「寒鯉」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「寒鯉」について
【表記】寒鯉
【読み方】かんごい
【ローマ字読み】kangoi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・寒鯉釣(かんごいつり:kangoitsuri)
・凍鯉(いてごい:itegoi)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の動物」を表す季語
・「晩冬」に分類される季語
月ごとの分類
寒鯉を含む俳句例
寒鯉を苞造りして重たさよ/杉雨
寒鯉の闇に水打つ山の宿/林瑠美
寒鯉の悠々たるを叱陀せり/原裕
反転の寒鯉黄銀日矢の中/中村明子
甘露煮や寒鯉の金なほのこり/楸邨
晩年や寒鯉動く夜の川/上田晩春郎
寒鯉に金輪際のひかりかな/齋藤玄
寒鯉の水押す力鈍りたる/高澤良一
寒鯉が動き公園動きだす/森田智子
寒鯉に手叩き寺の白飯粒/中山純子
寒鯉を生かす盥の天地かな/三幹竹
寒鯉の平安水の昏さに馴れ/桂信子
寒鯉を封づ氷の曇りけり/高澤良一
寒鯉のあらはの鰭や古盥/飯田蛇笏
寒鯉を丸太掴みに丸太切り/上村占
寒鯉の平安水の暗さに馴れ/桂信子
寒鯉のしづかなりけり瞼深く/青邨
寒鯉のゆらりと水の殺到す/脇祥一
寒鯉の一擲したる力かな/高濱虚子
寒鯉の花びらとなり沈みをり/靖子
俳句例:21句目~
寒鯉の桶に大利根柏屋と/田中冬二
生きてゐる重さ寒鯉苞に巻く/火川
寒鯉棒の如くに動かざる/加来/小洞
寒鯉を見て雲水の去りゆけり/森澄雄
寒鯉の呪縛ときたる水の色/鈴木貞雄
寒鯉に喪服の男手をたたく/坂間恒子
寒鯉を苞にして抱く銃の如/今瀬剛一
寒鯉の常陸山垣低くして/軽部烏頭子
寒鯉に昃りし水の重さかな/山田閏子
寒鯉に見ゆれ光の棒に見ゆれ/齋藤玄
寒鯉に音をとばして刀鍛冶/石田勝彦
寒鯉の臓腑ぬくしと捌きをり/北村保
わが咳けば寒鯉鰭をうごかしぬ/風生
寒鯉を包む苞なく笹にさす/田中冬二
寒鯉を二夜つゞけて貰ひけり/原石鼎
ライターの青火寒鯉水に澄む/三谷昭
寒鯉をぐるぐる巻に新聞紙/細川加賀
寒鯉や浅き生簀に脊を並べ/増田龍雨
寒鯉の呼吸大きく秤られし/酒井智代
寒鯉やむら胆据ゑて水の底/石塚友二
俳句例:41句目~
別の桶にも寒鯉の水しぶき/飯田龍太
寒鯉の鰭あほりたる水玄き/高澤良一
寒鯉の籠にひかりて月ありぬ/秋櫻子
寒鯉の頭揃えて沈みをり/榎田きよ子
寒鯉の音なく群れて脂肌/小檜山繁子
動かざる寒鯉を見て決断す/中西咲央
寒鯉の水に来ており山の翳/白井房夫
寒鯉の金泥のごと沈みゐる/鈴木貞雄
寒鯉の怫然たるを売買す/相生垣瓜人
寒鯉のものを言ひたる目が動く/澄雄
寒鯉の苞提げゆくに河碧し/栗生純夫
寒鯉の腹中にてもさざなみす/斎藤玄
掬ひたる寒鯉網におとなしく/上村占
寒鯉の水くもらせて山の雨/茨木和生
寒鯉の二匹問答するごとし/太田土男
寒鯉の背なの高みの現れし/岸本尚毅
寒鯉の深く沈みて石となる/河野南畦
寒鯉となり渓聲を天に擧ぐ/古舘曹人
山動くかに寒鯉の動きけり/藤崎久を
寒鯉の水の筋金呑みしごと/宮坂静生
俳句例:61句目~
群のまま寒鯉すこし動きけり/上野泰
一すぢの日に寒鯉のみじろぎぬ/不断草
動かねば寒鯉の金くもらざる/西川織子
寒鯉がうごき嶺々めざめたり/加藤楸邨
寒鯉とわれ遂にわれより動く/能村研三
寒鯉に揺るぎなき水重なれる/橋田憲明
寒鯉に方丈よりの灯かげかな/清原枴童
寒鯉のごつとぶつかり煙るかな/小島健
寒鯉のまためぐり来し柱かな/藺草慶子
寒鯉のみじろげば湧くにごりかな/菁果
寒鯉の上にこの世の風が吹く/鈴木鷹夫
寒鯉の光る水面をさざめかす/稲畑汀子
寒鯉の凝然たるを凝視せり/相生垣瓜人
寒鯉の口で息して腑を抜かる/右城暮石
寒鯉の売れてだぶつく命水/百合山羽公
寒鯉の居ると云ふなる水蒼し/前田普羅
寒鯉の張よかなるを見逃さず/佐川広治
寒鯉の桶底に沈みて藍ばめる/田中冬二
寒鯉の権らるる目の何見ゆる/山口草堂
寒鯉の水の粘りてゐたりけり/草間時彦
俳句例:81句目~
寒鯉を突きぬ静かに濁る水/石井とし夫
寒鯉の泳ぎ畢せし影なるや/鳥居おさむ
寒鯉の浮びきし口餌をはづれ/平野青坡
寒鯉の生くる証の泥けむり/遠藤若狭男
寒鯉の百の一鰭だに揺れず/大岳水一路
寒鯉の背鰭の水はぬめりけり/斉藤夏風
寒鯉の胴さやさやと触れ合へる/太田嗟
寒鯉の色あつまつてなほ淡し/古舘曹人
寒鯉の遠き雲よりしづかなり/黒木夜雨
寒鯉の金鐶の眼を嵌めにけり/福田蓼汀
寒鯉の雌伏を沈めをりにけり/山田弘子
寒鯉の雲のごとくに静もれる/山口青邨
寒鯉の静にむきをかへにけり/保坂文虹
寒鯉の黒光りして斬られけり/飯田蛇笏
寒鯉は背が濃し贅肉なき詩人/香西照雄
寒鯉やたかし歩みし道辺にて/草間時彦
寒鯉や底をコントラバス響く/柴田奈美
寒鯉や日ねもす顔を突き合せ/前田普羅
寒鯉を掬ひしたもの撓みかな/橋本鶏二
寒鯉を提げ墓原をよぎりけり/館岡沙緻