「雁渡し」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「雁渡し」について
【表記】雁渡し
【読み方】かりわたし
【ローマ字読み】kariwatashi
子季語・関連季語・傍題・類語など
–
季節による分類
・「か」で始まる秋の季語
・「秋の天文」を表す季語
・「仲秋」に分類される季語
月ごとの分類
雁渡しを含む俳句例
風鐸の天楽となる雁渡し/原裕
草木より人翻る雁渡し/岸田稚
雁渡し山脈力集め合ふ/村越化石
沖までの潮の濃淡雁渡し/柊愁生
青北風や萬屍想はす虫一屍/林翔
海港に展く空港雁渡し/倉橋弘躬
漆黒の円空仏や雁渡し/田阪笑子
越前は雲繞る国雁渡し/堀口星眠
岩船の塔婆襖や雁渡し/落合水尾
岬端の礁泡だつ雁渡し/伊藤ふみ
峠まで一本の道雁渡し/草間時彦
繋留の湖の釣舟雁渡し/松本悦子
雁渡し佇みて吾れ晩年ヘ/村越化石
こめかみに未完の稿と雁渡し/原裕
青北風や石の鳥居の先は海/堀葦男
青北風や港気付の手紙束/工藤義夫
雁渡し乗船の列撓みたる/西村和子
雁渡し雪渓汚れ見えにけり/及川貞
青北風や女人高野の鎧坂/大橋敦子
子の手曳く出勤遅々と雁渡し/林翔
俳句例:21句目~
信号は青北風も通りけり/森田家仙
青北風や土偶三千年の黙/矢野忠男
銅鐸のしらべをはこぶ雁渡し/原裕
双塔の影を一つに雁渡し/加古宗也
鉦提げて村人集ふ雁渡し/篠崎圭介
日月の行方の果の雁渡し/秋光泉児
雁渡し歳月が研ぐ黒き巌/大野林火
橋立の松濡れ並ぶ雁渡し/木村蕪城
水底に足跡が澄む雁渡し/今瀬剛一
聖職の従妹より文雁渡し/都筑智子
海坂の藍の深さや雁渡し/水原春郎
海底の岩にわが影雁渡し/西村公鳳
朝市に煮貝の匂ふ雁渡し/石原八束
渚嗅ぐ犬と逢ひけり雁渡し/飴山實
船倉に馬の嘶く雁渡し/山田ひさし
紬織る筬のゆききや雁渡し/渡部照子
ぶちまけし鰯の渦や雁渡し/橋本榮治
青北風や墓地に迫りし山と海/井上豊
石山の石が船の荷雁渡し/松本ヤチヨ
師に逢ふは旅先多し雁渡し/近藤一鴻
俳句例:41句目~
一天に深浅の青雁わたし/八牧美喜子
雁渡し指もてたどる方位盤/伊藤京子
雁渡し岡町の家濡れにけり/野村喜舟
金箔をとどめて鼻梁雁渡し/井上康明
稜線を引張り合へり雁渡し/中島畦雨
篆刻の石の血のいろ雁わたし/石嶌岳
曲尺を当てては惑ふ雁渡し/皆川白陀
三層の天壇の円雁渡し/野見山ひふみ
青北風の目薬零す膝がしら/原口鬼灯
雁渡し転びしままに地に坐り/岡本眸
雁渡し北見青透く薄荷飴/文挾夫佐恵
削りゐる鉛筆匂ふ雁渡し/小松崎爽青
雁渡し自ら捨てし教師恋ふ/茂里正治
薄味のきつねうどんや雁渡し/杉本寛
含羞の人を師とせり雁渡し/岡崎桂子
水音を先だててくる雁渡し/今瀬剛一
米倉の大戸みなさす雁渡し/白岩三郎
雁渡し化石のやうな蜑部落/野沢節子
流木の磯に居座る雁渡し/鈴木真砂女
藻屑焚く煙乱るる雁渡し/酒井みゆき
俳句例:61句目~
雁渡し牛の除角の鏝かざし/太田土男
大阪に赤だし啜る雁渡し/冨田みのる
雁渡し水害の帯屋根に干す/近藤一鴻
将門の走り抜けたる雁渡し/太田土男
燈台を芯に島伏す雁渡し/服部鹿頭矢
灯台を芯に島伏す雁渡し/服部鹿頭矢
駅弁の黒きこんにやく雁渡し/桂信子
ともづなを全長つかふ雁渡し/朝倉和江
ひとり娘を離し難しや雁渡し/毛塚静枝
めつむれば怒濤の暗さ雁渡し/福永耕二
もう訪はぬ故郷と思ふ雁渡し/西川五郎
やはらかく巡る血液雁渡し/小田かをり
七つ島は岩礁なれや雁渡し/水原秋櫻子
三丈の青北風染みの絹飜る/文挟夫佐恵
味噌を売る会津童女よ雁渡し/佐川広治
岩一つ噛みて来る波雁渡し/鈴木真砂女
常念岳も安曇野富士も雁渡し/加古宗也
操舵室青北風島を意中にす/文挟夫佐恵
晩年は許してばかり雁渡し/貝塚せい子
木の国の材木あまた雁渡し/柴田白葉女
俳句例:81句目~
木曾谷へ包みひとつや雁渡し/古舘曹人
母の顔雲よりとほし雁渡し/小松崎爽青
海のいろかすれた方へ雁渡し/塚越美子
戸籍のみ残るふるさと雁渡し/江崎慶子
雁わたし加賀の友禅流しかな/小原英湖
雁わたし島にかくれの唄残り/朝倉和江
雁わたし軒深く積む汐木かな/角川源義
雁渡し乳房が張るという感じ/坪内稔典
雁渡し手が出て閉まる蔵の窓/徳丸峻二
雁渡し母も娘も織りをらむ/柴田白葉女
雁渡し淡海の水となる流れ/日比野里江
雁渡し白く乾きし漁具の山/羽藤美佐子
雁渡し砂丘は生きて砂奔る/豊長みのる
雁渡し耶蘇名消されし島の墓/有岡巧生
雁渡し草木白瀬もひるがへり/山口草堂
雁渡し見送るに水速きこと/有田木の実
雁渡し豆腐一丁買ひて足る/稲垣きくの
雲上の嶺をおく信濃雁わたし/井沢正江
青北風の岩手山容啄木歌碑/柴田白葉女
青北風の立山に星噴きあげつ/橋本榮治