしゆゑ忍町片かげり/成瀬正とし
片陰や母にはあらぬひととゐる/岩田昌寿
片蔭のとどのつまりに生家かな/能村研三
俳句例:141句目~
片蔭に置く自転車の数知れず/片山由美子
夕立に濡れざりし土片蔭濃く/榎本冬一郎
片陰のここでとぎれてしまひけり/辻桃子
片蔭や水を行き来のさつぱ舟/藤田あけ烏
片蔭や子を入れてある大盥/長谷川かな女
紙芝居片蔭の大人のはうが笑ふ/原田種茅
片かげの代書屋に入る肩は農夫/石塚友二
片蔭に憩ひ居りしに追ひつきぬ/高濱年尾
片陰が出来商ひもありそめて/宇佐美一枝
土塀片蔭選び選びて来しところ/細見綾子
亡びしは片蔭すらも残すなし/金箱戈止夫
片蔭を拾ふは蝶にもあるらしく/石川文子
ビアドローサ片蔭は淵深きいろ/加藤耕子
片蔭に人追ひ越さず歩をゆるめ/吉屋信子
見送られゐて片蔭に入りがたし/根岸善雄
訪ふ家の門に片蔭こぼれをり/波多野爽波
エキストラのように片蔭を歩く/永末恵子
片かげり母の着尺ぞ吾に似合ふ/永田耕衣
片蔭となりけりジンタかつぽれを/龍岡晋
片蔭といふもののなし基地の街/沢木欣一
俳句例:161句目~
片影の黒人いついつまでも待つ/平畑静塔
片蔭を奪ひ合ふごとすれ違ふ/波多野爽波
片蔭を行き遠き日のわれに逢ふ/木村蕪城
夏蔭やおはぐろとんぼ茗荷の子/小杉余子
すれちがふときわれ片蔭よりはみ出づ/篠原
たたずむこと多き四十路の片陰や/村越化石
片蔭をもどりつありしことゞもを/星野立子
片蔭をうなだれてゆくたのしさあり/西垣脩
片蔭のひやりといつも誰か病む/殿村菟絲子
片蔭の羅宇屋に化けし密偵なるか/筑紫磐井
片蔭に入る一歩より喪につながる/大野林火
片蔭商ひ冷たい冷たいわらび餅/百合山羽公
我とわれすれ違ひゆく片かげり/河原枇杷男
片陰や投げ込まれたる師の手紙/佐野青陽人
片蔭にチンドン屋夫妻しずかな語/西東三鬼
片蔭ゆく自己弁護癖いつよりか/上田五千石
古町片蔭洒瓶抱いて母を訪いに/伊丹三樹彦
み上げたる大石段の片かげり/久保田万太郎
片蔭の宿へ入り来し木曽路かな/松本たかし
片蔭にまなこつむりて夜叉を飼ふ/仙田洋子
俳句例:181句目~
片陰の宿へ入り来し木曾路かな/松本たかし
船出でて波止に片陰なくなりぬ/五十嵐播水
片陰ゆくハローワークの呼び出し日/高澤良一
片陰をひとり来る吾子駆けもせず/金箱戈止夫
片陰沿ひむかしを知つている蝶は/堀井春一郎
片蔭断つごと氷挽く肘すいすい出る/宮津昭彦
護岸に下駄ひびき片蔭こくなれる/川島彷徨子
片影となりし籬に添ひありく/五十崎古郷句集
母にわれに片蔭りなき道はるけし/赤城さかえ
龍鱗の片影雲の冴返る/新傾向句集/河東碧梧桐
水鶏ゆくや大ナギの日照雨片かげる/日夏耿之介
カレンチの実に夏蔭のなかりけり/阿部みどり女
ガヴァジューストラック島の片陰選り/高澤良一
魚河岸の無き小田原町の片かげり/長谷川かな女
汝がゆくて片蔭ありやなほも行くや/竹下しづの女