「鳰」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「鳰」について
【表記】鳰
【読み方】かいつぶり
【ローマ字読み】kaitsuburi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・赤頸かいつぶり(あかえりかいつぶり:akaerikaitsuburi)
・耳かいつぶり(みみかいつぶり:mimikaitsuburi)
・羽白かいつぶり(はじろかいつぶり:hajirokaitsuburi)
・かいつむり(かいつむり:kaitsumuri)
・におどり潜り鳥(むぐりどり:muguridori)
・一丁潜り(いちょうむぐり:ichomuguri)
・八丁潜り(はっちょうむぐり:hatchomuguri)
–
季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の動物」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
鳰を含む俳句例
畠打や肱の先の鳰の海/一茶
鳰円山川の緩流に/京極杞陽
燦燦と浪と浪間の鳰/中田剛
鳰鳥も蘆刈る人も風の中/黄枝
かくれけり師走の海の鳰/芭蕉
筑摩江やたつべをのぞく鳰汝村
破れ鐘も霞む類か鳰の海/言水
月光の波の鍵盤鳰の唄/原柯城
鳰人をしづかに湖の町/森澄雄
潜り際毬と見えたり鳰/中田剛
菜の花の匂ひや鳰の磯畑/素牛
鳰の声して風除の裏は湖/柏翠
一夜来て泣友にせん鳰の床/風国
きらめきし後の昏きが鳰/齋藤玄
鳰引佐郡引佐を潜りけり/峠素子
鳰吹かるる岸の曠野なり/斎藤玄
春の暮鴎の波に鳰の乗り/岸田稚
暮れはてて光の底の鳰/山西雅子
百姓の漸く暇に親子鳰/福田蓼汀
鳰入人をしづかに湖の町/森澄雄
俳句例:21句目~
朝茜鳰の浮巣を荘厳す/鈴木公二
金泥の水の落日鳰くぐる/桂信子
鳰人を面白さうに見る/高澤良一
みづうみの半眼にして鳰/中田剛
水の玉振るひおとせよ鳰/中田剛
鳰葭に集りぬ湖暮るる/中村汀女
水鳥もふねも塵なり鳰の海/梅室
鳰鳥の息のながさよ櫨紅葉/誓子
鳰の海紅梅の咲く渚より/森澄雄
道の児も鳰も西日の倭文村/龍太
鳰の巣の浮み出けり宵月夜/成美
湖や渺々として鳰一つ/正岡子規
鳰の奥の浮み出けり宵月夜/成美
鳰沈み水は一枚板となる/森田峠
漂へるものと遊びて鳰/大石悦子
潜かむと鳰一身を緊めし/本井英
鴨宿の裏あらはなり鳰/中井余花朗
鳰顔を洗ひに潜きけり/山崎十死生
幼なくて息のつづかぬ鳰/西村和子
嶽々や鳰とりまはす雪けぶり/史邦
俳句例:41句目~
雪晴や水騒がして交る鳰/鈴木花蓑
四方より花吹き入れて鳰の波/芭蕉
見渡して鳰の数ゐる松手入/森澄雄
散り紅葉泛べる水に鳰あそぶ/春潮
隠沼に鳰ゐて錆びぬ白椿/石川桂郎
日白うして鳰啼くや松納/渡辺水巴
薄氷やひとりたのしき鳰/石田波郷
花筏やぶつて鳰の顔のぞく/飴山實
あかときの淡海は昏き鳰の笛/春樹
無駄金をたんとつかへば鳰/辻桃子
鳰水凹ませて浮き出でし/小川軽舟
天平の鳰の裔かや初もぐり/飴山實
鳰にも青空のうれしくて/石田郷子
鳰どりも鴎もこゑの近松忌/森澄雄
柴漬の艫臍泣きゆく鳰の中/飴山實
一時間先の約束鳰浮いて/橋本榮治
かいつぶり鉄砧しばし火の雫/子郷
一湾や二つの鳰のゐるばかり/洗耳
月白うして鳰啼くや松納/渡辺水巴
鳰は潜水精進吾は句精進/高澤良一
俳句例:61句目~
道よりも天は淋しき鳰/河原枇杷男
かいつぶり浮出る迄見て過る/暁台
二三軒煤掃出すや鳰の海/松瀬青々
脇僧に似て坐りをり鳰の湖/登四郎
鳰の浮くべき方を心待ち/岸風三樓
鳰の水遠煙突の影を置く/佐野美智
泛かみ出て母の遠さよ鳰/行方克巳
鳰の巣や蛍もかりの足やすめ/荊口
俳諧の膳所に致仕して鳰/麻田椎花
秋苑に雛よぶ鳰の声透る/西本一都
浮かび出て遠き日向や鳰/山田弘子
浮くときも生れる水輪鳰/京極杞陽
萍に忍ぶが如く鳰浮けり/鈴木花蓑
浮御堂鳰の浮巣を秘中の秘/安住敦
萍のひらきて閉ぢて鳰くゞる/素十
鳰どりのかづく蓑なし芦の雨/乙二
鳰が生む沼の靨のまたひとつ/耕二
初鴨に居着の鳰のよく潜る/大串章
かいつぶり人は夕映着て帰る/林翔
黒点のふえし太陽鳰の上/藤田湘子
俳句例:81句目~
萱鳰があり粟鳰も稗鳰も/橋本鶏二
花の幕うしろ向なる鳰の池/鈴木花蓑
息長に子鳰潜つて見せにけり/樋笠文
鳰どりや顔見合はせて又はひる/蝶夢
鳰啼いて畝傍の町の昃りぬ/下村槐太
ききわけのよき子を育て鳰/大石悦子
真菰刈る童に鳰は水走り/水原秋櫻子
睡蓮に鳰の尻餅いくたびも/川端茅舎
日永さの鳰の湖べり長辿り/宮津昭彦
さらばこそ雪中の鳰として/赤尾兜子
たかだかと三代の松鳰の岸/加藤耕子
ちちははの彼岸にいつも鳰/田中荒砂
苗代の水のつゞきや鳰の海/松瀬青々
ねそベりて京都ながむる鳰/田中裕明
親鳰の子に与ふもの水底草/高澤良一
ひら比叡わか葉影さす鳰の海/中勘助
鳰鳴くや春著の鈴も夕急ぎ/香西照雄
鳰がゐて鳰の海とは昔より/高浜虚子
蜻蛉や日は入りながら鳰のうみ/惟然
朝蛙ひとつの声と鳰啼けり/木津柳芽