「寒燈」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「寒燈」について
【表記】寒燈
【読み方】かんとう
【ローマ字読み】kanto__
子季語・関連季語・傍題・類語など
・冬の燈(ふゆのひ:fuyunohi_)
・冬燈(ふゆともし:fuyutomoshi)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
寒燈を含む俳句例
十畳に少し暗しや冬灯/上野泰
黒松の一幹迫る寒灯下/森澄雄
一点に寒燈の艶お六櫛/下田稔
一面に暗き天井寒燈/高濱年尾
泊船の一つ緑に冬灯/高澤良一
寒灯消し病室に夜が又/藤木和子
冬燈灰皿にある世紀末/藤田弥生
銀屏に魍魎あそぶ冬燈/富安風生
寒灯掲げて鞆の泊り船/高濱年尾
巧言令色鮮仁矣冬灯/稲垣きくの
漁火は冬の祭の夜店の灯/中拓夫
妻に貸す老眼鏡や冬灯/春山他石
夕刊に世相険しや冬灯/吉屋信子
寒燈に寝顔曝して島離る/津田清子
寒灯に寝顔曝して島離る/津田清子
寒燈の一つ一つよ国破れ/西東三鬼
銀無垢の茶托の翳り冬灯/中村汀女
若者の居る明るさの冬灯/稲畑汀子
酔眼の一寒燈を家路にす/石川桂郎
綺羅星を地に覆へす冬灯/富安風生
俳句例:21句目~
琴覆赤きがかなし冬灯/五十嵐播水
寒燈に柱も細る思ひかな/高浜虚子
寒灯の一つ一つよ国敗れ/西東三鬼
冬灯蟹の甲羅はキチン質/高澤良一
母と寝て畳あまさず冬燈/館岡沙緻
冬灯二つ一つと消えて山/坊城俊樹
心ひかるる仕立屋の冬灯/西村和子
中年のわが貌曝す冬灯/柴田白葉女
寒燈に禁断の髪晒しけむ/林原耒井
冬の水もて仏塔の燈に応ふ/古舘曹人
加賀友禅えがく百花や冬灯/楠/久子
峡住みの言葉置くごと冬灯/有馬籌子
幸福感真白き卓布冬灯に垂れ/桂信子
まとまらぬ引導の偈や寒灯/森永杉洞
戸袋より塩もの冬灯の中に客/飴山實
一つづつ寒灯を持つ狐塚/小泉八重子
寒燈の消えて蛇伸闇に落つ/星野立子
二行書き一行消すや寒灯下/高浜虚子
寒燈や慄然として仏の手/富澤赤黄男
回転扉寒燈散らし落着きぬ/河野南畦
俳句例:41句目~
の腸手掴みに出す寒灯下/木村里風子
電柱うす暗し寒燈俯くに/小川双々子
湯ざめせし貌寒灯の下過ぐる/桂信子
妻をらぬ妻の高さの寒灯けす/石原透
子が泣けば父が飯炊く寒燈/石橋秀野
寒灯に一つおかれし柩かな/青木節子
寒灯に黄しき貌の並びけり/小寺正三
寒燈やわれ蓬髪の影とつながる/篠原
枕木に一寒燈が照らせる場/沢木欣一
寒燈や外の霰をきゝすます/西山泊雲
寒灯や快きまで世に背き/深川正一郎
寒灯や抜いて貰いし指の刺/富田潮児
寒灯や蹠に草鞋履かせ了へ/小林康治
手相見の銀座の隅の寒灯/村松五灰子
寒燈や松江大橋雪降るらむ/林原耒井
雉もめば雉に寒燈のぼりくる/北光星
寒灯下己れ宥さぬ花を抜く/朝倉和江
寒灯下手術にゆきし兵の床/横山白虹
寒灯下明暗もなき思惟かな/高浜虚子
寒灯下面テもあげず沈金師/伊藤柏翠
俳句例:61句目~
寒燈や親しみうすき柱照る/清原枴童
野に遠くとも寒燈の力あり/奥田智久
寒燈にこの頃親し古俳諧/赤星水竹居
寒燈にしろき胸板盗汗拭く/中尾白雨
書きて消す手紙一節寒灯下/岸風三楼
造船所寒燈も酸素の火も裸/西東三鬼
寒燈に散る喪帰りの浄め塩/野澤節子
寒燈に近づけ息の太さ欲る/村越化石
笠無くや寒燈とりとめなく鋭し/篠原
寒燈の下に今在りとぞ思ふ/後藤夜半
冬の灯に花鳥色濃き襖かな/橋本鶏二
冬の灯に蟲遊ぶ見る恙かな/富田木歩
冬の灯の死角にいつも死蔵の書/林翔
冬の灯母居る如く家照らす/浅倉君子
病棟の灯に遠ざかる冬の道/松村蒼石
街の灯に一重の冬の霞かな/京極杞陽
ものを書く硯の海に冬灯/真下喜太郎
わが影の二つありたる冬灯/倉田紘文
カルテにも終章のあり冬灯/橋本喜夫
冬灯姫路の駅にともり初め/吉屋信子
俳句例:81句目~
冬灯死は容顔にとほからず/飯田蛇笏
冬灯白樺の担架いま着きぬ/小池文子
冬灯蝶々飛び出すマッチ箱/二村典子
冬灯蹴つ飛ばし吾子生れけり/上野泰
こときれし母在しけり寒灯下/上崎暮潮
すぐ冷える独りの食事寒燈/永森とみ子
寒燈の下や俳魔の影もなし/河東碧梧桐
みじろげば哀しみ兆す寒灯/鷲谷七菜子
寒燈をいくつも灯しみな暗し/星野立子
大阪の冬の灯ともる頃へ出る/後藤夜半
崖下に冬の灯が満ち司祭の餉/友岡子郷
寒灯や吾を見守るものに吾/上田五千石
寒燈や残る体温掌に惜しむ/柴田白葉女
寒燈にやがては帰りゆく友か/下村槐太
さくら湯の桜のひらく冬燈/猪俣千代子
寒燈をつり古る妻の起居かな/飯田蛇笏
寒燈といへど温き灯旅人に/柴田白葉女
わびしくて遂に消すなる冬灯/京極杞陽
イコン売る間口は狭し冬灯/水田むつみ
寒燈のひとつは母の常夜燈/山崎千枝子