「海霧」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「海霧」について
【表記】海霧
【読み方】じり/かいむ/うみぎり
【ローマ字読み】jiri
子季語・関連季語・傍題・類語など
・ガス(がす:gasu)
–
季節による分類
・「し」で始まる夏の季語
・「夏の天文」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
海霧を含む俳句例
羅臼沖背黒鴎に海霧去来/高澤良一
六月の海霧蕭々と牧泊り/堀口星眠
海霧沖に退き残る夕明り/高濱年尾
船団の海霧に薄るる石巻/宮田硯水
独立国なり海霧の貨物船/吉原文音
一切を海霧が隠せり海の音/茂里正治
海霧迫る小学校の万国旗/蓬田紀枝子
薺咲き翼のごとく海霧通ふ/小林康治
海霧濃しや積丹の島点々と/杉阪大和
韓国の奏の音渡す海霧の果/谷中隆子
海霧残る牧の沢辺の親仔馬/高濱年尾
山一つ廻れば深き海霧の村/掛田篤子
海霧深き法華村人を見ず/文挟夫佐恵
海霧を来し船に港の春灯/五十嵐播水
釣舟の若狭の湾の海霧に消ゆ/辻文子
太陽を海霧の遮る瀬戸の島/鈴木君子
納沙布の海霧の奥より集乳車/佐藤哲
波二段三段海霧の陽は赤し/石原八束
海霧ごめに樺太見ゆる墓洗ふ/石田龍子
えぞにうの花の群落海霧流れ/鮫島交子
俳句例:21句目~
霧多布てふ湿原の海霧に遭ふ/茂木花詠
ときに鹿現るる林道海霧塞ぎ/高澤良一
金盞花畑に海霧濃くなる夕/柴田白葉女
ノサップの海霧の奥より集乳車/佐藤哲
一人づつ人を裹めり海霧の街/石原八束
海霧はれて一舟の影海になし/富安風生
坂を匐ふ海霧は臭の街を消す/石原八束
海霧の奥犬鳴きいでて月育つ/加藤楸邨
岳樺呑み込む海霧の迅さかな/高澤良一
海霧の川七夕のもの流れゆく/高野素十
荒海霧や風除解かぬ漁師村/石垣軒風子
支那の嗅煙草の壷に海霧深み/猿田咲子
船の鼠啼いて夏海霧深かりぬ/臼田亜浪
肩触れし誰や根室の海霧深し/南葉愛子
海霧深きゆゑ日の色の金鳳華/水見壽男
海霧の中漕ぎ出で鮑密漁す/水見悠々子
桜島に海霧かかる別れの日/野間しづ子
海霧低き椴法華村人を見ず/文挟夫佐恵
沖よりの海霧を捕へて髪の先/蛯名晶子
太棹は曽祖母の声海霧の月/小枝秀穂女
俳句例:41句目~
笛きこゆ海霧の津軽の星祭/町田しげき
人動きやまずよ海霧の甲板に/高浜虚子
煙突の胴切つて海霧流れをり/赤尾恵以
海霧飛べり釧路の街の花時計/高木良多
はまなすは海霧を呼ぶ花低く這ひ/梶尾黙
音たてて海霧おそひくる北の町/川崎慶子
馬の歯のがしがしむしる海霧の草/辻桃子
よべの海霧丘にのこれり風露草/澤田緑生
オホツクの海鳴斯くも海霧冷す/桑田青虎
僚船のマストを追ひつ海霧の中/秦/孝浩
国後島あとかたもなく海霧の中/高澤良一
地の果ての暗く蟹煮る海霧の町/荒川楓谷
夕海霧なか一光芒の鶴のこゑ/平井さち子
天涯の岩のくぼみを海霧抜けず/笠井/操
岬々に海霧のまつはる良夜かな/小島静居
店々に海霧より揚げし青さんま/大野林火
氷下釣る夜明けの海霧は月孕み/西東三鬼
海霧とざす沼波岸に寄するのみ/高濱年尾
海霧ののつぴきならぬ植田かな/綾部仁喜
海霧の野に放たれ駈くる親子馬/高見岳子
俳句例:61句目~
海霧の陸橋抛物線の情事経て/八木三日女
海霧ごめや無一物めく寒風山/渡辺恵美子
海霧捲かる製鋼火焔の鼻つぱし/入江勉人
海霧濃し首つつこんでかひば馬/安東次男
海霧誘ひフンベの滝の乱れ落つ/菅原茂甚
海霧迅し花あかしやの街かくす/岡本昼虹
海霧退きて佐渡全容を現はせり/曽田ハツ
海霧透きて波の群青よみがへる/仙田洋子
海霧連れて牧童牛を追ひ行けり/高岡千歌
燈台がぽつんと海霧の帯のさき/高澤良一
白老といふ駅の名を海霧に読む/高橋笛美
穂芒も硫黄噴く嶺も海霧浸す/文挟夫佐恵
蝦夷黄菅とや海霧に色走りしは/稲畑汀子
美しき海霧の怖さも知りて住む/高橋笛美
足摺のあざみのほかは海霧の中/庄中健吉
霧笛泣くほどに海霧濃き啄木碑/石原八束
海霧よりの虫のすくなさ誘蛾燈/中戸川朝人
きりぎしの囮鵜鳴かず海霧の中/町田しげき
納沙布は海霧に白夜の火を焚けり/後藤一秋
海霧深し昼を夜につぐ銅鑼の音/道川源治郎
俳句例:81句目~
海霧ごめの湾やひようたん島はどこ/千田敬
海霧ときに馬柵より低く流れゐし/稲畑汀子
海霧のきて履物だまりが犬溜り/平井さち子
鬱金空木海霧を抜け出てひよこ色/高澤良一
海霧くれば海霧を払ひて踊りけり/石原八束
古稀の手でみかん苗植う海霧の中/閑田梅月
激しさのあとのやさしさ海霧雫/加倉井秋を
海霧が来てあらぬ白藤滂沱たり/文挟夫佐恵
斜里岳を海霧たちまちに隠しけり/橋本弘子
牧牛の帰路なり嶺を海霧下る/長谷川かな女
花ささげ海霧降りゐるは妹が畑/金箱戈止夫
海霧のあと山きて坐る大暑かな/永田耕一郎
海霧泣いて崖にきしとき視界絶つ/石原八束
訪ひ来しが襟裳岬の海霧の濃し/小島阿具里
旅予定変へねばならぬ蝦夷の海霧/稲畑汀子
月消していつか海霧とぶ島泊り/小原菁々子
海霧の旅ともづな重く解かれゆく/金箱戈止夫
海霧充ち来ラヂオの尋ね人はじまり/田中北斗
温泉げむりと海霧のとけあふ忘帰洞/西桐童心
海霧かこち秋烏賊干しの平戸海女/小原菁々子