俳句例:101句目~
水疾し岩にはりつき啼く河鹿/杉田久女
一夜躯を河鹿徹りぬ瀬音すら/徳永山冬子
翡翠の鋭声河鹿の声をつゞり/軽部烏頭子
旅のこころにひとすぢの河鹿笛/松村蒼石
舟遊祭さ中に鳴ける河鹿かな/五十嵐播水
散歩圏伸ばして河鹿鳴くところ/右城暮石
どこまでも従き来る瀬音夕河鹿/山田閏子
河鹿鳴いて鵜川の闇の極まりぬ/内藤吐天
谷川の河鹿に埋もれ昼寝かな/東洋城千句
よき河鹿痩せていよいよ高音かな/原石鼎
打てばひびく芝居談義や夕河鹿/堀口星眠
ダムとなる渓の深きに河鹿鳴く/村井光子
ヨセミテに五十鈴の河鹿鳴くといふ/宋淵
河鹿鳴くや川州を中に声ふたつ/木津柳芽
一里毎に増す駕籠賃や鳴く河鹿/吉田冬葉
四五人の一人が聞きし初河鹿/外山智恵子
墨磨るやこころにひゞく夕河鹿/山中三木
夕河鹿乙女これより泳がんとす/木村蕪城
夕河鹿風樹の谿に声ちぎられ/鷲谷七菜子
跼まれば河鹿の声を聞かせくれ/鈴木貞雄
俳句例:121句目~
身につけて一つ減る荷や河鹿笛/綾部仁喜
室生寺の穂杉をのぼる河鹿の音/石原八束
寄席囃子聞のよろしと河鹿飼ふ/下村槐太
耶馬渓に声のつよさや花かじか/安東次男
遠河鹿わが合掌をとほりけり/大岳水一路
戯画絵巻ころがしひらく遠河鹿/桂樟蹊子
河鹿鳴く中に瀬音はゆくばかり/皆吉爽雨
川作務の了りし瀬々や夕河鹿/塩谷はつ枝
錠さしてるすの格子や河鹿鳴く/増田龍雨
巌殿の湯や夜をさびて河鹿啼く/幸田露伴
河鹿鳴き夜は雲とざす高嶺村/下元きみ子
河鹿聞くかなしみ深き人と佇ち/井上哲王
河鹿なきおそ月滝をてらしけり/飯田蛇笏
集まつて酒散らばつて河鹿聴く/水上孤城
河鹿鳴き山垣四方に暮れゆけり/木津柳芽
尋めて来し河鹿ぞなける水の綾/日野草城
河鹿鳴く誓子暮石に聞こえねど/茨木和生
河鹿鳴く風みどりなす熊野道/鎌田八重子
鴨き出でし滝の中なる河鹿かな/鈴木花蓑
河鹿待つ石のこころを聴く如く/椎橋清翠
俳句例:141句目~
浸し居る蹠河鹿の鳴きにけり/富田うしほ
かじか啼て袖なつかしき火打石/蕪村遺稿
寝返りてみてもはるけき河鹿笛/橋本榮治
河鹿啼く水打つて風消えにけり/臼田亞浪
河鹿鳴き渓流は身を揉みゆけり/大月芳雨
河鹿鳴くいつも人なき橋の上/波多野爽波
河鹿聴きぬる湯湯ぶちに木の枕/岡田日郎
月細くかかりて峡の河鹿かな/市川/晴子
湯浴み後の下駄冷たしや夕河鹿/手島靖一
月上れば水離る声の河鹿澄む/大須賀乙字
瀬によれば却つて遠し河鹿笛/馬場移公子
河鹿の声の水を流るる昼餉かな/臼田亞浪
父恋ふは何時も此の頃河鹿鳴く/辻口静夫
河鹿啼くや夜は友ある影法師/大谷碧雲居
春を惜む灯に幽かなる河鹿かな/渡邊水巴
石となり流れとなりて河鹿待つ/寺島美園
石に鳴く河鹿投網をかむりけり/内山亜川
河鹿川くびれては水鳴るばかり/高井北杜
やぶでまりなどと河鹿の水あかり/木津柳芽
湯女も聞く河鹿やいまは夜も更け/山口青邨
俳句例:161句目~
しらたまは昼につくりて河鹿飼ふ/下村槐太
すかし見る河鹿の闇といふものを/高木晴子
磨崖仏河鹿鳴きつゝ暮れたまふ/水原秋桜子
村ぢゆうが河鹿の闇となつて来し/豊原月右
瀬の音のまさりゆきつゝ河鹿かな/星野立子
多摩深し河鹿の谿の細りゆく/長谷川かな女
河鹿なく瀬に指つけて旅の情/阿部みどり女
河鹿笛調子はずめばホーイホイ/小原菁々子
岩風呂に鳴かぬ河鹿をとらへけり/中島斌雄
山川の瀬はあけぼのの河鹿かな/芥川龍之介
河鹿なくただの蛙のひまひまに/八木林之介
河鹿鳴く天の水甕満ちをらむ/鍵和田のり子
逝く母を逝かせてしまふ夕河鹿/馬場移公子
河鹿鳴きつのれば燃ゆる昴かな/阿波野青畝
河鹿鳴く水いそぎつつ平らなり/水原秋櫻子
河鹿とはまろべる珠のごときもの/平井照敏
かじか笛月がうす眼をあけにけり/野沢節子
日照雨にもささ濁りして河鹿の瀬/岡田貞峰
水音が河鹿の聲である水を聞く/荻原井泉水
遠河鹿夢の切れ目をつなぎつつ/伊丹三樹彦
俳句例:181句目~
くいくいとほろほろと夜の河鹿かな/石塚友二
どよむ瀬の上ヮ響きして河鹿かな/楠目橙黄子
寝しづまる障子にひゞく河鹿かな/金尾梅の門
河鹿鳴くやさしさにして鵜網引く/加藤知世子
あけ易や岩つばめとび河鹿鳴き/久保田万太郎
河鹿なくあまりに近くあはれなり/今井つる女
河鹿聞きつつ何忘れんとしてゐしや/木村恵洲
河鹿ごゑ楚々とこたびは川下モより/高澤良一
湖口の朝の若者の口笛と河鹿の声と/喜谷六花
身を伏せて岩根づたひや河鹿とり/楠目橙黄子
あまつさへ河鹿の宿でありしこと/藤木呂九艸
月に向き月にそむきて河鹿きく/阿部みどり女
河鹿宿お客ランプにぶつかりどうし/福田蓼汀
部屋で聞き露天湯で聞く河鹿かな/大久保白村
夜の戸ひきし渓音に河鹿すみきたり/金尾梅の門
河鹿しげし村ひとつかみの灯をともし/河野南畦
父母揃ふこの家河鹿の澄みわたり/阿部みどり女
雨過ぎし瀬のさきよりは乏し河鹿の音/喜谷六花
ウランを平和へ河鹿死んでも合掌する/八木三日女
明けの河鹿生まれ出でたる瞳がひらく/加藤知世子