「寒紅」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「寒紅」について
【表記】寒紅
【読み方】かんべに
【ローマ字読み】kambeni
子季語・関連季語・傍題・類語など
・丑紅(うしべに:ushibeni)
・寒紅売(かんべにうり:kambeniuri)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「晩冬」に分類される季語
月ごとの分類
寒紅を含む俳句例
寒紅や月蝕の闇宵のうち/上村占
寒紅や心の奥に神も魔も/上野泰
娘義太夫寒紅の口大開き/辻桃子
寒紅の筆の命毛短くも/奈良鹿郎
寒紅の唇動き読みすすむ/小澤實
寒紅に鬢附油凍りけり/野村喜舟
寒紅のきりりと親を拒みをり/黛執
寒紅の提灯の文字女文字/田中冬二
寒紅の濃き唇を開かざり/富安風生
寒紅の一文牛の溜りけり/野村喜舟
寒紅もその年頃の杏子色/後藤夜半
寒紅や皿の糸底かかる指/野村喜舟
寒紅や暖簾をくぐる女形/小川陽子
買初に寒紅の口切りにけり/橡面坊
寒紅や贋金をもて胸飾る/岸風三樓
寒紅の店の内儀の美しき/高浜虚子
寒紅をひきて心に鞭打たん/天野貞枝
旅重ね寒紅重ねおもねりぬ/萩原麦草
つよくひく寒紅に舟溜りくる/上村占
寒紅やせうなきことを深嘆き/辻桃子
俳句例:21句目~
働いて帰る寒紅ひきにけり/菖蒲あや
寒紅や一つの墓にひざまづき/上村占
古妻の寒紅をさす一事かな/日野草城
寒紅を引くたび想ふ礁あり/高千夏子
寒紅や京としいへば紅の事/小澤碧童
物縫ふや寒紅売を心まち/高橋淡路女
寒紅に口尖がらせし娘かな/皿井旭川
寒紅に女心をみたりけり/田畑美穂女
寒紅に疲れを隠し看取妻/飯田波津恵
寒紅や何も言はじと心決め/西村和子
寒紅のことば慎みゐたるなり/石嶌岳
筆噛んで寒紅の唇汚さざる/村林星汀
寒紅の口うつくしき京言葉/蒲生院鳥
寒紅や心の闇は覗かれず/鈴木真砂女
寒紅の口を絞りて舞妓かな/皿井旭川
寒紅の口許生きて来し会話/稲畑汀子
寒紅や心隈どるごとく引く/大石悦子
寒紅や暗き翳ある我が運命/下田実花
寒紅や眉定まりて人の妻/島村元句集
寒紅や素直に通す人の意地/松本青羊
俳句例:41句目~
寒紅や美しき嘘うべなえり/大野岬歩
寒紅や花びら餅はほの赤し/高木晴子
寒紅の皿糸底の古りにけり/京極紀陽
寒紅や鏡の中に火の如し/野見山朱鳥
寒紅や雲欲すれば雲生れて/知久芳子
寒紅は末摘む花の色なりし/下村梅子
寒紅をひいて反論もくろめり/樋笠文
いささかの寒紅さして奪衣婆/有馬朗人
寒紅をさしていつもの富士額/後藤夜半
寒紅をつけるいとまに妻はあり/上野泰
寒紅やかつてをとめの鏡の座/河野南畦
寒紅をひきて女形の顔となる/中山秋月
寒紅をひきつつ言葉探しけり/鳥山米子
寒紅にしづかに曇る日なりけり/原石鼎
寒紅をさす鏡中の暗さかな/町野けい子
寒紅の去りし鏡の虚空かな/野見山朱鳥
寒紅や夫の好まぬ髪結はむ/池上不二子
寒紅の唇うばはれて嫉妬断つ/仙田洋子
寒紅の唇に利酒つかまつる/佐久間慧子
寒紅に松風つのりきたりけり/綾部仁喜
俳句例:61句目~
寒紅や石女と言ふ語はかなし/木村梧葉
寒紅や母にはいつも祈りあり/都筑智子
寒紅や鴨煮るくちに濃く刷かれ/龍岡晋
寒紅や小菊にぬぐふくすり指/星野麦人
寒紅の貝合せめく絵なりけり/下村梅子
寒紅や老いさまざまに三姉妹/三好昭美
寒紅を二つはきたる小皿かな/村上鬼城
寒紅を拭ひ利酒つかまつる/宇和川喬子
寒紅を濃く稿債に倦みし日よ/稲畑汀子
寒紅を落として葱を刻みけり/中田尚子
寒紅を買ふ妻をみし小路かな/長谷川櫂
寒紅濃く半裸半跏の奈良へゆく/渋谷道
寒紅猫咲きそめ紙のうす明り/成田千空
封印のごとく寒紅引きにけり/小林知佳
慶弔に出向く寒紅一本持ち/神尾久美子
寒紅を土産にくれし宿屋かな/田中冬二
昨夜の夢かなし寒紅そと淡く/高橋笛美
曖昧に生きぬ証しの寒紅ひく/中村明子
桃水のため寒紅を引きし日も/太田夏子
濤に雨近し寒紅消さず寝る/神尾久美子
俳句例:81句目~
寒紅や過ぎし世を恋ふ古簪/高橋淡路女
寒紅や女ひとりの幸はあるか/楠本憲吉
丑紅を皆濃くつけて話しけり/高浜虚子
寒紅をひきしづかなる一日を/深見けん二
うつすらと寒紅余命あかりかな/栗林千津
人形にちよんと寒紅さしにけり/有馬朗人
寒紅や己がわがまゝ己れ知る/木内悠起子
寒紅を引きて瞋りのなかにをり/大石悦子
寒紅を引くことのみの分限かな/今泉貞鳳
寒紅や妻となり萎えゆけるもの/大石悦子
円山の雪寒紅の猪口に降る/長谷川かな女
寒紅を濃くさしたるを怖れけり/鷹羽狩行
寒紅といふ言葉には濃きこころ/後藤夜半
寒紅のくちびる何の果肉なる/上田五千石
寒紅の口を結びてかたくなに/田上一蕉子
寒紅の濃くさしたるを怖れけり/鷹羽狩行
寒紅の燃えて何をか言はんとす/井沢正江
寒紅の皓歯にすこしうつろへる/久米正雄
寒紅の舞妓も見たり外套被る/百合山羽公
寒紅やいとけなき手にする化粧/岡本松浜