俳句例:101句目～
我家の法被著て立つ案山子かな/水竹居
足腰の立たぬ案山子を車かな/夏目漱石
三輪の田の案山子の笠に蜻蛉哉/会津八一
仆れしを引摺つて来る案山子哉/篠崎霞山
仰向ける案山子の面を時雨けり/柴田奈美
伏兵を見知り顔なる案山子かな/赤木格堂
案山子抜く土に踵をひっぱられ/河合凱夫
傾きし案山子に疲れ見えにけり/山下美典
先頃の案山子の装のモダンなる/高澤良一
入植村彩屋根見上げ案山子立つ/河野南畦
其許は案山子に似たる和尚かな/夏目漱石
吊案山子風に吹かるゝ裳かな/高橋淡路女
大水を踏みこえたる案山子かな/子規句集
子羊に近づきすぎし案山子かな/綾部仁喜
山に向いて案山子の笠の高きかな/原月舟
盗んだる案山子の笠に雨急なり/高浜虚子
戦ひは稗田粟田の案山子かな/坂本四方太
抱き来て如何に備へん案山子哉/西山泊雲
殿さまに高尾は惚るる案山子かな/龍岡晋
流行の黒づくめなる案山子かな/松木幸子
俳句例:121句目～
灯ともすや案山子の影の消ゆる時/原月舟
焼け残る案山子の足やくどの下/寺田寅彦
白山颪案山子の骨を鳴らしけり/和泉千花
百姓の顔で案山子の帰りけり/吉田さかえ
目鼻なき案山子なれども情あり/内田柳影
知慧第一神通第一の案山子かな/尾崎迷堂
砂畑に突立つて居る案山子かな/会津八一
磔刑のごとき案山子や畦に立ち/下村梅子
秋かぜのうごかして行案山子哉/與謝蕪村
秋出水案山子胸まで水漬ける/八牧美喜子
笠ふかく案山子の面のありにけり/烏頭子
筆硯や案山子に会へる旅の絶え/石川桂郎
粟の穂や案山子の腰を没すべく/寺田寅彦
紐赤き妹が笠きて案山子かな/高橋淡路女
絹糸の張りの失せたり捨案山子/三戸キク
舎人等の立ちしが如く案山子立つ/秋櫻子
苗代や案山子の鼻もきのふけふ/尾崎紅葉
藁つめて案山子の腹を作りけり/橋本鶏二
藁束に笠をのせたる案山子かな/京極杞陽
武蔵野の陸稲を守る案山子かな/松藤夏山
俳句例:141句目～
裾吹かれ立つ石狩の稲架案山子/大橋敦子
いろいろの案山子に道のたのしさよ/篠原
詰襟の案山子に逢ひし小諸かな/古瀬陽蔵
うちたてし案山子と対ひあひにけり/鹿郎
豊年の案山子ゆんずるたるんだり/上野泰
捨て案山子袖より雀こぼしけり/三輪恒子
身乗り出す林檎案山子の赤頭巾/羽部洞然
捨案山子いのちの棒を横たへて/中村明子
捨案山子雑兵倒れ伏すに似て/水原秋櫻子
しる人になりてわかるゝ案山子かな/惟然
遠足や案山子に表裏なかりけり/藤岡筑邨
野の遺賢めきて用なき捨案山子/清水基吉
提灯を提げし案山子に言問はん/福田蓼汀
雀らとともに案山子をあなどれり/山冬子
旅姿したる案山子でありにけり/牧野春駒
はじまりや案山子の臓腑濡れ光る/橋口等
雫する雨の案山子の衣袂かな/高橋淡路女
頭から酒浴び案山子抜かれたり/工藤克巳
風格の世に遅れゐる案山子かな/大橋敦子
髯の彼刈田案山子をなと口説け/川口重美
俳句例:161句目～
鳥追の如き案山子に雨斜め/阿部みどり女
ふる里や一揆の形の案山子ども/皆川白陀
やがてまた下雲通る案山子かな/飯田蛇笏
月下にて山田の案山子隙だらけ/高澤良一
かかし傘の月夜のかげや稲の上/飯田蛇笏
望郷や案山子は真実もて立てる/赤尾恵以
朝風に弓返りしたる案山子かな/黒柳召波
村口に他所者見張る黒案山子/下村ひろし
落つる日に影さへうすきかかしかな/白雄
案山子の親子潟の広さに救はるる/河野南畦
派手なもの案山子に着せて陸稲畑/森田公司
山近く案山子のうしろ見たりけり/太田鴻村
夕空のなごみわたれる案山子かな/富安風生
我笠と我蓑を着せて案山子かな/河東碧梧桐
編笠のことにわびしき案山子かな/黒柳召波
耳遠く目のかすみたる案山子かな/飯田蛇笏
みちのくのつたなきさがの案山子かな/青邨
肩の案山子運動会を見つつゆけり/今村俊三
胸うすき案山子舁がれゆきにけり/只野柯舟
ひつぢ田の案山子もあちらこちらむき/蕪村
俳句例:181句目～
日あたるや案山子の顔の大きくて/臼田亜浪
山びこに耳かたむくる案山子かな/飯田蛇笏
案山子翁風に吹かるるものまとふ/大橋敦子
父と子と肩にかけゆく案山子かな/下村槐太
ねんごろに雨やつれせし案山子抜く/吉本昴
づかづかと用済み案山子担ぎ去る/川村紫陽
物の音ひとりたふるる案山子かな/野澤凡兆
男ばかりと見えて案山子の哀れ也/正岡子規
しきたりも律気や佐久の案山子揚げ/及川貞
捨案山子こんなに空が広いとは/黒崎かずこ
おやおやと案山子の顔に近づけり/茨木和生
あるときは雀の眼して案山子見る/工藤克巳
夕月のたへにも繊き案山子かな/水原秋桜子
登高の案山子連るるにしたがへる/亀井糸游
役終えし案山子は家に戻らない/相原左義長
島にただ一つの峡田案山子たて/小原菁々子
百済野の白栲の衣の案山子たち/上野さち子
吾れよりも流行を著て案山子かな/高塚頼子
双の手をひろげて相違なき案山子/後藤夜半
山の家見えて案山子の日和哉/阿部みどり女
